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別ブログに載せたことのある翻訳だが、ここにも載せておく。エルンスト・ルビッチ監督、ビリー・ワイルダー他脚本の「ニノチカ」である。大人のロマンチック・コメディの傑作だ。
訳は例によっていい加減なところが多いかと思う。



「ニノチカ」 (下線部・後日要調)

  

   脚本(ジェームス・ブラケット、ビリー・ワイルダー、ウォルター・ライシュ

   原作(メルキオール・レンジェル

   監督(エルンスト・ルビッチ)     1939年.MGM製作

 

 キャスト

   ニノチカ:グレタ・ガルボ

   レオン・ド・アルグート伯爵:メルヴィン・ダグラス

   工作者ラジーニン:ベラ・ルゴシ    他

 

  この脚本は、映画化されたものとは異なる部分がある。

 

 

(フェイド・イン)    *「溶明」つまり、画面が明るくなり、映像が現れること。

[パリのEstablishing Shot。四月。]  原注:映画ではタイトルと共に、コンコルドホテルのロングショットがあった。この映画はかの素晴らしき日々のパリ、サイレン(シレーヌ)が警報ではなくブルネットの美女であった頃の、そしてフランス男が明かりを消すのは空襲のためではなかった頃のパリを舞台としている。

 

(ディゾルブ)     *画面が重なりながら転換すること。

[ホテル・クラレンスの豪華なロビー]

  カメラは近づいてデスクのクローズ・ショットになる。その背後には街路へと続く回転ドアがある。その回転ドアを通って奇妙な服装の男が入って来る。明らかに周りの雰囲気にはふさわしくない男である。これは同志ブルジャノフ、ロシア通商局の一員である。パリの四月の陽気にも関わらず、彼は典型的なロシア風の服装をしている。毛皮の襟のついた外套、毛皮の帽子、重そうなブーツ。

  ブルジャノフはロビー全体を眺め渡す。明らかにその豪華さに圧倒されている。ホテルの支配人が、彼の奇妙な格好を不審に思い、彼に近づく。

支配人(礼儀正しく)「何かお手伝いできましょうか、ムッシュー?」

ブルジャノフ「ノー、ノー」

  彼は街路に出て行く。支配人は日常の業務に戻るが、その時突然、同じような格好の二人目のロシア人がドアを開けて入ってきて、中を見渡す。彼は同志イラノフである。

  支配人は、今度こそ完全に戸惑って、彼に近づく。

支配人「何か? ムッシュー?」

イラノフ「見ているだけだ」

  イラノフは出て行く。支配人は再び仕事に戻るが、その時突然、前の二人と同じ格好の三番目の男が回転ドアから入ってくるのを見る。これは同志コパルスキーである。

  コパルスキーは回転ドアの前から動かず、ロビーの様子を眺め、飲み込もうとしている。支配人は今や、完全に驚いている。

[ホテル・クラレンス前の街路]

  一台のタクシーが舗道の縁石の側に停まっている。ブルジャノフとイラノフはその側で待っている。イラノフはスーツケースを抱えている。コパルスキーがホテルから戻ってきて、仲間と合流する。

コパルスキー「同志らよ、どうしてお互いに欺きあう必要があろうか。あそこは素晴らしい」

イラノフ「正直になろう。ロシアにあのような物があろうか」

三人(互いに激しく同意して)「いや、いや、けっして!」

イラノフ「あのようなホテルのベッドがどんな物か想像できるか?」

コパルスキー「あのようなホテルでは、ベルを一度鳴らすと、ボーイがやってくるそうだ。二度鳴らすとウェイターがやってくる。そして、三度鳴らすと何がやってくるか、想像できるか?……メイドが、フランス人のメイドがやってくるんだ!」

イラノフ(目を輝かせて)「同志よ、もし九回鳴らしたら? ……さあ、中に入ろうではないか!」

ブルジャノフ(彼を止めて)「ちょっと待て、ちょっと待て。その考えに反対したくは無いが、それでも言おう。我々はホテル・テルミナスに戻るべきだと。モスクワはそこに予約を取ってある。我々は公的な使命を帯びているのであり、我々には上層部の指示を変更する権利は無い」

イラノフ「お前の勇気はどこへ行ったのだ、同志ブルジャノフよ?」

コパルスキー「お前は、あのバリケードで戦った、あのブルジャノフなのか? 今のお前は、ただの風呂付の部屋を取ることを恐れている」

ブルジャノフ(タクシーに乗り込みながら)「私はシベリアには行きたくない」

  イラノフとコパルスキーは彼の後にしぶしぶ従う。

イラノフ「私はホテル・テルミナスに泊まりたくない」

コパルスキー「もしもレーニンが生きていたら、彼は言ったはずだ。『ブルジャノフ、同志よ、お前は生涯でただ一度パリにいるのだ。愚かであってはならないぞ』、と。あそこに入って、ベルを三度鳴らそうではないか」

イラノフ「彼はそうは言わなかっただろう。彼が言うのは、『ブルジャノフよ、お前は安ホテルで暮らすべきではない。ボルシェビキとしての威信をお前は何とも思わないのか。お前は、お湯のボタンを押すと水が出て、水のボタンを押したら何も出てこないような、そんなホテルに泊まりたいのか? ほほう、ブルジャノフよ!』と」

ブルジャノフ(弱気になりつつ)「私は、我々の留まるべき場所は一般人民と同じ場所であるべきだと思う。だが、私ごときがレーニンに逆らえようか。それなら、入ろう」

・三人はタクシーを離れ、歩き出す。そして見ている我々も。












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