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レポート課題 「殺人について」~レポートのポイントである分類的思考養成のために

 

1。タイトルは自由。「人が人を殺すことについて」「殺人についての一考察」「文学に描かれた殺人について」「ドラマはなぜ人を殺すか」「死刑制度の是非」「戦争と殺人」など、テーマを広げても絞ってもいい。

 

2。レポートの章立ての例 (タイトル「殺人についての一考察」)*3以下の細分化された章立ては省略

 

1.はじめに~このテーマの意義など

2.殺人の分類

 2.1 犯罪としての殺人または個人(民間人)による殺人

  2.1.1. 衝動的殺人

  2.1.2. 計画的殺人

  2.1.3.過失による殺人 

  2.1.4.正当防衛の殺人

  2.1.5. 尊属殺人

  2.1.6.複数犯による殺人(共同謀議の問題)

 2.2 国家による殺人

  2.2.1.戦争における殺人

  2.2.2.死刑という殺人

  2.2.3.重要人物の暗殺

  2.2.4.政策における危険を看過することによる民間人の死亡

 2.3 人間以外の加害者による殺人

 2.4 暗示による殺人(殺人教唆の問題)

 2.5 社会政策の不備による「自殺」という殺人

 2.6 意図的な人減らしとしての政策的殺人~植民のための原住民虐殺など

3.殺人の動機~情状酌量とは何か

4.個人と国家~国家による殺人への抵抗は可能か

5.良心的兵役拒否について

6.歴史上の大量殺人と、宗教者の対応

7.殺人者の「人権」と被害者の人権

8.殺人における「自由意志」の問題

9.殺人被害者の家族の問題

10.最後に







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昔、予備校講師をしていた時、日大芸術学部を受ける生徒がいたので、その小論文対策に作った解答例である。まあ、小問ひとつを15分から30分くらいで解答したので、出来は推して知るべしだが、時間をかけても大した解答ができる自信はない。しかし、ちょっとしたコントくらいなら、題材さえ与えられればさほど時間はかけないでも作れるという例である。





芸術科演劇コース 課題:〈CD・春節・花道〉のうち2つを使って物語を作る。

 

解答例

 台湾旅行から帰ってきた祖父が、お土産にくれたのは1枚のCDだった。表には小太りの中年男が洋服姿で写っている。その男の歌でも入っているのだろう。さほど興味もなかったが、せっかくくれた祖父へのお愛想に、そのCDをかけてみた。

 胡弓の音かと思われる、哀調を帯びた音のメロディが流れ、男の歌がやがて聞こえてきた。案外と高音で、きれいな声だが、歌詞は中国語だろう、まったく聞き取れない。でも、まるでフランス語のようにきれいな言葉だ。

「来年の春節には帰るとあなたと約束した。でも、私は帰れなくなってしまった。それがなぜかは言えない。私は帰りたい。もしも私の魂が鳥になれるなら、来年の正月には、きっとあなたのもとに帰ろう。あなたはその鳥が私だとわかってくれるだろうか」

 その曲が終わったあと、祖父が歌詞を訳してくれたのには驚いた。

「おじいちゃん、台湾語、できたの?」

「というより、実は、この曲は、私が昔台湾に行った時に作った歌なのさ。それが今でも流れているのがなつかしくて、このCDを買ったんだ」

 日本の歌謡曲歌手でもあった祖父が台湾に行ったのは、第二次大戦の慰問の際だったという。


 

文芸コース 課題〈記憶喪失・春の嵐・手紙〉の3つの言葉を使って散文作品を作る。

 

解答例

 外は強い風が吹いている。春の嵐だ。昨日まで満開だった桜も、この風できっとほとんど散るだろう。

 出勤してタイムカードを押し、私は自分の診察室に行った。仕事開始の時間にはまだ30分ほどある。

 机の上に手紙が載っていた。私はいぶかしく思いながら、その手紙の封を切った。

「前略 長い間ご無沙汰をしております。私の名前を覚えていらっしゃるでしょうか。以前、先生に治療していただいた者です。記憶喪失という症状は珍しいものなのかどうなのか、私にはわかりませんが、私はその記憶喪失の患者でした。先生はいろいろと手を尽くして私の病気を治してくださいました。有り難く思っております。退院して、夫との生活をやりなおすことになりましたが、その夫が結婚直後から私に暴力をふるい続け、それが私の記憶喪失の原因であったことに気づいたのは、それから数日後のことでした。記憶を捨てることで現実から逃れることはできないもののようですね。といって、『現実を変える』のもなかなか大変でした。とりあえず、先生にはお礼を申しあげます」

 封筒の裏側には、府中刑務所とあった。風に飛んだ桜の花びらが、窓に1枚張り付いた。 




映画コース 課題:主人公が遅刻することによって始まる物語を作る。

 

解答例

 メロスは遅刻した。セリヌンティウスは磔台の上で脇腹を処刑人に槍で刺され、呻き声をあげている。夕日はすでに地平線の下に沈み、その残照がまだ西の空に残っている。

「メロスは来たぞ! その男を処刑してはならぬ!」

 そう叫んだつもりだが、声がかすれて音にならぬ。あえぎながらメロスは磔台の下によろめき出た。セリヌンティウスの足に抱きつき、メロスは叫ぶ。

「来たぞ! セリヌンティウス……メロスはここにいるぞ」

 その言葉が聞こえたかどうか。セリヌンティウスは断末魔の苦しみの中で、目を薄くあけて、自分の足元にいるメロスを見下ろした。

「メロス……遅かった。俺は最後までお前を信じていたのに……」

 その目にあったのは、悲しみとも憎しみとも軽蔑ともメロスにはわからなかった。

 王が自分のそばに来たのをメロスは感じた。

「うまいやり方だったな。わざと少しだけ遅れることで、精一杯約束を守ろうとしたことを示しながら、わしとの約束で自分の命は助かるとは。所詮人間はこんなものよな」

 メロスは激怒し、王に反論しようとしたが、反論できないものが彼の胸にはあった。これからの自分の長い人生を彼は思った。


 

演劇コース 課題:〈道化師・奈落・号泣〉のうち2つを使って物語を作る。

 

解答例

 その道化師は号泣していた。彼の愛するブランコ乗りの女が、今日、手をすべらしてブランコをつかみ損ね、落下して死んだのだ。ふつうなら、ブランコ乗りを演ずる際には下に危険防止のネットが張られているのだが、新しく団長になった男は、ネット無しでの危険な演技をこのサーカスの売り物にしていたのだ。

 演技は即座に中止され、今日の興行もそこで終わりになったが、単なる事故であったので、警察の取調べも簡単に終わった。

 団員たちは死んだ女の通夜をしたが、酒が回ると新しい団長への批判の言葉が団員たちの口から上がってきた。

「あいつはどこへ行った? ジャコモは」

 一番、団長を批判しそうな道化師の姿が見えないので、ライオン使いの男が言った。

「一人で飲んでるんだろうよ。あいつはジャンヌが好きだったからな」

 そう話しているところに道化師が帰ってきた。

「お前、まだその化粧落とさないのか?」

 道化師は、奇妙な微笑を浮かべた。その手や道化服には何か赤いものがついていた。



文芸コース 課題:〈殺人・祈り・手紙〉を使って創作する。

 

解答過程

1.この3つの語を物語的に関連させる。

2.たとえば、殺人犯からの手紙が被害者の遺族に届く。遺族は殺人犯のために祈る。

3.たとえば、法のさばけない犯罪の被害者の祈りが通じて殺人が行われる。

4.どちらにせよ、平凡な話にしかなりそうもないので、構成を工夫する?

5.極端な例として「手紙による殺人」とか「祈りによる殺人」はどうか。

 

解答例

「普通の人間が絶対に手を出せないような権力者の犯罪を裁く方法はあるのかな?」

K**が言った。私は「それは具体的な人物を念頭に置いての話かね?」と聞き返した。

「まあ、現実の人物ではあるが、特定の一人ではない。そういう人間は何人もいるさ」

「ならば、まあ、神にでも祈るんだな。どうかそいつを殺してくれってね」

K**は苦笑した。「神自身が殺人を禁じているんだから、それは無理だろう」私は言い返した。「君が裁きたいというほどの人間なら、殺人に匹敵するくらいの罪を犯しているんだろう? そういう人間の犯罪を見逃すような神ならば、存在したって無意味じゃないか」

「僕が言うのは、もっと現実的な方法さ。権力を持った悪党を裁く方法は無いかという」

「そうだな。手紙でも書いたらどうだい」「手紙?」「そうさ。そいつの悪事を徹底的に糾弾し、そいつが良心の呵責に耐えかねて自殺するくらいの手紙をそいつに送るんだ。これなら、たとえ、それが本当の原因でそいつが自殺しても、外部の人間には何が自殺の原因かわからないし、たとえその手紙が咎められても、自殺した人間には加害者というのは存在しないことになっているから、法的には問題ない。ただ問題は……」「何だい?」「それほど心のヤワな人間が権力の座につくことはまずありえないってことだな」「まったくだ」私とK**は笑いあった。



 

課題;〈文芸・入学・希望〉を使った小論文

 

解答例

 私は貴大学芸術科文芸コースに入学を希望して、この小論文を書いているが、このテーマの意図を推定することを私のこの小論文のテーマとしたい。

 明らかに、この三つの語句は小論文のテーマとは言い難い。「文芸」だけならまだしも、それに「入学」や「希望」まで入れよというのは、三題話にはなっても、「論じる」ものにはならない。では、このテーマの意図は何か。それは、これをあくまで小論文として処理しようという馬鹿正直な受験生の悪あがきを見て楽しもうという意地の悪い動機ではないだろうか。であるなら、私のようにひねった解答こそが、合格答案としてふさわしいのだ。 










Would it not be better for him to die at once, and go to wait for her in the blessed regions of a half-barbaric futurity?

And yet, that awful tiger, those shrieks, that blood!

Her decision had been indicated in an instant, but it had been made after days and nights of dreadful deliberation. She had known she would be asked, she had decided what she would answer, and, without the slightest hesitation, she had moved her hand to the right.

The question of her decision is one not to be lightly considered, and it is not for me to presume to set myself up as the one person able to answer it. And so I leave it with all of you: Which came out of the opened door—the lady, or the tiger?

 

(注)

 

regions:地域、地方、領域  futurity:来世、未来  indicated:示された  deliberation:熟考 *前にも調べたか?  presume:推定する、仮定する、考える  set myself up:自分をset up する *set up=主張する、掲げる、設置する

 

(研究)

 

not to be lightly considered

・「軽々しく考えられるべきもの」とでも訳すか。toは義務・当然を表すと聞いた覚えがある。

 

[試訳]

 

彼にとっては、即座に死んで、祝福された半野蛮な来世で彼女を待つ方がよいのではないだろうか?

だがしかし、あの恐ろしい虎、その叫び声、あの血!

彼女の決定は即座に示されたが、しかしそれは幾つもの昼と夜を経た恐ろしい熟考の中で作られたものである。彼女は自分が尋ねられるということを知っていた。彼女は自分がどう答えるかも知っていた。そして、ほんの少しもためらうことなく、彼女は手を上げて右の方を指したのであった。

彼女の決定についてのこの質問は軽々しく考えられるべきものではないし、私自身がそれに答えうる唯一の人間だとも主張する気はない。そこで、私はその答えの判断をあなた方に残すことにしよう。開いた扉から出てきたのはどちらだろう。女か、それとも虎か?

 

 

 

 

 

 

               「女か虎か」完

 

 

 

 

 

*話はこれですべて終わりである。「女か、虎か?」という問いに答えるのは読者であるあなたである。このように、話の結論を謎のままに残す話をリドルストーリーと言うが、この「女か虎か」は、その中でもっとも高名なものであり、リドルストーリーの代名詞のようなものだ。しかし、案外と誰も話自体を読んではいないはずだから、ここで掲載したわけである。どうだっただろうか。

 











But how much oftener had she seen him at the other door! How in her dreadful dreams had she torn her hair when she saw his start of delight as he opened the door of the lady! How her soul had burned in agony when she had seen him rush to meet that woman, with her bright cheek and sparkling eye of triumph; when she had seen him lead her forth, his whole frame fresh with the joy of recovered life; when she had heard the glad shouts from the crowds, and the wild ringing of the happy bells; when she had seen the priest, with his joyous followers, advance to the couple, and make them man and wife before her very eyes; and when she had seen them walk away together upon their path of flowers, followed by the tremendous shouts of the happy people in which her one despairing shriek was lost and drowned!

 

*描写が念入り過ぎるくらい念入りである。お茶漬けで食事を済ますような日本人にとっては、腹にもたれそうなくらいだ。しかし、これくらい書かないと、王女の悲哀が読者に伝わらないのも確かだろう。段落の途中からはすべて「How her soul was burned in agony」を受けて、セミコロンでつなぐ形で、その原因となる事柄を並列的に書いている。ある意味、8行にも渡って1文だけで書かれているようなもので、重厚な文章だ。面倒なので、文を分けて訳すことにする。

 

(注)

oftener:よりしばしば *恋人の男が虎の部屋の扉を開ける夢想よりもしばしば、ということ。    torn her hair:自分の髪を掻き毟る   agony:激しい苦痛   frame:体 *通常は「構造、機構、体格」などの意味だが、ここでは彼の体全体、くらいの意味だろう。   recovered:復活した  very:まさにその  shriek:悲鳴

 

(研究)

had she seen  had she torn

・倒置法である。

 

[試訳]

 

しかし、どれほど、よりしばしば彼女は、彼がもう一方の扉を開けることを夢に見ただろう! 彼女の恐ろしい夢の中で、女のいる扉を開けた時の彼の喜びの驚きを見て、彼女はどれほど自分の髪を掻き毟ったことだろう! どれほど彼女の魂は激しい苦痛に焼かれたことだろうか。……明るい頬と勝利に輝く目の女に向かって彼は駆け寄り、彼女を前に導く。彼の体全体は回復された生の喜びに満たされる。王女の耳は観衆の楽しげな叫び声と、幸福の鐘が荒々しく鳴り渡るのを聞く。僧侶が楽しげな一団を引き連れて前に進み出て、彼女のまさにその目の前で闘技場の中の二人を夫と妻にする。花の撒き散らされた小道を通り、観衆の喜びの声に送られて幸せな二人は闘技場を出て行く。その歓喜の声の中で、彼女のたった一つの悲鳴は搔き消され、呑み込まれる。 

 







 

Now, the point of the story is this: Did the tiger come out of that door, or did the lady?

 

The more we reflect upon this question the harder it is to answer. It involves a study of the human heart which leads us through various confusions of passion, out of which it is difficult to find our way. Think of it, fair reader, not as if the decision of the question dependent upon yourself, but upon that hot-blooded, half-barbaric princess, her soul at a white heat beneath the combined fires of despair and jealousy. She had lost him, but who should have him?

How often, in her waking hours and in her dreams, had she started in wild horror and covered her face with her hands as she thought of her lover opening the door on the other side of which waited the cruel teeth of the tiger!

 

  原文では段落と段落の間には空きは無いが、私の判断で全体の中心となる短い段落と次の段落の間を1行空けることにした。

 

(注) 

reflect:熟考する *辞書を引かなくても文脈から推測はできただろう。   despair:絶望 *形容詞の「デスペレート」は知っている、という人が多いのではないか?   started:びくっとする  *こういう、「知っているつもりの単語」が一番厄介である。「始めた」という訳ではおかしいのは感じても、たいていの中高生は辞書を引くのが面倒なので、ついいい加減な訳をする。辞書はマメに引こう。と、これはかつての怠け者学生からの忠告。

 

[試訳]

 

さて、この物語のポイントはここである。扉から出てきたのは虎だっただろうか、それとも女だっただろうか?

 

この問いかけを熟考すればするほど、答えるのは難しくなる。この問題は人間の心についての研究題目を含んでおり、それは様々な情熱の混迷の中に我々を導いて、そこから抜けだすことを困難にさせる。賢明な読者よ、お考えいただきたい。この問いかけの決定はあなた自身が下すのではなく、あの熱い血を持った、半野蛮な王女にかかっているのである。彼女の魂は絶望と嫉妬の白い炎に焼かれている。彼女は彼を失った。だが、誰が彼を得るのか?

いかにしばしば彼女はその覚醒と眠りの中で、激しい恐怖に襲われ、我が手で顔をおおっただろう。彼女の恋人がもう一つの扉を開け、そこに残酷な虎の歯が待っていることを想像して! 

 









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