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  都内のサラ金を次々に襲撃する覆面の少年達。社員の一人に警棒が振り下ろされ、その脳天が割られて血しぶきが吹き上がる。抵抗する者を容赦なく打ちのめし、無抵抗な者は、ガムテープで手際よく体中グルグル巻きにする。金庫を開け、現金をボストンバッグに詰め込んで、さっと引き上げる。(ストップモーションの連続など、リズミカルに、軽快に)

  警視庁殺人課。様々な声が飛び交う。その内容は、都内4カ所のサラ金会社が、同時襲撃されたというもの。被害金額が膨大なものであること、死者3名、負傷者11名に上ること、などである。(フェイド・アウト)

 

  「訓練所」の内部。皓々と照らされたライトの下で、テーブルの上に積み上げられた膨大な現金を囲んで、それを眺める「男」と少年達。

透(一人だけテーブルの前に座って計算をしていたが、それを終えて)「総額7億2千5百65万4千円!」

  どよめきの声を上げる少年達。

男(かすかに微笑して)「よくやった。だが、こんなのはまだはした金だ。いい気になって使ったら、半年で無くなる。俺達の目標は、まだ先にある。だから、残念ながらこの金を今お前達にやるわけにはいかん。持ち付けない金を持つと、つい気が大きくなって金遣いが荒くなり、人に目を付けられる元だ。最後の仕事が終わってから、金はすべて分配する。だが、疲れ直しに、少し美味い物を食う程度はいいだろう。透、みんなに20万ずつ渡せ」

  男の言葉に少しがっかりした少年達も、20万の現金を手にしてほくほく顔になる。

薫(リーダーらしい責任感に溢れた顔で)「ボスの言うとおり、くれぐれも金の使い方には気を付けろよ。また、言うまでもないが、今度の事を少しでも外部の人間に言うんじゃないぞ。一人のドジで全員死刑台送りなんだからな」

  薫の言葉に頷く仲間達。(フェイド・アウト)

 

  薄暗い、品の無い喫茶店。ゲーム機が多いが、昼間であり、客はひそひそ話をしている二人しかいない。その二人の客のうち一人は野村で、もう一人も明らかにヤクザである。

安田(横柄な感じで)「じゃあ、お前は、あの仕事はダークエンジェルズのガキどもの仕業だってえのか?」

野村(卑屈な態度で)「間違いねえ。前に話したろ? 忌々しく強い、薄気味悪い中年男の話。あれ以来、ダークエンジェルズの連中、全員どっかに消えちまったんだ。俺は、あの事件を聞いて、ピンときたね。絶対間違いねえ」

安田「あんなガキどもに、こんなでっかい仕事ができるってのは信じられねえが、確かに怪しいな」

野村「だろう? で、話はここからだ。実は、俺は昨日ダークエンジェルズの一人のヨシオってのを見かけたのよ。奴の家の近所の焼き肉屋でな。向こうはこっちに気がつかねえ。こっそり、様子を窺ってると、野郎、チンケな女と一緒に、嬉しそうに何食ってたと思う? 上カルビだぜ、上カルビ! 金回り良すぎるじゃねえか」

安田(苦笑して)「上カルビくらいで、金回りが良すぎるってことはないだろう。カツアゲでもして小銭がはいったんだろうよ」

野村(ムキになって)「いいや、違うね。あいつの身分じゃあ、逆立ちしたって上カルビなんて食えるもんじゃねえ。なにせ、あいつの家は、生活保護受けてんだぜ」

  興味をそそられた顔の安田。その表情に力を得て、話を続ける野村。

野村「で、俺はあいつの後を付けて見たんだ……」

  回想。焼き肉屋の角で、ヨシオが出てくるのを待つ野村。女と二人で店から出てくるヨシオ。野村の声がナレーション風にかぶさり、

野村の声「やっと出てきたと思ったら、ヨシオの野郎、女と連れ込みホテルにはいりやがった。一時間ほど待って、いい加減しびれをきらして帰ろうと思ったんだが、ヨシオと女がホテルから出てきたんで、ほっと安心した」

  ホテルの前でキスをするヨシオと女。女と別れ、タクシーに乗り込むヨシオ。あわててタクシーを拾い、後をつける野村。

野村の声「ヨシオの奴がタクシーを使うってのがおかしいじゃねえか。そんな贅沢をするくらいなら、病気のお袋さんに土産のひとつも買うってのがヨシオって奴さ。しかも、タクシーを降りたところがまた怪しい。中野駅前で降りたんだが、そこから30分近くも歩いたんだぜ。タクシーに乗るくらいなら、なんで30分も歩くんだ?」

闇の中を歩くヨシオ。それをつける野村。高い塀のある建物の前で立ち止まり、中に入るヨシオの後から、野村が小走りに駆け寄り、門の看板を見る。門には「丸正電設」とある。

  再び、野村と安田のいる喫茶店。

野村「で、話ってのは、二人で一発かましてみようってことさ」

安田「面白い話だ。だが、相手は何人だ? お前と俺の二人だけじゃあ、ヤバいんじゃねえか?」

野村「向こうは、四人ずつ、四つの店を襲ったわけだから、十六人くらいだ。もしも、例の中年男が糸を引いているなら、そいつもいれて十七人だが、向こうはただの暴走族だ。こっちがピストルでも持っていけば大丈夫さ」

安田(宙を見て考えながら)「うちの組の連中、何人か連れていかねえか?」

野村「なら、この話は無しだ。あんたの組の上のもんにおいしいとこ持ってかれちゃあたまんねえ」

安田(ドスをきかせて)「口のききかたに気をつけな。お前一人で何ができる。なんなら、お前抜きでやってもいいんだぜ」

野村「い、いや、そいつは困る。せっかくここまで調べたのに」

安田(笑って)「だが、お前の言うとおり、素人のガキ相手なら、二人で片づくか。いざとなりゃあ、一人ぶっ殺しゃあ、びびるだろう」

野村(引きつったような笑いを浮かべて頷く)(フェイド・アウト)

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