#7 季節と日本人
日本人の季節感を決定したのは「枕草子」だろうと思われるが、「源氏物語」にしても季節感と物語の結びつきは非常に強い。この両者の後世に与えた影響は大きい。もちろん、「枕草子」以前から人々は歌の中に季節の風物と、それに寄せる思いを詠んできた。「枕草子」の功績は、それを散文として書くことで人々に改めてそれを意識させ、その重要性を感じさせたところにあるのである。おそらく紫式部が「枕草子」を読んだ時の「技痒」は大変なものだったに違いない。嫉妬、羨望すら覚えただろう。それが「紫式部日記」の中の有名な清少納言批判になっているのではないか。もちろん、中宮定子派、中宮彰子派という政治的立場もあったはずだが。
日本人の生活は季節との関わりを抜きにしては考えられない。といっても、それはこれまでの話で、冷暖房付きの家に住み、ハウス栽培の,季節感の無い野菜を食べて育った今の日本人が季節を感じるのはせいぜい通勤や通学の間に道を歩く時間だけのことである。しかもその間すら、周りの風物を眺めることすらせず、若者も大人もひたすら携帯電話でなにやら忙しげに話している。
あなたが最後に空を眺めたのは、いつだろうか。夕焼けや虹のかかった空に感嘆の眼差しを向けたのはいつのことだったか。クーラーの風ではなく、自然の風にうっとりとなったのはいつだったのか。そうした喜びはけっして小さなものではないはずなのだが。
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