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全519P中409P段階での推理

犯人は百瀬夫妻、あるいはその一方。
動機は、かつての経営危機の際に大井(父)を保険金目当てで殺し、
その事実を知っているリー医師を日置が殺したことをワンフーに知られたこと。
過去の事件を問い詰めたワンフーを殺し、それを目撃した津久井を殺し、
事件を調べていたアラン・グラッドストーンを殺した。

動機面のみから推定できる、無理の無い犯罪解明はこれくらいではないか。

トリックは不明。密室事件のみが重要トリックだが、これを密室事件にする明快な理由は分からない。まあ、自殺を偽装させて、事件の全体像をぼやかす意図くらいか。

密室トリックは、この場合、阿呆みたいだが、手持ち掃除機で屋外から内部の片側だけ貼ったテープを吸引して貼り付けるとか。

もっと不自然な筋としては、大井が犯人であるという解答。
大井は、それ(「百瀬夫妻」の過去の犯罪の意。舌足らずな表現をした。)を承知の上で百瀬社長の秘書を務め、次期経営者と目されていたため、かつての殺人事件(自分の父の殺害)を暴こうとするワンフーを迷惑に思い、殺害。他の殺人は以下同様。

事件に関係の無い、ファイロ・ヴァンス的衒学が多く、無駄な描写も多い。文章もときどきおかしい。まあ、暇つぶしの読み物としてはいい。だが、全体の分量を半分くらいにしたらもっといい。








(追記)今、読み終わった。ほぼ推測どおり。ある意味、第二の解答も半分当たり。しかし、こうした「二重のひねり」は不要だったのではないか。教唆犯をテーマとするなら、もっと凄みのある小説を書いてほしい。「カラマーゾフの兄弟」も「Yの悲劇」も教唆犯テーマなのである。このエピローグ(最終結末)は、まったく無駄な付け足しという感じがする。密室トリックそのものは馬鹿げている。可能かもしれないが、意味がほとんどない。真夜中の殺人なら時間的余裕もあるし、死体を山に運んで捨てておけば野獣が死体を食って「処理」してくれただろう。死体が無ければ過去の犯罪への追及も生じない。いや、殺人が表ざたになったとしても、正当防衛とされる可能性が高いだろう。何しろ、社会的地位が違う。過去の犯罪の「証拠」もないし、過去の犯罪を告発した遺書は、全部盗む機会があったのだから、そうしておけば第二第三の殺人も不要になる。まあ、推理小説にありがちの「謎のための謎」である。だから推理小説は幼稚だと言われるのである。もっとも、松本清張などは別。ただ、彼も時代小説のほうがいい。
日本の推理作家は、「刑事コロンボ」や「名探偵モンク」などの緻密なプロットを見習ってほしいものだ。


なお、「作品解説」は最悪。ネタばらしをすると最初に断っているが、ネタばらしの必要性など無いはずである。そのネタばらしがまた露骨すぎて、最初に解説から読む習性のある読者(こういう人はけっこういるらしい)は、これを読むともう買う気も読む気もなくなるだろう。
作者も芸が無いが、解説書きも芸が無い。





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