6 「雨の中の九月」
September in the rain
The leaves of brown came tumbling down,
remember
In September in the rain
(茶色い木の葉は揺れながら落ちてきた
覚えているかい
あの九月の雨の中で)
The sun went out just like a dying ember
That September in the rain
(太陽は死んでいく熾のように消えていった
あの九月の雨の中で)
To every word of love I heard
you whisper
The raindrops seemed to play a
sweet refrain
(君のささやく一つ一つの愛の言葉ごとに
雨だれが優しいリフレーンを奏でているようだったね)
Though spring is here,
to me it‘s still September
That September in the rain
(春は今ここにあるが
私にはまだ九月なのだ
あの九月、あの雨の中の……)
ガイ・ロンバードとかいう歌手の曲らしいが、ほかにも何人もの歌手が歌っている。あまり有名ではないスタンダードといったところか。しかし、誰の曲も今一つ感心できないのである。
実は、昔、ラジオから流れてくるこの曲を聞いて、そのノスタルジックな調子にすっかりいかれたのだが、その曲を歌った歌手が誰かいまだに分からないのである。ユー・チューブでこの曲を検索すると、ジェームズ・メルトンという歌手とか、アル・ヒブラーとかいう名が出てくるが、どちらも私の記憶の歌手ではない。一番近いのは、大昔のワーナーブラザースの漫画映画、メリー・メロディーズの中の同名の漫画映画の中で、黒人が歌う奴だが、その半分は語りで、古風な調子が似ているというだけだ。その漫画映画自体は、雑貨店の商品が擬人化されて歌い踊るという内容で、アステアとロジャースらしき男女なども出て面白いのだが。
ビートルズもこの曲をカバーしているということは、これが名曲であることの証明みたいなものだが、ロック調の歌では、ノスタルジーも何もあったものではない。
とにかく、ポップスにおけるノスタルジーと言えば、この曲か、あるいは、これも幻の曲だが「いつか聞いた唄」の二つが双璧である。