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My idea was to draw out six dollars of it for present use. Someone gave me a cheque-book and someone else began telling me how to write it out. The people in the bank seemed to think that I was a man who owned millions of dollars, but was not feeling very well. I wrote something on the cheque and pushed it towards the clerk. He looked at it.

“What ! are you drawing it all out again? ” He asked in surprise. Then I realized that I had written fifty-six dollars instead of six. I was too upset to reason now. I had a feeling that it was impossible to explain the thing. All the clerks had stopped writing to look at me.

 

*言葉や構文はあまり難しくないが、訳の上で迷う部分がいくつかある。まず、「 was not feeling very well」は、「気分が良くない」と、「機嫌がよくない」のどちらがいいかだが、これは後の行動との関連で「機嫌がよくない」とした。それから、「to reason」と、直後の文の中の「to explain」は、同じような内容なので、一文にまとめようかと思ったが、元の文のまま2文に分けて訳した。このあたりは、私の勘違いがあるかもしれない。

 

[試訳]

 

私は当座の使用のために口座から6ドル引き出すつもりだった。誰かが小切手帳を私に与え、誰かがその書き方を私に教えた。銀行の中の人々は私のことを、数100万ドルの金の所有者だが、少々機嫌が悪いのだと考えているように見えた。私は小切手に何か書いて、それを事務員に渡した。彼はそれを見た。

「何と! あなたは今入れた金を、もう一度全額引き出すのですか?」彼は驚いて言った。私は自分が6ドルと書くつもりで56ドルと書いたことに気づいた。私は気が動転して、その理由が言えなかった。私には事情を説明するのは不可能だという感じであった。事務員たちは皆、仕事を中断して私を見ていた。




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My face was terribly pale.

“Here,” I said, “put it to my account.” The sound of my voice seemed to mean, “Let us do this painful thing while we want to do it.”

He took the money and gave it to another clerk.

He made me write the sum on a bit of a paper and sign my name in a book. I no longer knew what I was doing. The bank seemed to swim before my eyes.

“Is it the account?” I asked in a hollow, shaking voice.

“It is,” said the accountant.

“Then I want to draw a cheque.”

 

(注)

chequecheck *綴りが間違っているよ、とワードの馬鹿が言う(下に赤い波線が出る)ので驚いて辞書で調べると、何のことはない、chequeは英国式の綴りであった。米国式以外は間違った綴りだという、この傲慢さ。これがアメリカ帝国主義という奴である。

 

[試訳]

 

私の顔は真っ青になっていた。

「ほら」、私は言った、「これを私の口座に入れてくれ」。私の声はまるで「この苦行を、我々がやる気があるうちにやってしまおうぜ」と言っているかのようだった。

彼はその金を手に取って、他の事務員のところに持っていった。

彼は何枚かの紙に金の総計を書かせ、通帳に私の名前を書かせた。私はもはや自分が何をやっているのか分からなかった。銀行がまるで私の目の前で泳いでいるみたいだった。

「これが口座かね?」私はうつろな、震え声で言った。

「そうです」口座係は言った。

「では、小切手を使いたいんだが」




 

 

The manager got up and opened the door. He called to the accountant.

“Mr. Montgomery,” he said, unkindly loud, “this gentleman is opening an account. He will place fifty-six dollars in it. Good morning.”

I stood up.

A big iron door stood open at the side of the room.

“Good morning,” I said, and walked into the safe.

“Come out,” said the manager coldly, and showed me the other way.

I went up to the accountant’s position and pushed the ball of money at him with a quick, sudden movement as if I were doing a sort of trick.

 

(注)

safe:金庫室 

 

(研究)

is opening

・進行形によって近い未来を表すという用法。

Good morning.

・この場合は、「お早う」ではなく「さよなら」である。用事が終わって、相手を早く追い出したい時、「Thank you.」などと言うこともある。これは「話は終わりだよ」というニュアンスを持っているわけだ。

 

[試訳]

 

マネージャーは立ち上がってドアを開けた。彼は口座係に声を掛けた。

「モンゴメリー君」、彼は不親切な大声で言った、「この紳士が口座を開きたいそうだ。この方は65ドル入れてくださるそうだ。では、さよなら」

私は立ち上がった。

大きな鉄の扉が部屋の横に開いていた。

「さよなら」私は言って、金庫室の中に入った。

「出てきなさい」マネージャーは冷たい声で言って、私を別の出口へ導いた。

私は口座係のところに行って、その男の前に丸められた金を素早く置いたが、まるでそれは何かの奇術でもしているみたいだった。







 

 

“To tell the truth,” I went on, as if someone had urged me to tell lies about it, “ I am not a detective at all. I have come to open an account. I intend to keep all my money in this bank.”

The manager looked relieved but still serious; he felt sure now that I was a very rich man, perhaps a son of Baron Rothschild.

“ A large account, I suppose,” he said.

“Fairly large,” I whispered. “I intend to place in this bank the sum of fifty-six dollars now and fifty dollars a month regularly.”

 

*まったく難しい表現や単語が使われていなくても、これだけの内容が表現できるということに感心してしまう。こういう文章を中学校や高校の教科書に採用してくれれば、英語もいっそう楽しく感じるだろうし、勉強にも役立つと思うのだが、ユーモアの要素ほど学校教科書に欠如したものは無いのが現実である。

 

(注)

urge:せきたてる、強制する    Fairly:かなり、まったく

 

[試訳]

 

「本当のところ」、私はまるで誰かが私に嘘を強要していたかのように言葉を続けた。「私はまったく探偵などではありません。私は口座を開きに来たんです。自分の金をすべて、この銀行に預けようと思いましてね」

マネージャーはほっとしたような顔をしたが、まだ真剣な表情だった。彼はきっと私が大金持ちだと確信しただろう。多分、ロスチャイルド男爵の息子だとでも。

「きっと大金なのでしょうな」、彼は言った。

「かなり大金です」、私はささやいた。「私は今、総計56ドルと、それから毎月50ドルを定期的にここに預けるつもりです」








   

 

The manager looked at me with some anxiety. He felt that I had a terrible secret to tell.

“Come in here,” he said, and led me the way to a private room. He turned the key in the lock.

“We are safe from interruption here,” he said, “sit down.”

We both sat down and looked at each other. I found no voice to speak.

“You are one of Pinkerton’s detectives, I suppose,” he said.

My mysterious manner had made him think that I was a detective. I knew what he was thinking, and it made me worse.

“No, not from Pinkerton’s,” I said, seeming to mean that I was from a rival agency.

 

(注)

 Pinkerton:有名な探偵社の名前である。

 

(研究)

He felt that I had a terrible secret to tell.

・この書き方だと、一人称視点の記述がこの部分だけ「神の視点」になるのでまずいのだが、リライト前の原文もそうなのかどうかは不明。厳密には最初の「The manager looked at me with some anxiety.」も「神の視点」である。つまり、本当は「マネージャーは好奇心を持って私を見た『ように私には見えた』」と続けないと、一人称視点にはならないのだが、言うまでもなく、そうすると文章がごちゃごちゃする。小説における視点の問題は面倒である。試訳では、そのあたりを何とか誤魔化している。

seeming

・分詞構文の用法は高校時代にさぼった部分なので苦手だが、「そしてそれは~に見えた」といったところか。

 

[試訳]

 

マネージャーは好奇心の表情で私を見た。私が恐るべき秘密を話そうとしているのだと思ったのだろう。

「こちらへどうぞ」、彼は言って私を面会室に導いた。彼は部屋の鍵をかけた。

「これで邪魔は入りません」、彼は言った。「どうぞお掛けください」

我々は椅子に腰を下ろし、お互いを眺めた。私は何と話せばいいのか分からなかった。

「もしかして、あなたはピンカートン社の探偵ではないですか?」、彼は言った。

私のミステリアスな態度が彼をそのように想像させたのだろう。彼が考えていることが私には分ったが、それは私の精神状態をいっそう悪いものにした。

「いや、ピンカートンの者ではありません」、私は言ったが、それはまるで私がピンカートンのライバルの探偵社から来たかのように聞こえた。

 




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