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松本清張「西海道談綺」読了。傑作。清張の時代物に外れは無いが、長編は特に素晴らしく、駄作が無い。
清張の時代物の特長は、悪人に特に魅力と凄みがあることで、だからこそスリルがある。また、主人公も善人だがいつも善人であるわけでもなく、悪人がいつも悪人であるわけでもない。その度合いが違うだけである。そして、悪人はたいてい頭がもの凄くよく、気性も強いから、善人はとてもかなわない、という感じが起こる。
そもそも、善人は善人であるというだけでハンディを持っているのである。悪人が平気で行える悪行が善人にはできないから、当然、できることの範囲が極端に限られる。しかも、善人は基本的に他人を疑うことがないから、悪人にいいようにしてやられるのである。これは現実人生でも同じである。清張の作品は、そういうリアリズムが根底にある。だから、面白い反面、爽快感は少ない。私は清張の現代ものはほとんど読まないが、それは、時代物だと少しはオブラートにくるまれている「人生の真実」の苦さが現代ものだと明確に出てくるだろうと予感しているからである。
清張は、バルザックに匹敵する作家である。いや、それ以上かもしれない。
「西海道談綺」は、大長編であるから、映画にもしにくいが、NHKの大河ドラマにでもしたら素晴らしい作品になると思う。この作品に限らず、「天保図録」や「かげろう絵図」なども素晴らしい。三国連太郎が生きていたら、鳥居燿蔵(こんな字だったか)の役をやらせたかった。
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