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別ブログに載せてあるものだが、ここにも載せておく。




ポップス名詩30撰

 

 

始めに

 

 英米ポップスの名詩(詞)を30ほど選んで紹介しようという試みである。もちろん、私の好みによる撰だから、他人とは意見の分かれる選出内容になるだろうし、その訳も、一部は他人の訳を参考にはしても、基本的には私の貧弱な英語力での訳だから、誤訳・珍訳もあるだろう。だが、案外と日本人は英米ポップスの詞の内容を知らないと思うので、こうした試みも無意味ではないように思う。

すべて文化とは伝統だから、文化的連続を無視した新奇さだけでは、文化は痩せ細るはずだ。日本のポップスの詞にも、素晴らしいものが多いのだが、日本は大衆文化の中からスタンダードを残すという考えがあまり無い。その結果、若者と年寄りの間の文化が常に乖離した状態(中には、若者に媚びてすりよる老人文化人もいるが)であり、これは悲しい事だ。明治から昭和までの唱歌・童謡すら、学校教育の中から追放されてしまうような状況では、伝統を残すという思想は生まれないだろう。

歴史の新しいアメリカの方が、そういう意味では伝統を残していこうという姿勢が強く、無数に生まれて消えていく大衆文化の中でも、優れた作品は常に再演され、歌ならば歌い継がれていくのである。そのスタンダードとは、べつに鹿爪らしいものばかりとは限らない。たとえば、13番の「何で馬鹿は恋をする?」などは、それ自体本当に「お馬鹿ソング」と言いたい内容なのだが、あちらの歌謡コンテストでの定番の一つのようだ。こうした「お馬鹿ソング」がスタンダードとなるところに、私はアメリカ人のユーモアと文化の厚みを感じるのである。

ポップスの中の名詩と言えば、ビートルズとサイモン&ガーファンクルの諸作品を挙げねばならないが、彼らの作品中の名品は数がありすぎるので、ここではわざと、あまり知られていない「イン・マイ・ライフ」と「四月、彼女は」の二つだけを取り上げた。(後者は一般には「四月になれば彼女は」と訳されている。)ビートルズはここで挙げた「マイ・ボニー」や「愛無き世界」、「雨の中の九月(セプテンバー・イン・ザ・レイン)」も歌っているが、これらはカバー曲である。「マイ・ボニー」はもともとスコットランドかどこかの民謡をある歌手が歌ってヒットさせ、さらにそれをビートルズがカバーしているわけで、このカバーする行為自体、文化的伝統への敬意を表している。なお、ビートルズがカバーする曲を選ぶセンスは、素晴らしいものがあり、その選択そのものが才能である。たとえば、これもあまり知られていないカバー曲の「ティル・ゼア・ワズ・ユー」など、あまり有名でもないミュージカルの挿入曲だが、素晴らしい名曲である。

サイモン&ガーファンクルの詞の場合は、あまりに曲との一体感が強いために、曲を知らない若い人々には、その良さが理解されない可能性がある。ぜひ、CDでも買ってその世界に触れてもらいたい。「沈黙の音(サウンド・オブ・サイレンス)」などの詞は現代の社会を論じた無数の評論にも勝って、現代人の生を鋭く掘り下げている。だが、ポップスの詞としてはやはり、「愛してる」を連呼する一般の馬鹿な詞のほうが正統的ではあるだろう。なにしろ、ポップスの詞の「ラブ」という単語の頻度は半端なものではない。そこから、「たかが詞じゃないか、こんなもん」というある種の開き直りと歌詞軽視の姿勢も出てくるのだが、そういう姿勢で作られた歌謡曲が世の中で支配的になっては困るのである。

まあ、御託はこれくらいにしよう。もしも、この一文がいくらかでも関心を持たれたら、そのうち、スタンダードとなるべき日本のポップスの名曲も取り扱ってみたいと思っている。

 

 

(目次)

 

1 酒と薔薇の日々

2 煙が目にしみる

3 虹の彼方に

4 アズ・タイム・ゴーズ・バイ

5 セプテンバー・ソング

6 雨の中の九月

7 マイ・ボニー

8 マイ・ガール

9 愛無き世界

10 この世の終わり

11 明日も愛してくれるかしら

12 ジョニー、怒って!(「内気なジョニー」)

13 何で馬鹿は恋をする?

14 雨を見たかい

15 白昼夢を信じる奴(「デイ・ドリーム・ビリーバー」)

16 七つの水仙

17 無引く無(「ナッシング・フロム・ナッシング」)

18 二度と恋には落ちないわ(「恋にさよなら」)

19 雨のリズム(「悲しき雨音」)

20 四月、彼女は(「四月になれば彼女は」)

21 イン・マイ・ライフ

22 少しの優しさを(「トライ・ア・リトル・テンダーネス」)

23 サークル・ゲーム

24 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

25 スター・ダスト

26 道路の陽の当る側(「サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」)

27 男は男

28 ケ・セラ・セラ

29 深い紫(「ディープ・パープル」) 

30 グッバイ・イェロー・ブリック・ロード




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