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#12   文化と野蛮

 

文化とはためらいであり、立ち止まることである。近代文明の機能主義、効率主義は文化ではなく野蛮にすぎない。たとえば性欲と性交の間にはさまるためらいが恋愛であり、恋愛が文化なのである。文化とは人間の作り上げた様々な不要不急の装飾物であり、余剰であるが、それが人間を動物から区別しているのだ。今の世の中は、効率を追及するあまり、文化を失いつつある。「産湯を捨てようとして赤ん坊まで流してしまう」ようなものだ。

もしも物を食うことが栄養摂取の意味しかないのであれば、煮たり焼いたりする必要などない。生のままで食えばよい。煮たり焼いたり、様々に手を加えるところが人間の文化なのである。もっとも、手の加え方が異常に込み入ってきて不健康なものになってきた場合、それを退廃というのだが。

近代の産物を我々は文化的だと錯覚する傾向がある。その中には文化というよりは野蛮への退行だと思われるものもある。機能主義や効率主義は、その産物は文化的かもしれないが、主義自体は野蛮なものである。これらは結局、不要物、無駄の切り捨てであり、人間の生活をかえって非人間的なものにしていることが多い。そんなに機能や効率が大事なら、いっそ人間は全部ロボットに切り替えるか、生産的でない老人や病人は屠殺して食料にでもしてしまうのがよっぽど「効率的」だろう。まるでスウィフトみたいな発言だが、最近の生産至上主義の世の中は、いずれスウィフトのジョークを実現させるかもしれない。

 

 






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