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インディアン島! どうして最近は新聞でこの島のことを書いていなかったのだろう! あらゆるほのめかしや面白い噂話。もちろん、そのほとんどは嘘なのだろうが。しかし、その屋敷は確かに或る百万長者によって建てられ、まったく贅沢極まりないものだと言われていた。
ヴェラ・クレイソーンは、最近の苦労の多い勤務に疲れており、「三流の学校の体育教師ではうだつが上がらない……どこか品のいい学校に勤められたら」と考えていた。
そして、彼女の心臓を取り巻く冷たい感じとともに彼女は考えた。「しかし、私はこの仕事が得られただけでも幸運だった。結局、人々は検死官の検死に関わった人間を好まないのだ。たとえその検死官が私を完全に無罪だと結論しても!」
検死官は彼女の冷静さと勇敢さを褒め称えさえしたのだ、と彼女は思い出した。他の場合の検死はあれほどすんなり行かないのが普通だろう。そしてハミルトン夫人も彼女に親切だった――しかし、ヒューゴーは――(しかし、彼女はヒューゴーのことは考えたくなかった!)
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ヴェラ・クレイソーンは、三等客室で他の五人の旅客と同室していたが、自分の頭を後ろにもたせかけて目を閉じた。今日のような日に汽車で旅行をするのは、何と暑いことだろう! こうして海に行けるのは素晴らしいことだ! 本当に大きな幸運のかけらがこの仕事を手に入れさせたのだ。休暇の間の仕事を求めたなら、普通は大勢の子供の面倒を見ることになるもので――休暇シーズンの短期の仕事というのは得難いものなのである。職業紹介所での印象はあまり希望が持てるような様子ではなかったのだが。
そして手紙が来た。
「『熟練女性代理店』から推薦の言葉とともにあなたの名前を紹介されました。彼らはあなたを個人的にご存じらしいと私には思われました。私は喜んであなたの申し出なさった給与を支払うと共に、あなたが八月八日から仕事に就くよう希望します。汽車はパディントン発12時40分で、オークブリッジ駅でお迎えします。経費として5ポンド同封します。
 
                   友情を籠めて
                        ユナ・ナンシー・オウエン」

封筒の上の方にはインディアン島・スティックルヘイブン・デヴォンとスタンプが押されていた。

まちがいなく、インディアン島はニュースだった。
自分のポケットからワーグレイブ判事は一通の手紙を取り出した。手書きの筆跡は読みにくかったが、ところどころの単語は案外明瞭さが目立った。「親愛なるローレンス……あなたに関することを私が聞かなくなって何年にもなります……インディアン島に来なければなりません……この上なく魅惑的な場所……繰り返し話し合いたいことが沢山……懐かしい日々……自然との交わり……太陽の下での日光浴……パディントン発12時40分……オークブリッジでお会いして……」手紙の主は美しいサインで彼の旧友コンスタンス・カルミントンと書いてあった。
ワーグレイブ判事は心の中で、レディ・コンスタンス・カルミントンに最後に会ったのは正確に何年前だったか思い出そうとした。確か7年前――いや、8年前だ。彼女はそれから太陽の下で日光浴をするためにイタリアに行き、そこの自然や農民とひとつになった。その後、彼が聞いたところでは、彼女はさらに強い日差しの下で日光浴をしたいとシリアに行き、そこの自然や遊牧民とひとつになった。
コンスタンス・カルミントンは、と彼は考えた――確かにひとつの島を買って、自分自身をミステリーで包み込むタイプの女性である! 自分自身の論理に同感のうなづきをして、ワーグレイブ判事は自分の頭が前に垂れることを許した。
彼は眠り込んだ。



ファーストクラスの喫煙室の隅で、最近法廷から引退したばかりのワーグレイブ判事は煙草をくゆらせながらタイムスの政治欄に興味深そうな目を走らせていた。
その新聞を下に置き、彼は窓の外に目をやった。汽車は今サマセットを通過しながら走っている。彼は自分の時計に目を向ける――到着まで後二時間だ。
彼は今読んだ新聞の中にあったインディアン島の記事のことを思い巡らした。そこに書かれていたのは、その島のもともとの購入者であるヨット気違いのアメリカの百万長者のこと――それに、このデヴォン海岸沖の小さな島に彼が建てた豪華で近代的な屋敷のことだった。不幸なことに、この大金持ちが結婚したばかりの三番目の夫人が船酔い癖があって、そのため、この屋敷と島はすぐに売りに出されたという。この屋敷と島の提灯持ちをした売り出し広告が幾つかの新聞に出された。それから、この屋敷と島がオウエンなる人物によって購入されたという素っ気ない記事が出た。それからゴシップ記者たちによる噂話が出始めた。インディアン島は実はハリウッドの映画スターであるミス・ガブリエラ・タールが購入したのであると! 彼女はこの島で世間の目を逃れて自由に数ヶ月を過ごしたいのである! 「働き蜂」という新聞コラムは、婉曲にだが、それは王族のための住居ではないか、と書いた。「上天気」氏が彼に、その住居は終にキューピッドに降参した若きロード・Lがハネムーンのために買ったのだ、と囁いたと言う。「ヨナ」氏が知る事実によれば、この島はイギリス海軍省がある実験を秘密裏に行うために購入したと言う。

アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を英語原語で読んでいるのだが、読んでいる途中で前の部分を忘れるので、このブログで訳しながら読むことにする。
まあ、商業目的ではないので著作権には触れないだろう。
途中の、話の鍵になる童謡は、英語のまま書くことにする。そうでないと押韻の面白さが表せないからである。
まあ、頭脳訓練も兼ねての遊びである。
また、推理の鍵になりそうだが、私には意味の分からない部分も英語のままにするかもしれない。
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