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特に何かに使う予定はないが、共産主義政府、あるいは戦時政府のドタバタ劇として興味深い。
これに近い強権主義は第二次大戦時の日本でも行われたもので、共産主義だけのものではないが、清沢冽の「暗黒日記」では、当時の日本政府や官僚を「共産主義」的だと批判している。つまり、政府による厳しい統制=共産主義という認識があったのだろう。
共産主義の対比語は資本主義だが、その代わりに「自由主義」を共産主義の対比語としている人間も多い。これは、共産主義=人間性の束縛という認識が潜在的顕在的両面にあるということだろう。つまり、「労働=苦役」という認識は自然なものであるため、その強制が必須である以上、共産主義=人間性の束縛という認識になると思われる。資本主義も労働を労働者に強いるものだが、その命令が国家の強制ではなく、労働者と資本家の契約による任意なものである以上、その苦役は労働者が自ら選び取ったものだ、とされるわけである。ここに(資本主義=自由主義)のマジックがある。つまり、Aという地獄とBという地獄のどちらでも選べるから、ここは自由主義世界だ、となるわけだ。

(以下引用)

戦時共産主義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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戦時共産主義(せんじきょうさんしゅぎ、ロシア語Военный коммунизм)とは、ロシア内戦時のソビエト・ロシアにおける政治・経済体制を指す。ソビエトの正史によると、「内戦によりあらゆる正常な経済機構、経済関係が崩壊した状況下で、都市部と赤軍に武器と食糧の供給を続けるためにボリシェヴィキが採用した政策」である。名称はパウル・レンシュ英語版の「戦時社会主義」にあやかったものとされる。

戦時共産主義は1918年6月、最高国民経済会議英語版によって実施に移され、1921年3月21日ネップ(新経済政策)の開始により終了した。

戦時共産主義の各政策[編集]

  1. あらゆる企業の国営化、徹底した中央統制の導入
  2. 外国貿易の国家独占
  3. 労働者の規律維持、ストライキには場合により銃殺刑で対処
  4. 「非労働者階級」に労働義務を賦課
  5. 穀物割当徴発制度(Prodrazvyorstka) - 農民から必要最小量を除く余剰農産物を徴発し、中央より他階級に分配
  6. 中央統制による食料、日用品の配給
  7. 私企業の非合法化
  8. 鉄道を軍に準じるレベルで統制

これらの政策はすべて内戦時に実施されたため、文書上にみられるよりもはるかに多くの混乱を招き、連携を欠くものであった。ロシアの大部分はボリシェヴィキの支配下になく、ボリシェヴィキ政府を支持する地域にあってさえも、連絡調整の悪さから、モスクワからの指示や協力が得られないまま各地方が独断で状況に対処せざるを得ない状態が続いた。

「戦時共産主義」に対する見解[編集]

「戦時共産主義」が文字通り戦時に対応して立てられた経済政策として現実に存在したのか、あるいは単に内戦勝利のためにあらゆる犠牲をいとわないなりふりかまわぬ方策をまとめてこう呼んでいるのかについては長く議論が続いている[1]

ボリシェヴィキが戦時共産主義を導入した目的についても諸説がある。ボリシェヴィキ幹部にも、内戦勝利が唯一の目的であったとする者がいる。レーニンも「農民から余剰生産物を徴発したのは戦時の緊急事態により余儀なくされた方針であった」と述べている[2]

しかし一方で、戦時共産主義は異常事態に対して仕方なくとった政策ではなく、尚早にロシア社会の共産主義化を進めようとした意図的なものだったとする説もある。歴史学者のリチャード・パイプスらは、事後になってソ連政府が「戦時共産主義」と称した政策は、実際には共産主義経済を一気に実施しようとしたものであり、ボリシェヴィキ指導者は短期間で経済生産額が大規模に上昇することを想定していたとする。ニコライ・ブハーリンの見解もこれに沿うもので、「われわれは戦時共産主義を、戦時と結びついた、すなわち内戦という限定状況下に合わせたものではなく、勝利したプロレタリアートによる経済政策の普遍的な、いわば『正常』な形式であると認識していた」と述べている[3]

社会哲学者マイケル・ポランニーは著書『自由の論理』などにおいて、革命後にボリシェヴィキが始めた計画経済化の実験は完全な失敗に終わったため、これを内戦による一時的な「戦時共産主義」と称して計画経済の失敗を隠そうとし、一方で部分的に市場経済による生産システムを導入して経済を回復させることで「計画経済の成功」を宣伝しようとしたと述べている[4]

戦時共産主義の結果[編集]

戦時共産主義は内戦による被害をいっそう悪化させた。政府による苛烈な徴発のため農民は食糧生産に協力しなくなり、都市労働者は少しでも食糧を確保しようと地方へ流出、それにより工業製品と食料品との間の公正な取引がいっそう困難になり、都市生活者の窮状に拍車をかけることになった。1918年から1920年までの間にペトログラードの人口の75%、モスクワの人口の50%が流出した。ロシア各地で闇市が生まれ、戒厳令を発令して不当利得者の取り締まりを図ったが効果はなかった。ルーブルが暴落して物々交換が主流となり、1921年までに重工業生産額が1913年水準の20%にまで落ち込んだ。給与の90%が現物支給され、機関車の70%に補修が必要となり、食糧徴発、7年間の内戦、さらに大規模な旱魃による食糧不足で300万~1000万人が死亡した[5]

その結果、タンボフ反乱英語版のように、ストライキや農民蜂起が頻発することになった。1921年3月にクロンシュタット海軍基地で起きたクロンシュタットの反乱はその最たるものであり、クロンシュタットの水兵らはボリシェヴィキの強力な支持者とみられていただけに、この反乱はレーニンにも強いショックを与えた。

内戦終結後、戦時共産主義はネップ(新経済政策)へと政策転換されることになる。

関連項目[編集]

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手塚治虫が一番最初の「火の鳥」で、日本人の祖先として南方から渡ってきた夫婦を「イザ・ナギ」と「イザ・ナミ」としたという話を読んで、あれ、「凪」と「波」って、見事に対比しているな、と思い、沖縄の姓の「伊佐」を上につけて、「伊佐凪」と「伊佐波」という兄妹の名前にするのも面白いかな、と思ったが、そうすると近親相姦の話になりそうであるwwww
ホームズが嗜む謎の日本武術の「バリツ」だが、あれはドイルがオルコットから「柔術」と「馬術」の話を聞いて、その名称を混同したのだと思う。つまり「バリツ」とは「柔術」のつもりの武道を「馬術」としてしまったのだろう。

(以下引用)

オルコット大佐は1890年代に日本に滞在していて、回想録で日本のマーシャルアーツについてふれています。オルコット大佐はコナン・ドイルの友人で、日本の柔術をドイルに伝えたのはオルコットかもしれないと思います。


レーニン主義[編集]

[要出典]

第一次世界大戦後に起きたレーニンによるロシア革命は、資本主義発達が比較的遅れた地域における革命であった。ソビエト連邦を建国したレーニンは戦時共産主義を行った後、市場経済を取り入れた「新経済政策」(ネップ)を実行した。しかし、レーニンは、市場経済化が端緒にとりかかったところで死去してしまった。レーニンが、党書記長に登用しながら最晩年にはそこからの解任を図ったスターリンは、レーニン死後の権力闘争の過程で反対者を次々と弾圧する一方、苛烈な農業集団化計画経済体制への移行を通じて、人類最初の社会主義国家建設に成功したと喧伝した。スターリンは、レーニンによって、マルクスの思想の唯一、真正な継承発展がなされたと主張し、マルクス・レーニン主義と呼んだ。

世界恐慌の真っ只中でも目覚ましい経済発展を遂げたと伝えられたこと、第二次世界大戦において強大なナチス・ドイツとの戦争に勝ち抜いたことなどで、ソビエト連邦及びスターリンの政治的威信は増大し、アジア東欧アフリカカリブ海域において、多くの「社会主義国」が生まれて世界を二分した。しかし、1970年代に入り経済発展の面で西側先進国からの立ち遅れが顕著になったこと、政治的な抑圧体制も広く知られることとなり次第にその権威は失墜、1991年ソビエト連邦の崩壊に前後して、そのほとんどは姿を消した。国家自体は維持したまま社会主義体制を放棄したケースもあれば、社会主義体制放棄とともに複数の新たな国家に分裂したケース(ユーゴスラビア社会主義連邦共和国チェコスロバキアエチオピアなど)や、近隣の資本主義国に吸収統合される形で国家ごと消滅したケース(旧東ドイツ南イエメンなど)もあった。

改革開放以降、社会主義市場経済が本格的に定着した中華人民共和国では、寧ろ原始共産主義的だった毛沢東時代とは違ってマルクス主義の経済発展段階の学説に忠実であり、その究極地点こそが共産主義だと認識されている。中国共産党は現在の状態を『資本主義から離脱した過渡期の状態』と規定し、資本主義部門と、社会主義部門との競争による社会主義市場経済(あるいは混合経済)体制を導入している。ベトナム社会主義共和国ドイモイを参照)やラオス人民民主共和国も経済開放政策を導入した。一連の政策は国家資本主義を掲げたレーニン時代のソ連のネップが根拠になっていると思われる。

一方、キューバ共和国は市場経済の導入は限定的で、従来からの社会主義体制を継続している。

朝鮮民主主義人民共和国は、1950年代頃からマルクス・レーニン主義から独自発展したと主張するチュチェ思想に立脚して公式プロパガンダの内容や立場を長らく行っていた。1972年の憲法改正で明文化するに至ったものの、徐々に金日成とその一族への献身と個人崇拝を強め煽るようになり、ソ連や東欧で社会主義政権が相次いで崩壊するとマルクス・レーニン主義に対する言及は減少、2010年党規約から共産主義を削除している。

西欧における「マルクス・ルネッサンス」[編集]

ソ連型のマルクス主義(マルクス・レーニン主義、その後継としてのスターリン主義)に対して、西欧のマルクス主義者は異論や批判的立場を持つ者も少なくなかったが、最初に西欧型のマルクス主義を提示したのは哲学者のルカーチ・ジェルジカール・コルシュだった。

ルカーチはソ連型マルクス主義(マルクス=レーニン主義)に転向したが、ドイツのフランクフルト学派と呼ばれるマルクス主義者たちは、テオドール・アドルノマックス・ホルクハイマーを筆頭に、ソ連型マルクス主義のような権威主義に対する徹底した批判を展開し、西欧のモダニズムと深く結びついた「批判理論」と呼ばれる新しいマルクス主義を展開し、1960年代学生運動ポストモダニズムなどの現代思想に対しても深い影響力を見せている。

またルイ・アルチュセールのように構造主義的にマルクス主義をとらえ直す構造主義的マルクス主義弁証法的唯物論のような哲学的な概念を前提とせず科学としての経済学に依拠して、資本主義を数理的に分析する分析的マルクス主義などもある。

また、多くの哲学者や思想家、経済学者がマルクス主義について言及し考察している。全般的に旧来いわれていたマルクス主義の教条に囚われることなく多様な時には対立も含む諸理論を包み込んで進行している。

上記のような状況の下で、いままで諸潮流の対立もあり編纂する事が出来なかった決定的なマルクス・エンゲルスの全集を作ろうという「新MEGA」プロジェクトが進行中である。

冷戦終結後のマルクス主義[編集]

冷戦終結後、マルクス主義を掲げる社会主義国やマルクス主義の支持者は大幅に減少した。中華人民共和国ベトナムラオスキューバなどは、政治面で一党独裁を維持しながら、経済面で改革開放ドイモイ政策を推進している。また朝鮮民主主義人民共和国は憲法から「共産主義」の語を削除し、独自の主体思想を強調している。資本主義諸国の各国共産党では党の指導性を綱領から外すなど、社会民主主義との類似性が拡大している。

他方、いわゆる新自由主義的政策による格差社会の拡大や、世界金融危機など資本主義経済の不確実性も発生し、マルクス主義の見直しと同時に、部分的再評価の動きも発生した。

批評・批判[編集]

マルクス主義に対する批評や批判は、政治的な右派からだけではなく、左派からも行われてきている。民主社会主義者や社会民主主義者は、社会主義階級闘争プロレタリア独裁によってのみ成し遂げられるという概念に反対してきている。多くのアナキストも、プロレタリア独裁が必要と言う主張に反対してきている。いくつかの思想家は、唯物史観労働価値説などのマルクス主義者の理論の基盤に反対してきている。

社会主義や拡張されたマルクス主義への主要な批判には、経済計算論争[9][10]、科学技術の発展の遅延[11]、動機の減少[12][13][14]、資産の減少[15][16]、実現可能性[9][10][11]、その社会的および政治的な影響[17][18][19][20][21][22]、などがある。




「アカデミ・ジャーナリズム」って、何のこと?

歪んだ正義

 世間ではそれほど知られていないかもしれないが、ジャーナリズムの世界では超有名な人がいる。本書『歪んだ正義――「普通の人」がなぜ過激化するのか』(毎日新聞出版)を書いた大治朋子さんもその一人だろう。毎日新聞記者として2002年、03年と新聞協会賞を受賞しているからだ。新聞協会賞は新聞業界最高の賞であり、それを二年連続受賞という離れ業を達成したことで注目された。その後は国際報道に舞台を移し、10年度ボーン・上田記念国際記者賞も受賞している。国内、国外の取材で有名な賞を受賞しているわけだから、当代の女性記者の中では際立った人だ。

暴力のメカニズムを解き明かす

 本書の概要は、キャッチコピーに集約されている。「『自分は絶対に正しい』と思い込むと、人間の凶暴性が牙をむく」。テロリズム、学校襲撃、通り魔、コロナ禍に現れた「自粛警察」に共通する暴力のメカニズムを解き明かす、というのが狙いだ。さらに次のように、補足されている。

 「本書は『普通の人』がさまざまな経緯を経て過激化へと突き進むにいたるその道のりを、いわば体系的に地図化しようという試みだ。過激性はどこから生まれ、どのように育つのか。そうしたプロセスを可能な限り『見える化』することで、個々人、あるいはその愛する人が過激化プロセスにあるのかどうか、あるとすればどの位置にいるのかを認識し、暗くて深い過激化トンネルへと落ちるのを防ぐ、もしくは落ちたとしてもそこから引き返すために 手がかりとなりそうな情報をまとめている」

 この説明からもわかるように、本書は、ジャーナリズムというよりは、ややアカデミックなアプローチとなっている。というのも、大治さんは2017年から2年間、留学休職。イスラエル・ヘルツェリア学際研究所(IDCヘルツェリア)大学院(テロ対策・国土安全保障論、サイバーセキュリティ専攻)修了(Magna Cum Laude)。同研究所併設のシンクタンク「国際テロ対策研究所(ICT)」研修生。テルアビブ大学大学院(危機・トラウマ学)首席(Summa Cum Laude)にて修了。このところ中東の大学院やシンクタンクで研究生活を続けているからだ。

日本の事件も登場

 本書は以下の構成。

 第1章 「普通の人」が過激化する
 第2章 テロ組織はいかに個人を過激化させるか
 第3章 ローンウルフ2.0
 第4章 「過激化プロセス」のモデル
 第5章 誰にでもある心身のバランスシート
 第6章 日本における過激化
 第7章 過激化をいかに防ぐか

 大治さんは社会部記者時代の調査報道で新聞協会賞を連続受賞した後、英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所客員研究員を経て、ワシントン特派員、エルサレム特派員を歴任。『勝てないアメリカ 「対テロ戦争」の日常』(岩波新書)、『アメリカ・メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地』(講談社現代新書)などの著書がある。

 本書はワシントン特派員時代にアフガニスタンでの従軍取材を経験し、テロ加害者と被害者が混在するエルサレムで支局長を務め、イスラエル随一の研究機関で学んだ敏腕記者が、テロリズムや過激化の問題の核心を突き止め、解決・防止策を提示する、というものだ。

 オウム真理教事件や、秋葉原トラック暴走事件(2008年6月)、相模原障害者施設殺傷事件(2016年7月)など、国内の事件も登場する。

カフェで談笑できる環境

 イスラエルの大学院やシンクタンクで勉強したと聞くと、日本人の中には色眼鏡で見る人もいることだろう。そのあたりを予見して大治さんは、二つのことを補足している。

 まず、当地で学び始めるにあたり、大治さん自身も、ユダヤ人の学者がパレスチナ人のことを「テロリスト」呼ばわりするなどして偏見に満ちた講義をするのではないかと心配した。しかし、それは杞憂だったという。イスラエルの政治自体は右傾化が著しいが、大学はやや違っていた。ユダヤ人、パレスチナ人、外国人が共存し、カフェで談笑できる環境だったという。

 もう一つは、テロリズムの研究などで世界をけん引してきたのは、欧米もしくはイスラエルのユダヤ人研究者だということ。西欧ではホロコースト以前から現在にいたるまで、反ユダヤの潮流が延々と続いてきた。したがって、「普通の人」がいかに自分たちの思考を過激化させ、自分たちと異なる集団を暴力的に排斥してきたかという歴史を、彼らは身をもって知っており研究を重ねてきた実績があるという。

 たしかに、ユダヤ人は長く歴史の辛酸をなめてきた。ヨーロッパでペストが大流行した時には、「ユダヤ人が毒を投棄したからだ」といううわさに火が付いて、弾圧に拍車がかかったという。同じような風評は関東大震災の朝鮮人虐殺の時も広がったことはよく知られている。

研究には制約も

 本書の扱っているテーマは、広大なものだ。プラトンやアリストテレスの昔から検討されてきた。最近では、イラク戦争は、アメリカや多国籍軍の正義だったが、大量破壊兵器は見つからず、逆に「イスラム国」を生み出した。正義といえば、一時話題になったマイケル・サンデル教授の白熱教室「正義の話をしよう」なども思い出す。

 余談だが、評者はかつて、100人以上の死者を生んだ過激派の内ゲバについて、その精神病理を研究している学者はいないか、探ったことがある。もとは「普通」だった若者が「殺人」を繰り返すようになったのはなぜか? ところが、「暗殺」という大昔の事件を調べている学者はいたものの、「内ゲバの病理」を研究している学者はいなかった。理由は簡単で、非公然組織に属する「内ゲバ専従犯」が捕まっておらず、自供も得られていないので研究ができないということだった。

 過剰な正義意識が一線を越えて逸脱する様々な実例の背後には、個人や組織、指導者など入り組んだ事情があると思われる。時々の社会情勢や長い歴史的な軋轢も含まれる。直ちに結論が出そうな話ではない。

 ジャーナリズムの有力な賞を何度も受賞した大治さんも苦労したことだろう。大治さんは本書を、取材現場を歩いて調査するジャーナリズムと、学問的な研究であるアカデミズムの融合としてとらえ、自身の造語である「アカデミ・ジャーナリズム」の実践だと語っている。

 BOOKウォッチではイスラエル関連で何冊か紹介済みだ。『知立国家 イスラエル』(文春新書)は日本の先を行く頭脳大国イスラエルの話。『サイバー戦争の今』 (ベスト新書)は世界屈指のサイバー大国であるイスラエルの現状を伝える。『イスラエルに関する十の神話』(法政大学出版局)はユダヤ系のイスラエル人学者がパレスチナ問題についてのイスラエル側の主張を徹底的に批判している。『天井のない監獄 ガザの声を聴け! 』(集英社新書)はパレスチナで長年、「国連パレスチナ難民救済事業機関」(UNRWA、通称ウンルワ)の保健局長を務める医師、清田明宏さんによる体験的な現地報告だ。

 『戦後ドイツに響くユダヤの歌――イディッシュ民謡復興』(青弓社)は戦後のドイツでユダヤの歌「イディッシュ民謡」を復興させようとする動きがあったことを伝える。「ドナドナ」「屋根の上のヴァイオリン弾き」などもユダヤ人と深く関わっている。

 『ナチスに挑戦した少年たち』(小学館)はナチスに立ち向かったデンマークの少年たちの逸話。『人類は「パンデミック」をどう生き延びたか』(青春文庫)には、多くのユダヤ人を救うために「K感染症」をでっち上げたイタリア・レジスタンスの運動が紹介されている。

 このほか『アメリカはなぜ戦争に負け続けたのか』(中央公論新社)は「アメリカの正義」が必ずしも奏功していないこと、『独ソ戦――絶滅戦争の惨禍 』(岩波新書)は、ヒトラーがソ連を攻めた一因にソ連人を「劣等人種」とみなす優越思想があったこと、『「いいね! 」戦争――兵器化するソーシャルメディア』(NHK出版)は今やネットで誰でも簡単に「正義の義勇兵」になれることを伝える。

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