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#4   読み癖

 

人それぞれに本の読み癖というものはあって、たとえば推理小説を読むのでも、犯人が誰なのか考えながら読む人はけっこう多いようだ。いやそちらのほうがむしろ普通かもしれない。で、私がいやなのは、自分は推理小説の犯人がたいてい途中でわかってしまう、滅多にそれが外れることはないと自慢する人間が時々いることだ。

私は、自慢ではないが、推理小説を読んで犯人が当たったためしがないし、そもそも犯人を当てようとか、トリックを解明しようなどと考えながら読んだことはほとんど無い。自分の頭脳ではそんなことは不可能だと最初からあきらめているのである。だからこそ、先に書いたような人間の自慢話がしゃくにさわるのだが、それがしゃくにさわるのは、そういう人間の自慢話が本当か嘘か証明のしようがないことだ。証明のしようのない事を自慢されても、聞く方は「ああ、そうですか」と拝聴するしかないのだが、これは相当に不愉快なものである。まるで、推理小説の犯人がわかったためしの無いこちらが馬鹿か白痴のような気分になる。まあ、本当は、そういう人間の言葉など私は信じてはいないのだが。

そもそも、映画を見たり、小説を読んだりするのに、先の展開を考えながら見たり読んだりする人間の気持ちが私には分からない。それでは映画や本が、ただの当て物になってしまうではないか。私はむしろ、思いがけない意外な展開に驚きたい。そのためには、先の予測などしないにこしたことはないのである。

 

 

 

 

 





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