○「丸正電設」の前で張り込みをする野村の数ショット。
○ 夜。携帯電話が鳴り、電話機を耳に当てる安田。
○ 「男」のアジトの前で、携帯電話に小声で話す野村。
野村「安田さんか? チャンスだ。今日は中からどんどん人が出て行っている。数えたら、十五人いた。中に残っているのは、あと一人か二人だ。もしかしたら、まったくカラかもしれん」
安田「よし、わかった。すぐ行く」
○ 中古のBMWを飛ばす安田。
○ 自動車の運転席から、「男」のアジトの前に立つ野村が見える。
○ 手を上げて合図する野村。
○ 車から下りる安田。二人は、頷き合う。
○ 塀をよじのぼる二人。
○ 開いたままの玄関から入る二人。安田はピストルを抜く。野村にもピストルを渡す。
○ 一階のトレーニング場。常夜灯がついているだけで、人はいない。
○ 二階の大食堂。同じく、ガランとしている。
○ 三階の会議室も同じ。
○ 四階。ここは廊下があり、部屋が幾つかある。その部屋の一つから明かりが漏れ、人のうめき声がする。マキのあえぎ声である。顔色を変える野村。
○ ドアから覗く野村。
○ ベッドの上で、裸で絡み合う「男」とマキ。喜悦の声を上げるマキ。
○ 屈辱と憤怒に唇をかむ野村。
○ 野村の後ろから、安田が彼の肩を叩く。
安田「マキの奴、嬉しそうな声を上げてるじゃねえか。だが、野郎を片づけるのは、後だ。まずは金が先だ」
○ もう一つの部屋に入る二人。懐中電灯で照らし出された室内には、金庫らしいものはない。
○ 突然、部屋の明かりがつく。
○ 二人が驚いて見回すと、部屋の入り口には、ダークエンジェルズの少年達が並んで、彼らを見ている。
野村(仰天して)「て、手前ら!」
薫(一歩前に出て、冷たい口調で)「やっぱりあんたか。先輩、用事なら、昼間堂々と来てくださいよ。そちらは菊岡組の安田さんだね。ヤクザがうちに何の用です」
野村「うるせえ! サラ金強盗が手前らの仕業だってことはつかんでるんだ。金をよこしな。それとも、死んでみるか?」
○ 野村と安田、威嚇するようにピストルを誇示する。薫の顔に、かすかな動揺の色が現れる。
安田「おい、兄ちゃん、玄人を甘く見るんじゃないぞ。え? こっちは遊びじゃねえんだ。いきがってると死ぬぜ」
○ 別の方角から、「男」の声。「金はこっちだ」
○ 振り返る野村と安田。全員の死角になっていたドアが開いていて、「男」がボストンバッグを手にして現れる。「男」は、バッグをテーブルの上に載せて、それを開いてみせる。中の札束が見える。
「男」「これが欲しいのなら、やろう。そら!」
○ 「男」はバッグを安田の足元に放り投げる。
○ 思わず、かがみ込んでバッグに手を伸ばす安田。
○ テーブルの上のガラスの灰皿を掴む「男」の手。その灰皿は、鋭い手首のスナップで投げられる。
○ 宙を飛ぶ灰皿。
○ (スローモーションで)安田の額に激突し、額を砕く灰皿。後方にのけぞって倒れる安田。
○ (同じくスローモーションで)警棒を腰のベルトから抜き、野村のピストルを持った腕を打ち据える薫。腕が折れる音。
薫(「男」と野村を交互に見て)「こいつ、どうします?」
「男」「その死体と一緒に地下室に閉じこめておけ。食料は一週間分くらいも入れておけばいいだろう。日本の警察やヤクザがここを突き止めるのが早ければ、生きて出られるだろう」
○ 野村を引き立て、安田の死体をかついで部屋から運び出す少年たち。
「男」「ここも引き上げ時だな。お前ら、要らない物や、足のつきそうな物を一時間で処分して、車に乗り込め」
○ 闇の中を、車に乗り込むダークエンジェルズたち。次々と車が発進した後、闇の中に静まり返るアジト。(フェイド・アウト)