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恩田陸は小説の名手で、文章の達人だが、その名手でも基本的な、単純な間違いはするという例である。「光の帝国」の一話から抜粋。

私は眼下を通ざかっていく、その男を青ざめた顔で見送った。


言うまでもないだろうが、これは一人称描写である。つまり、視点はあくまで「語り手(この小説では「私」)」にある。である以上、鏡やガラスに写った自分の顔でもないかぎり、自分の顔が「青ざめている」とは分からないはずだ。
そんなことは分かり切っている、私(作者)はそう書きたいからそう書くのだ、というのもひとつの創作姿勢ではあるだろうが、読者としてはかなり興ざめすることは否めない。まあ、やはりうっかりミスなのではないか。そして、編集者もその点を見落としたのだろうと思う。
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