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刑士郎は防弾チョッキを着て、脇の下にチェコ製CZ75(弾数が15発ある軍用拳銃で、大石が調達したものだ。)を専用ホルスターで吊るし、背中には軽機関銃を背負ってその上からコートを着た。頭には鉄板で内貼りされたヘルメットをかぶる。ぱっと見はただのオートバイ用のヘルメットだが、軍用ヘルメットに等しい防御力がある。

ベランダの鉄柵越しに双眼鏡で見ると、明治会前の道路には黒い車が何台か停まっている。門の前には黒服の男たちが並んで、来客に頭を下げたりしている。

1時、見張り2名を門の外に置いて、明治会の鉄の扉が閉まった。
5分後、遠くから列をなして7,8台の車がやってきた。明らかに旭組の殴り込みである。
刑士郎は、大石大悟に顔を向けた。大悟の顔に、さすがに心配そうな色が浮かんでいる。
「お別れだな、大悟、生きていたらまた会おう」
「ああ、死なないでくれよ、冬木さん」
大悟と握手をして刑士郎はマンションを出た。背中で軽機関銃が重い。
あらかじめ大悟が準備してあった中古オートバイで、旭組の事務所に向けて出発する。
道の半分ほど来たところで、遠くで轟音が聞こえた。
大悟が明治会の屋敷に迫撃砲を打ち込んだのだ。
続いて、2発、3発、4発……。
その前の旭組の殴り込みと、この砲撃で、はたして何人が生き残るだろうか。

旭組のビルの入り口には、見張り役のチンピラが二人立っていた。
遠方からそれを見てとった刑士郎は、オートバイをビルから離れたところで止め、歩いて近づいて行った。
ビルの角で曲がって、銃にサイレンサーを着ける。都合よく、チンピラの一人が、ビルの角で曲がった刑士郎の行動に不審を抱いて、近づいてきた。その胸に、籠ったような音をたてて銃弾がめり込む。その死骸の傍を通って、旭組の入り口前に刑士郎は進んで行った。銃はコートの下に隠れている。
「おい、お前……」
誰何の声がしたかどうかの間に、刑士郎の放った銃弾が相手の体のど真ん中を射抜く。
コートを脱ぎ捨て、銃はホルスターに戻して、軽機関銃を背中から抜き出して構えながらビルの中に入る。
雑居ビル風の見かけとは異なり、入ったすぐそこが広い事務所になっている。そこに、留守番役の組員が数人いた。
「何だ? お前……」
と言いかけた男が、刑士郎の構えている機関銃に気づいて絶句した。
刑士郎は引き金を引いた。
立ち上がりかかっていた男たちの数人に弾が当たってのけぞる。
数人が、ソファの陰に身を隠してピストルを撃ってきた。
だが、機関銃の猛烈な弾数に圧倒されている。ソファを射抜いて当たる弾もある。
一階にいた数人はわずか1分ほどの間でほぼ全滅した。
だが、その瞬間、刑士郎は車に跳ね飛ばされたような衝撃を受けた。








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