新海誠インタビューより。
──クリエイターの感覚を持ちながらも、顧客の立場で仕事をしていたのですね。
そうかもしれません。忘れられないのは、入社して数年の駆け出しの頃、ゲームのクオリティチェックの仕事を任されたときのことです。開発中のゲームをプレイして、良いところと悪い部分を会社に伝えるのですが、そこで一度、大きな失敗をしてしまいました。
ゲームの優れたところ、改善すべきところを「上から目線」で、何も考えずに言葉にしてしまいました。それを受け、会社からは開発チームに修正の命令が出るのですが、それがチームの反発につながり「恨む」とまで言われてしまったのです。
自分が同じようにものづくりをする立場になると分かりますが、一枚の画を描くのにしたって、ものすごく複雑な過程をたどってできるわけですね。文章で言えば、何度も何度も推敲したような状態でようやく人に見せるわけです。
そのため、現場には、現場のプライドと理屈がある。全身全霊で作っているのに、「ちょっと面白くないですね」といった言い方がいかに相手を傷つけるのかを理解しました。もし同じことを言うにしても、作り手に伝えるときは、むき出しの言葉で表現してはいけない、それがいかに暴力的な行為なのかを強烈に学んだ体験でした。
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