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(ディゾルブ)

[ホテル・クラレンスのロビー。デスク前]

  ブルジャノフ、イラノフ、コパルスキーが支配人に近づく。彼らは一つのスーツケースを二人で持っている。

コパルスキー「あなたが支配人か?」

支配人(疑わしげに三人を見て)「はい」

コパルスキー「紹介させて貰おう。こちらは同志イラノフ、ロシア通商局の一員だ」

支配人(緊張した、上品な態度でお辞儀をしつつ)「ムッシュー」

イラノフ「こちらは同志コパルスキー」

支配人「ムッシュー」

ブルジャノフ「私は、同志ブルジャノフ」

支配人「ムッシュー」

ブルジャノフ「このホテルの宿泊費はいくらかね」

支配人(彼らを追い出そうと)「そうですねえ、紳士方、おそれいりますが、少々お高いようで」

ブルジャノフ「なぜ恐れるのだ?」

  他の二人は頷く。支配人はただ一つのスーツケースに注意を向ける。

支配人(横柄に)「お泊め申し上げることができるかもしれません。ほかにお荷物は?」

イラノフ「ああ、そうだな。だが、ここにはこれを保管できるくらい大きな金庫はあるのか?」

支配人「残念ながら、ここの保管室にはそのサイズの金庫は無いようです。しかし、金庫付きの続き部屋がありますが」

イラノフ「その方が好都合だ」

支配人「しかし、おそれいりますが、皆さん……」

ブルジャノフ「この男は恐れてばかりいるな」

  他の二人は同意の目を見交わす・

支配人(少々うんざりして)「少しご説明しようと思っただけです。そのお部屋は、きっとあなたがたにとってご都合がよろしいでしょう。しかし、あなたがたの政治的信条に合うかどうか、少々疑問です。そこはロイヤル・スイートなのですが」

  ロイヤル・スイートという言葉は、三人をぎょっとさせる。

ブルジャノフ「ロイヤル・スイート!(支配人に向かい)少し待ってくれ」

  三人のロシア人は、支配人から少し離れ、鳩首会談をする。

ブルジャノフ(低い声で)「同志たちよ、警告しておくが……我々がロイヤル・スイートに泊まった事がモスクワに知れたら、我々は恐るべきトラブルに巻き込まれるだろう」

イラノフ(彼の優雅な時間への権利を守ろうと)「我々は、金庫が必要だったから、ここに泊まらざるを得なかったのだと言えばいい。これは完璧な理由だ。十分に大きな金庫はほかには無いのだから」

  他の二人は、その提案を満足と共に受け入れる。

ブルジャノフとイラノフ「その通りだ。素晴らしい、実に素晴らしい」

  突然、ブルジャノフはまた疑いの気分になる。

ブルジャノフ「もちろん、我々は、スーツケースの中の品物を取り出して、三つか四つに分けて保管室に預け、小さな部屋を借りることもできるわけだが。この考えはどうだ?」

  少しの間、三人は、彼らの輝かしい計画が崩壊したように思う。それから、イラノフが三人を救う。

イラノフ「そうだ。それも一つのアイデアだ。しかし、いったい誰が、そのアイデアを採用する必要があるなどと言うのだ?」

  ブルジャノフとイラノフは、その論理を検討し、彼らの顔は輝く。

二人「その通りだ、まったくその通りだ!」

ブルジャノフ(支配人に向き直って)「ロイヤル・スイートを頂こう」

  支配人は三人をエレベーターに導く。カメラは三人を追い、下に下がって画面を狭めながら二人のロシア人が持っているスーツケースを写す。

 





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