3 虹の彼方に
Over the rainbow
(映画「オズの魔法使い」では、この歌の前に、ジュディ・ガーランド演ずるドロシーが次のセリフを言うが、それが歌のいい前フリになっているので、それも書いておく。ただし、英語部分は省略。)
「どこか、悩み事がなんにも無い土地……そんな土地がどこかにあるとお前は思わない? ねえ、トト(注:犬の名)。きっとあるはずよ。そこはきっと、ボートや汽車では行けない所だわ。どこか、とても遠く、遠く、……月の後ろか、雨の向こう側に」
Somewhere,over the rainbow,way up high,
There‘s a land that I heard of once in a
lulluaby
(虹の彼方のどこか、高く登ったところに
子守唄で聞いた土地がある)
Somewhere,over the rainbow,
skies are blue
And the dreams that you dare to dream
really do come true
(虹の向こうのどこかに、空はいつも青く
夢見た夢が現実になる、そんな土地がある)
Someday I‘ll wish upon a star
And wake up where the clouds are
far behind me
Where the troubles melt like lemon drops
Away above timny tops
That‘s where you’ll find me
(いつか私は星の上に上り
目ざめるでしょう
雲をずっと後ろに置き去りにして
悩みはレモンドロップのように消え
あなたは煙突の上の空の彼方で私を見つけるでしょう)
Somewhere over the rainbow,bluebirds fly
Birds fly over the rainbow,
Why,then,oh,why can‘t I ?
(虹の向こうのどこかへ、青い鳥は飛んで行く
鳥たちが虹を越えて飛べるなら
私にも行けるでしょう)
If happy little bluebirds fly
Beyond the rainbow
Why,oh,why can‘t I ?
(幸せの青い鳥が
虹を越えていけるなら
どうして私にできないことがあるだろう)
ミュージカル「オズの魔法使い」の中の挿入歌である。この映画の中のドロシーはまだ10歳かそこらのはずだから、虹の彼方に行きたいと思うほどの悩み事もないはずだが、子供には子供なりの悩みがあり、その重みは大会社の社長が倒産するかどうかで悩むのと、重さにおいて違いは無いのである。彼女の悩みは、確か、愛犬のトトの処分を、近所の意地悪女に迫られていることだったと思う。その意地悪女が、彼女の夢の中では悪い魔法使いとなって出てくるし、彼女の農場で働く使用人たちが、勇気の無いライオンや、心の無いロボットや脳みその無い案山子となって登場する。つまり、夢は現実のアレンジであるという点では、フロイド説そのままである。ただし、この映画には性的なものは無いが。
第三連で、「あなたは私を見つけるでしょう」の「あなた」とは何者かというと、これは仮想の恋人で、ミュージカル映画の挿入歌は、映画のストーリーを離れても歌える(使える)ように、必ずラブソングにもなっているのである。まあ、「必ず」と断言はできないが。このフレーズがあるために、これは童謡に限定されない大人の歌にもなるわけだ。
なお、スタンダードソングの例に漏れず、この歌にも前説というか、長い前フリがあるが、その部分は歌の説明に堕しすぎているようなので、映画の中のセリフで代用してある。