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・夜。霧が一帯を包んでいる。
・銀三郎が馬での遠出からの帰途である。町近くの林の中を通りかかると、林の陰から男が現れる。

懲役人藤田「ちょっとお待ち願えますか、須田子爵様」
銀三郎「何者だ」
藤田「藤田ですよ、あなたの忠実な家来です」
銀三郎「家来にした覚えはない」
藤田「まあ、自発的家来という奴で。それより、須田さん、あんた大変なことになっていますよ」
銀三郎「どういうことだ」
藤田「酒場で田端という野郎が騒いでいたんで、その話を少し聞いたら、あんたあいつの妹のキチガイと結婚しているらしいじゃないですか。まあ、うまく聞き出したんで、あっし以外はまだ知らないでしょうがね。このことが世間に知れたらまずいんじゃないですか」
銀三郎「どうでもいい話だ」
藤田「あっしなら、簡単にこの件を片付けられますがね。誰にも迷惑をかけないで、すべては秘密の沼の中に消えますよ」
銀三郎「お前がやりたいなら、何でも好きにしろ。俺にはどうでもいいことだ」
藤田「まあ、後払いでもいいんだが、少し手付を貰えませんかね。1円でいいんですが」
銀三郎「カネか。欲しいならやろう。踊って見ろ」
銀三郎、財布を取り出して1円札を空中に投げ上げる。藤田はそれを慌ててつかもうとする。
銀三郎は狂的な笑いをあげながら、次次に1円札を空中に投げ上げながら去っていく。

・藤田が風に舞うカネや地面に落ちたカネを拾う「踊る」姿。


(このシーン終わり)
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