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心配するな、ドワーフは言った。彼女は来る、リラックスしろ
時計の針が9時を回った時、彼女はダンスホールに姿を現した。彼女はタイトで微かに光るワンピースのドレスを着て、黒いハイヒールを履いていた。ダンスホール全体が靄となって消えそうなほど彼女は輝いてセクシーだった。最初に一人の男が、そして次の男次の男と彼女の周りの汚点となって彼女をエスコートしようとしたが、彼女の手の一振りが彼らを群衆の中へと追い払った。
私はビールを啜りながら彼女の動きを目で追った。彼女はダンスホールの、私とちょうど正反対のところにあるテーブルに座り、赤い色のカクテルを注文し、長いシガレットに火を点けた。彼女はほとんど飲み物に手をつけず、シガレットを吸い終わると、それを灰皿で消し、次のシガレットには火を点けなかった。そして立ち上がり、高飛び込み台に近づいていくダイバーのように準備が整った感じで、ゆっくりとダンスフロアに向かって進んだ。






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私は席を見つけ、ビールを頼み、ネクタイを緩めて煙草に火をつけた。ダンスホールに勤めるダンサーの娘たちが時々私のテーブルにやってきてダンスに誘ったが、私は無視した。顎を手で支え、時々ビールを啜りながら、私はあの娘がやってくるのを待った。
一時間が過ぎたが、彼女は姿を現さなかった。歌の行列がダンスフロアを流れ過ぎていった。ワルツ、フォックストロット、ドラマーたちの競演、高音のトランペットのソロ。すべてが無駄に過ぎた。私は彼女が、まったくここに踊りに来る気もなかったのに私をからかったのではないかと思い始めた。


ダンスフロアは大きな、動力化されてゆっくりと回る円盤だった。椅子とテーブルはその外周に列をなして並べられていた。その上方には大きなシャンデリアが天井から吊るされ、曇りなく磨かれた木のフロアがその光を氷の敷布のように反射していた。円盤の向こうにはバンドのステージが、競技場の観覧席のように一段高く作られていた。そのステージでは二組のフルオーケストラが30分交代で演奏し、一晩中休みなく豊潤な音楽を供給していた。右側のひとつは二組のフルドラムセットを備え、ミュージシャンたちは赤い象のロゴの入ったブレザーを着ていた。左側のオーケストラのメインの出し物は10人のトロンボーンセクションで、この一座は緑色の仮面を着けていた。

(訳者注:文末が「~た。」の連続で単調な訳になっているのは分かっているが、面倒なのでそのままにしておく。基本的に、15分以内で訳すのを毎回の仕事量としているので。そうでないと根気が続かない。本当は辞書を引くのも面倒くさい。しかし、英語に訳された文章を読んでいると、村上春樹の作品は、日本人が考えているより名文なのだろうな、という感じはする。構成の妙、比喩の妙、小道具や細部の妙、ストーリー展開の妙を含めての話だ。だが、他の作品を知らないので、これは「踊るドワーフ」に関しての感想だ。ある意味、英語で読むと良さが分かるような性格の名文なのかもしれない。彼の作品の世界的な評価が高いのはそのためではないか。)


私は彼女を求めて群衆を掻き分けた。私に気づいた友人たちが私の肩をつかみ、話しかけてきた。私は彼らにでっかくフレンドリーな笑顔を見せたが、一言も喋らなかった。すぐにバンドが演奏を始めたが、彼女は見当たらなかった。
落ち着け、ドワーフは言った。夜は若い(訳者注:これは直訳で、日本語としては不自然だろうが、英語のジャズやポップスを聞く人なら直訳の方がぴったりくるかと思う。)。期待するに足る時間はたっぷりある。






そのダンスフロアは工場の中心的な門の傍に建っていて、フロアは毎土曜日の夜には製象工場で働く若い男や女で一杯だった。実際にはこの工場の労働者でない男や女もよくここに来て、踊ったり飲んだり我々の友人とおしゃべりをしたりした。(訳者注:この一文の訳には自信無し。まあ、そういうことを言えば、すべて自信無しだが。)カップルになった男女は終いにはそこを抜け出して、セックスをするために林の中に消えた。
どんなに、こういうものに焦がれていたことか、と私の中のドワーフはため息をついた。これらがダンスというものだ。人の塊、飲み物、ライト、汗の匂い、娘たちの芳香。ああ、それが私を昔に返す。



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