○ 府中。東京競馬場。快晴の日曜日。
○ レース風景。熱狂する観客。
○ 最終レースが終わり、閑散としたレース場。風に舞う外れ馬券。
○ 現金輸送車に積み込まれる現金の袋。
○ ガードマンの一人の顔。薫である。
○ 発車する現金輸送車。
○ 府中市内を走る現金輸送車。
○ 人気の無い細い道に入る現金輸送車。
○ 現金輸送車の前を大型トレーラーが急に道を塞ぐ。続いて、その背後も大型トレーラーで塞がれる。
○ 後ろのトレーラーに乗っていた若者が、座席から下り、「道路工事中、迂回せよ」の看板を道の真ん中に置く。
○ 強盗の出現に驚く運転手と、助手。
○ 後部室内で異常に気づき、驚き慌てて、携帯電話を出し、本部に通報しようとするガードマン。
○ その横に座っていた薫が、アイスピックで、その心臓を刺す。
○ 床に崩れ落ちるガードマン。
○ 運転席から引きずり出される運転手と助手。
○ 開けられる後部荷台。中から薫が仲間に笑いかける。
○ 後部荷台に放り込まれる運転手と助手。手足は縛られ、口にはガムテープ。
○ (上空からのカメラで)動き始めるトレーラーと現金輸送車。
○ (同じく上空から)まるで楽しいドライブででもあるかのような軽快な音楽と共に移動していく三台の車。(フェイド・アウト)
○ 新聞の見出し「中央競馬界現金輸送車襲わる!」「日本犯罪史上最大。35億円強奪!」
○ 新聞を手にしていた人間が、その新聞を畳んで立ち上がり、歩きながらくずかごにポイと入れる。ここは空港の出発ロビーであることがわかる。そして、男は薫である。どこから見ても、大金持ちのお坊ちゃんという感じの身なり。粋なサングラス。
○ ロビーの売店で、煙草を買う薫。
○ その横に、同じく週刊誌か何かを買おうとして近づいてきた若者。透である。
○ 売店の前の二人を正面から。二人が、互いに無視しているのが、少々わざとらしく見える。
○ 出発ロビー全体を映すと、あちこちにダークエンジェルズの姿が見える。みんな、それぞれ他の仲間を無視して、めいめいに行動している。
○ 飛行機のタラップを上る薫。良く晴れた気持ちのいい天気である。
○ サングラスをはずして空を見上げ、眩しそうに目を細める薫。その顔は、実に気持ちよさそうである。
○ 後ろにいた透を見て、思わず笑いかける薫。驚いたようにそっぽを向く透。
○ 離陸する飛行機。青空の中に機体は吸い込まれていく。(フェイド・アウト)
○ コート・ダジュール。(または、カンヌでもモナコでもプロヴァンスでも可)高級ホテルのプールサイド。
○ 「男」がデッキチェアに寝そべっている。その側に薫もいる。
○ 側を通る水着姿の美しいフランス女が、「男」に視線を落とす。「男」に非常なセックスアピールを感じている様子。男はそれに気づかないのか、無視している。
○ もったいない、という顔で女を見送る薫。
薫(「男」に)「ボス、金持ちの暮らしってのも、案外退屈ですね」
「男」(サングラスの顔を薫に向けて)「ボスはやめろ。今は百地三郎だ」
薫「すみません。でも、あいつらどうしてるかなあ。慣れない大金を持って、ドジを踏んでなきゃあいいが……」
「男」「考えても仕方のない事は考えるな。あいつらがどうなろうと、自分の責任だ。それより、後で今後の予定を話すから、透にも俺の部屋に来るように言っておけ」
薫(無為から逃れられる嬉しさで顔を明るくし)「はいっ!」(フェイド・アウト)
○ 銀座。アイスクリームを舐めながらウインドウショッピングをしているマキ。
○ ショーウインドウに映るマキ。その側に、二人の黒服にサングラスの男が現れる。
○ 驚いて振り返るマキ。その腕を、男たちが捕まえる。
○ 強引に、黒塗りのベンツに乗せられるマキ。通行人たちが、その様子を驚いて見ている。
○ 東亜会の事務所。大会社のオフィスといった感じ。壁には、本物の一流絵画。
○ 事務所の奥の部屋。マキが、猿ぐつわをされ、後ろ手に縛られて椅子に座っている。
○ 部屋のドアが開き、徳大寺と部下たちが入ってくる。
徳大寺(マキを見下ろし)「ほほう、なかなかの美人ではないか。猿ぐつわをはずして、顔をよく見せてもらおうか」
○ マキの猿ぐつわを外す部下。大きく息をついて、徳大寺を睨み付けるマキ。
徳大寺「こんな美人なら、拷問のしがいもある。だが、そのきれいな顔が台無しになる前に、少し楽しませてもらおう」
○ 服を脱ぎ始める徳大寺。
○ マキを押さえつける部下たち。
○ 悲鳴を上げ、暴れるマキ。
○ (マキの目から見た視点で)裸になってマキに近づく徳大寺。(フェイド・アウト)