だが、彼の作品は「冒険小説」好きの英国人にはウケるようだ。(異国趣味という点ではキプリングに似ているか)その英語も、英語ネイティブとは違った味わいを感じるのだろう。思うのだが、彼のような作家にこそ「超訳」が向いているのではないか。彼の作品の映画化が非常に多いのを見ても、プロットが面白いのだろうと想像できるからだ。
(以下引用)
生前のコンラッドはエドワーディアンの作家の中で、アーノルド・ベネット、H.G.ウェルズ、ジョン・ゴールズワージーとともにビッグフォーと呼ばれていたが、むしろアジアやインド洋などのエキゾチックな異国の風物や、海の冒険を描く海洋文学作家と見なされていた。
今日では、コンラッドはチャールズ・ディケンズやフョードル・ドストエフスキーに代表される古典的小説と、モダニズム小説の中庸的存在として位置づけられる。ただしコンラッド自身は、イワン・ツルゲーネフを除いてロシア文学にはあまり良い印象を持っていなかったことが知られている。
作品[編集]
作風[編集]
コンラッドは、イギリス国内の出来事よりも、洋上や異国の地について書くことが多かった。エッセイ『海の鏡』が出版された時、フランス語翻訳者に送った手紙で「批評家たちは私への褒め言葉を浴びせるが、"地上でなく外海にいることだ"というささやきが私の耳に聞こえる、彼らは私を海の真ん中に追放したいのだ」、と書いている[6]。
コンラッドの作品には、彼自身の経験の他に、過去及びその当時広く知られている事件や文学作品に基づいたものも多い。『ロード・ジム』の前半部は、蒸気船「ジッダ」が1880年に遭難した時に、船長らが乗客を置き去りにして避難した事件を題材にしており[11]、後半部はボルネオ島のサラワク王国の王となったジェームズ・ブルックの生涯を基にしている[12]。 1904年発表の『ノストローモ』は、コンラッドがメキシコ湾上で耳にした、銀の大規模盗難事件にヒントを得ており[11]、また政治的には当時計画進行中のパナマ運河をめぐるアメリカとコロンビアの関係を背景にしている[13]。『西欧人の眼に』では、1904年のロシア帝国内相ヴャチェスラフ・プレーヴェ暗殺がモデルとされている[11]。
登場する人物の多くは、彼が実際に会った実在の人物をモデルにしている。『オルメイヤーの阿房宮』に登場する”William Charles Olmeijer”も、コンラッドがボルネオで訪問したことのある人物だ[11]。『台風』の”Captain McWhirr”、『青春』の”Captain Beard”と”Mr. Mahon”、『陰影線』の”Captain Ellis”などでも実在の人物の名前を借りている。
コンラッドは日記をつけたことはなく、ノートも持つことはなかったと語ったが、リチャード・カールがコンゴでのコンラッドの経験を記した日記を編集して没後刊行し、1978年にはより完全な版が出版された[14][15]。
原作作品[編集]
映画[編集]
- 『Victory』1919年、Maurice Tourneur監督、ジャック・ホルト主演
- 『ロード・ジム』1925年、ヴィクター・フレミング監督、パーシー・マーモント主演
- 『Niebezpieczny raj』 1930年、ポーランド、Ryszard Ordyński監督、マリア・マリツカ、Adam Brodzisz、ボクスラウ・サンボルスキ主演(原作『Victory』)
- 『Dangerous Paradise』1930年、ウィリアム・A・ウェルマン監督、ナンシー・キャロル、リチャード・アーレン(原作『Victory』)
- 『サボタージュ』1936年、アルフレッド・ヒッチコック監督、シルヴィア・シドニー、オスカー・ホモルカ主演(原作『The Secret Agent』)
- 『Victory』1940年、ジョン・クロムウェル監督、フレドリック・マーチ主演
- 『文化果つるところ』1951年、キャロル・リード監督、トレヴァー・ハワード主演(原作『An Outcast of the Islands』)
- 『ロード・ジム』1965年、リチャード・ブルックス監督、ピーター・オトゥール主演
- 『The Rover』1967年、テレンス・ヤング監督、アンソニー・クイン主演
- 『Smuga cienia』1976年、ポーランド・イギリス合作、アンジェイ・ワイダ監督、マレク・コンドラト主演(原作『The Shadow Line』
- 『デュエリスト/決闘者』1977年、リドリー・スコット監督の出世作として知られる。キース・キャラダイン主演(原作「The Duel(アメリカで出版されたときの題名はPoint of Honor」)
- 『Naufragio』1977年、メキシコ、Jaime Humberto Hermosillo監督(原作「Tomorrow」)
- 『地獄の黙示録』1979年、フランシス・コッポラ監督、マーロン・ブランド主演。(原作『Heart of Darkness』ただし内容はベトナム戦争に置き換えられている)
- 『Un reietto delle isole』1980年、イタリア、Giorgio Moser監督、マリア・カルタ主演(原作『文化果つるところ』)
- 『Victory』1995年、Mark Peploe監督、ウィレム・デフォー主演
- 『シークレット・エージェント』1996年、クリストファー・ハンプトン監督、ボブ・ホスキンス、パトリシア・アークエット、ジェラール・ドパルデュー主演(原作『The Secret Agent』)
- 『輝きの海』1997年、ビーバン・キドロン監督、ヴァンサン・ペレーズ主演(原作『Amy Foster)
- 『ガブリエル』2005年、パトリス・シェロー監督、イザベル・ユペール、パスカル・グレゴリー主演(原作『Retour』)
- 『Hanyut』2011年、マレーシア、U-Wei Haji Saari監督、ピーター・オブライエン主演(原作『オルメイヤーの阿房宮』)
- 『Almayer's Folly』2011年、シャンタル・アケルマン監督、スタニスラス・メラール主演
- 『Secret Sharer』2014年、Peter Fudakowski監督(原作「秘密の同居人(The Secret Sharer」)
- 『The Young One』2016年、Julien Samani監督、ケヴィン・アザイス主演(原作「青春」)
- 『An Outpost of Progress』2016年、Hugo Vieira da Silva監督(原作「An Outpost of Progress」)