#6 学生運動と近親憎悪
中野翠は私の好きなコラムニストの一人だが、彼女に一つだけ気に入らない所がある。政治を感情で語る所である。もともと本人も言っているように政治には詳しくないらしいのだが、大学生の頃、学生運動を少しやっていたらしく、「民青」に対して異常な嫌悪感を持っているようなのである。我々から見れば民青も革マルもその他も同じ左翼だが、彼らにとってはそれこそ不倶戴天の敵みたいなのである。そのため、たとえば「思ひ出ぽろぽろ」のような作品(高畑勲のアニメだ)に対しても、「民青セーンス」とやっつけ、それで批評したつもりになっているようなのだが、読む方はなにしろ民青そのものを知らないのだから途方に暮れてしまう。どうやら、民青のヴ・ナロード(人民の中へ)的な手法や感覚の偽善性に我慢がならん、ということらしいのだが、書き方が冷静でないので、それがなぜいけないのかよく分からない。
思うに、学生運動をしていた人間というものは、体制よりも同じ左翼の他派閥を激しく憎むという点に共通した特徴がある。それがいわゆる内ゲバとなったりして彼らに同情的であった世間の人間たちからも愛想を尽かされることになるのだが、彼ら自身には、その点についての反省がまったくない、というのも興味深いところである。彼らのそうした心性や行動が、まさしく体制維持にとっては好都合であり、学生運動が長く続かなかった一つの原因であるのだが、かつての左翼青年たちは今、その事をどう思っているのだろうか。
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