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願望充足というのは小説の基本である。だから面白いのだ。読者の願望(作者の願望でもある)が小説の中で実現されるから楽しいのだ。しかし、最初からチートである「なろう系」だとさすがに読者も馬鹿馬鹿しくなって冷めてしまうのだろう。孫悟空だって最初からチートだったわけではない。ジャン・バルジャンなど、最低の境遇からどんどん上昇して最後は神のような聖者になるから面白いのだ。美男で剣の達人で、モラルに縛られないから女は犯し放題、敵は殺し放題、という「眠狂四郎」がベストセラーになったのも、読者の隠微な願望を充足させたからである。
なお、私自身は、良くできた小説を読むのは好きだが、現実人生の人間関係のゴタゴタは大嫌いだから、「島耕作」みたいな話は受け付けない。恋愛の話も、「さっさとやれよ。やるだけのためにいちいちゴタゴタすんじゃねえ」と思ってしまう。

「剣と鏡」は放置中だが、これも、はたして私はあのゴタゴタを本当に書きたいのか、と悩んでいるところである。誰か、抜群に上手い小説家か漫画家が書いてくれないものか。
とりあえず、現実の(というか「日本書紀」の中の)話をそのまま書いても、それなら「日本書紀」を読んだほうがマシ、となるのは目に見えている。事件を時系列で並べていっても面白くならないことはほぼ確実だろう。
現在の構想は、仏教伝来から壬申の乱までを「現代劇」かつ「政治劇」として書くことである。ただ、そういうアイデア(手法)は昔から、特に演劇などであると思うが、名作になったものがあるとも思えないので、ためらっているのである。



  1. 「爺だけどオレ強えー!」「息子より若い嫁もらってむひょー」な池波正太郎先生著・『剣客商売』(笑)【RT】

  2. なろう系に限らずだいたいそういうもんですよ。島耕作だってサラリーマンのファンタジーだし水戸黄門だって庶民の救われたい願望。〜ポルノ、という貶め方っていつも冷ややかに見てしまいます。ちょっと複雑にひねったら今度は「それでは売れません」って言うくせに(笑)。



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