柳に鎮痛解熱効果があるとは初めて知ったが、いずれ書こうかなと思っている清末期の中国の医者を主人公とした探偵小説のネタに使えるかもしれない。
(以下引用)
アセチルサリチル酸
IUPAC命名法による物質名 | |
---|---|
臨床データ | |
Drugs.com | monograph |
MedlinePlus | a682878 |
胎児危険度分類 | |
法的規制 | |
投与方法 | 通常は経口 |
薬物動態データ | |
生物学的利用能 | 80–100%[1] |
血漿タンパク結合 | 80–90%[2] |
代謝 | 肝臓, (CYP2C19 と CYP3A), 一部は腸壁にサリチル酸塩に加水分解する.[2] |
半減期 | 低用量のときは2-3時間、高用量のときは15-30時間[2] |
排泄 | 尿(80〜100%)、汗、唾液、糞便[1] |
識別 | |
CAS番号 (MeSH) |
50-78-2 |
ATCコード | , N02BA01 |
PubChem | CID: 2244 |
DrugBank | DB00945 |
ChemSpider | 2157 |
UNII | R16CO5Y76E |
KEGG | D00109 |
ChEBI | CHEBI:15365 |
ChEMBL | CHEMBL25 |
PDB ligand ID | AIN (PDBe, RCSB PDB) |
別名 | 2-acetoxybenzoic acid acetylsalicylate acetylsalicylic acid O-acetylsalicylic acid |
化学的データ | |
化学式 | C9H8O4 |
分子量 | 180.157 g/mol |
物理的データ | |
密度 | 1.40 g/cm3 |
融点 | 135 °C (275 °F) |
沸点 | 140 °C (284 °F) (分解) |
水への溶解量 | 3 mg/mL (20 °C) |
アセチルサリチル酸(アセチルサリチルさん、英: acetylsalicylic acid)は、示性式 C6H4(COOH)OCOCH3、分子量 180.16 の有機化合物である。代表的な消炎鎮痛剤のひとつで非ステロイド性抗炎症薬の代名詞とも言うべき医薬品。ドイツのバイエル社が名付けた商標名のアスピリン(独: Aspirin)がよく知られ、日本薬局方ではアスピリンが正式名称になっている。消炎・解熱・鎮痛作用や抗血小板作用を持つ。サリチル酸を無水酢酸によりアセチル化して得られる。
使用対象[編集]
現在用いられている用途[編集]
アスピリンは、関節炎、痛風、腎結石、尿路結石、片頭痛、さらに、小規模から中規模な手術後や、外傷、生理痛、歯痛、腰痛、筋肉痛、神経痛などの鎮痛目的で使用される。この他、抗血小板薬として使用する場合もある。
歴史[編集]
ヤナギの鎮痛作用はギリシャ時代から知られていた[3]。紀元前400年ごろ、ヒポクラテスはヤナギの樹皮を熱や痛みを軽減するために用い、葉を分娩時の痛みを和らげるために使用していたという記録がある[4][5]。
19世紀にはヤナギの木からサリチル酸が分離された。その後、アセチルサリチル酸の出現まではサリチル酸が解熱鎮痛薬として用いられたが、サリチル酸には強い胃腸障害が出るという副作用の問題があった。しかし1897年、バイエル社のフェリックス・ホフマンによりサリチル酸がアセチル化され副作用の少ないアセチルサリチル酸が合成された。
アセチルサリチル酸は世界で初めて人工合成された医薬品である。1899年3月6日にバイエル社によって「アスピリン」の商標が登録され発売された。翌1900年には粉末を錠剤化。発売してからわずかな年月で鎮痛薬の一大ブランドに成長し、なかでも米国での台頭はめざましく、20世紀初頭には、全世界のバイエルの売り上げのうち3分の1を占めた。
しかし、第一次世界大戦のドイツの敗戦で連合国によって商標は取り上げられ、1918年、敵国財産没収によりバイエルの「商標」「社名」、そして「社章(バイエルクロス)」までもが競売にかけられた。この時から76年間、1994年にバイエルが全ての権利を買い戻すまで、米国ではバイエル社製のアスピリンは姿を消すが、しかしこの間もアスピリンは権利を買い取ったスターリング社によって製造される。その商品名には「バイエルアスピリン」がそのまま使われ、しかもバイエルクロス付きで売られ続けた。「バイエルアスピリン」というブランドがいかに人々の信頼を得ていたかを示すエピソードのひとつであったとも言える。
第一次世界大戦後のアメリカ合衆国では禁酒法や大恐慌などによる社会的ストレスからアセチルサリチル酸を服用する人々が激増しアスピリンエイジという言葉が生まれたほどであった。アセチルサリチル酸は頭痛を緩和するものの、脳がつかさどる精神疾患の治療には役立たないことが現在では知られている。しかし、当時の医学では頭痛と精神疾患との関係は不明瞭であったため、アセチルサリチル酸が用いられた。
また、アセチルサリチル酸は血小板の凝集を抑制して血栓の形成を妨げることから、脳梗塞や虚血性心疾患を予防するために抗血小板剤として(毎日)少量のアセチルサリチル酸を処方することがある。
この他、アセチルサリチル酸の少量長期服用で発癌のリスクを減少させることができるとの報告もある[6]。
特にアメリカでは疾患を持っていなくても日常的にアセチルサリチル酸を飲む人が多く、現在でもアメリカはアセチルサリチル酸の大量消費国であり年間に16,000トン、200億錠が消費されている。ただし、アセチルサリチル酸の過剰摂取は、その副作用によって胃潰瘍などの諸症状の原因となる。さらに、鎮痛作用によって、病気の症状に気づくのが遅れることがあり注意が必要である。アメリカでは年間で10万人弱が副作用の胃痛で入院し、2,000人が死亡していると言われている。アメリカにおける薬の副作用被害の4分の1を、アセチルサリチル酸が占めているとも言われる。
作用機序[編集]
メカニズムを解明したのはイギリスのロイヤルカレッジ薬理学教授・薬理学者ジョン・ベイン博士。1971年、彼は、「アセチルサリチル酸は体内での伝達物質(プロスタグランジン)の合成を抑制し、痛み、発熱、炎症に効果を発揮する」ことを解明発表した。実にホフマンの合成から70年以上の歳月が経過していた。
アセチルサリチル酸はシクロオキシゲナーゼをアセチル化することにより阻害しプロスタグランジンの産生を抑制する。つまり、アラキドン酸と競合してシクロオキシゲナーゼを阻害するほかの非ステロイド性抗炎症剤とは異なる機序により抗炎症作用を示す。炎症、発熱作用を持つプロスタグランジンが抑制されることで抗炎症作用・解熱作用を発現する。このときの用量は330 mg1日3回である。また、シクロオキシゲナーゼは血小板の作用に関係するトロンボキサンの合成にも関与している。アセチルサリチル酸はトロンボキサン作用も抑制するため、抗血小板作用も有し、抗血小板剤として81mgから100mgを1日1回の投与を行うことがある。
プロスタグランジンを発見しアセチルサリチル酸の抗炎症作用のメカニズムを解明した薬理学者のジョン・ベイン(イギリス)、ベンクト・サムエルソン(スウェーデン)、スーネ・ベルクストローム(スウェーデン)の3人は1982年にノーベル医学生理学賞を受賞した。プロスタグランジンの研究は、この後急速に脚光を浴び、生化学の最先端分野の1つとして今日に至っている。
合成法[編集]
禁忌事項[編集]
副作用[編集]
胃障害が生じる可能性がある。イオン捕捉により胃細胞に取り込まれたアセチルサリチル酸がプロスタグランジン生産を抑制し,結果胃酸分泌制御・胃粘膜保護も同時に抑制されるためである。
胃への副作用を抑制するために、現行の市販薬は胃を保護するための薬を配合している物が多い。例えばケロリンのような富山の配置薬は和漢薬のケイヒ末を配合している。他に代表的な市販薬バファリンはアセチルサリチル酸を制酸剤であるダイアルミネート(またはダイバッファーHT)で包んでいる(制酸剤は共にアルミニウム、マグネシウム等の化合物、または合成ヒドロタルサイト)。
風邪(特にインフルエンザや水痘)に感染した小児が使用するとライ症候群を引き起こすことがある。肝障害を伴った重篤な脳障害で死に至る危険があり、小児は服用するべきでない。小児の解熱鎮痛薬としては、アセトアミノフェンなどがある。
なお、高尿酸血症の原因の1つとしてアセチルサリチル酸の服用が挙げられているので、痛風患者は、鎮痛剤としてのアスピリンの服用は避けるべきという説がある一方で、尿細管内での尿酸再吸収を抑制するため、尿酸排泄促進剤としても使用されている。
また、抗凝血を目的に高用量のアセチルサリチル酸を服用しても効果が現れないばかりか、胃に多大な負担をかけるので注意が必要である。
アスピリンは、非ピリン系の薬品[7]であり、アンチピリンのようなピリン系の薬品[8]ではない。カタカナ表記では「ピリン」の部分が同じなので混乱しやすいが全く無関係である[9]。したがってアスピリンとピリン系の薬品とでは副作用も異なる。
報告されている副作用[編集]
一般的な副作用は次の通りである:吐き気、消化不良、消化器潰瘍・出血、肝臓酵素増大、下痢、ふらつき、塩および体液停留、高血圧、喘息(アスピリン喘息と呼ばれている)。
まれな副作用は次の通りである:食道潰瘍、心不全、高カリウム血症、腎臓障害、昏迷、気管支痙攣、発疹。
飲み合わせ[編集]
- エチルアルコール(アルコール飲料):吸収が早くなり作用が強くなる。
- イチョウ葉エキス・にんにくエキス(アリシン)・ビタミンE:作用が強くなり出血傾向が増す。
- たばこ:抗血小板作用が弱くなる。
- イブプロフェン:抗血小板作用が弱くなる。
副作用の抑制胃腸薬[編集]
- 胃酸分泌抑制薬
- プロトンポンプ阻害薬 - 胃の壁細胞のプロトンポンプに作用し、胃酸の分泌を抑制する薬である。
- ヒスタミンH2受容体拮抗薬 - ヒスタミンH2受容体に拮抗し、胃酸の分泌を抑制する。
- 胃粘膜保護剤 - 荒れた胃粘膜を覆って保護し、修復を補助する。
- 制酸剤 - アルカリ性の化合物で胃のpHを上昇させ、増えすぎた胃酸を中和する。