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子供のころに過失で人を殺した人間の半生を小説にしたらどうかな、と思ってその場合法律的にはどういう措置になるのか調べてみたが、下記の親の責任云々の話はあまり関係はなさそうだ。まだ調べる必要はあるだろうが、一応、「子供(幼児)には責任能力は無い」ということで事故扱いになるのだろうと思う。

【民事・18歳未成年者の不法行為と親の法的責任・未成年者に責任能力がある場合の監督義務者の責任】

質問:私には18歳になる息子がおり,今では実家を出て一人暮らしをしているのですが,先日,暴力沙汰を起こしてしまい,相手に大怪我をさせてしまいました。息子には資産もなく支払能力がない状態です。相手は,治療費や慰謝料等の支払い義務は親にもあるはずだと言って,多額の賠償金を支払うように請求してきました。未成年の子供をきちんと育てるのは親の役目だとは思うのですが,息子が相手に負わせた怪我の賠償責任まで親である私が負わされることになるのでしょうか。

回答:原則としては,息子さん本人のみが暴行事件による損害を賠償する責任を負うことになりますが(民法712条,714条参照),例外的に,未成年である息子さんに対する親の監督責任について,親自身が一般不法行為責任(民法709条)を問われる場合があります。

解説:
1.(未成年者の責任能力)
 未成年者が他人に損害を与えた場合でも,責任能力がないとされるときは,その未成年者自身は不法行為による損害賠償責任を問われないこととなります(民法712条)。責任能力とは損害を発生させた具体的行為が道徳上許されないということにとどまらず法律上批難される違法なものであることを理解できる能力を言います。未成年者の責任能力の有無は,年齢・環境・生育度・行為の種類などから判断されますが,概ね12歳(又は13歳)くらいまでは責任能力がないと考えられています。刑法上の責任能力は14歳と規定されていますので(刑法41条)、それよりは幾分程度が低いと考えることもできますが、同程度と評価できるでしょう。法的責任の根拠は、個人主義(私的自治の原則の前提)の見地から、違法な行為を認識しながらあえてこのような行為を行うという個人への非難にあるので、違法行為を認識できなければ非難すなわち法的責任を負うことはないわけです。

2.(監督義務者の責任、民法714条の監督義務者、親の法的責任の性質、根拠)
 このように未成年者自身が責任能力を欠き不法行為責任を負わない場合には,その親などが監督義務者等として損害賠償責任を負うことになります(民法714条)。これは,発生した損害の公平な分担の理念から当該未成年者に責任を追及できない被害者の救済を図るために,監督義務者である親などの責任を加重して責任を問えるようにしたものです。監督義務者・代理監督者は,監督義務を怠らなかったことを証明すれば責任を免れることができますが(同条1項但書),被害者側ではなく監督義務者の方で義務懈怠がなかったことの立証の負担を負わされる点で,被害者救済がより強く図られているのです。条文上挙証責任を転換して事実上被害者の責任追及を容易にしています。
 理論的根拠ですが、どうして、責任無能力者の監督義務者は責任が加重されるかといえば、工作物責任(民法717条)と同様、危険責任に類するものと考えることができます。人間は、工作物のように物ではありませんが、責任無能力者は、自らの不法な行為について法律上許されないという認識する能力がないのですから、能力者よりも自己抑制ができず不法な行為を行う危険性を常に有しています。このような危険性を有する無能力者の監督義務者は、この危険性を認識することが可能であり管理監督する者として、危険性を有する人物の不法な行為を防止する責任が加重されることになります。財産的損害が発生した場合、私的自治の原則に内在する公平の理念から被害者側と加害者、監督者を一体とみて被害者側を救済しています。この理屈は、2項、代理監督義務者も同様です。

3.(本件)
 もっとも,息子さんの場合は,18歳で物事の分別もつき,物事の是非善悪も判断できると考えられますので,責任能力があると判断されることになるでしょう。そうすると,親であるあなたが,監督義務者として民法714条により責任を負うことはないことになります。
未成年者本人に賠償能力が無い場合は、被害者側としては、未成年者本人に対して損害賠償請求訴訟を提起し、確定判決を取り、請求権の消滅時効期間が10年間に延長されますので、10年以内に、この確定判決を債務名義として、未成年者の財産に対して強制執行をしていくことが考えられます。通常は10年以内に成人し、就職したり、自営業を開始したりして、収入を生じるようになりますので、強制執行や任意の弁済を受けることができるものと思われます。

4.(未成年者に責任能力があっても監督義務者の一般不法行為責任を負う場合)
 上記のように,親である監督義務者が民法714条により責任を負わない場合でも,親自身が独自に一般不法行為責任(民法709条)を問われる場合があります(最判昭和49年3月22日)。未成年者に責任能力があり,親に民法714条の監督義務者責任が生じない場合でも,親の監督義務違反があり,その義務違反行為と損害の発生の間に因果関係があるとされた場合には,親の監督義務違反自体が一般不法行為責任の要件を満たすことになり,民法714条による責任を負わないことが一般不法行為責任の成立まで妨げるものではないと考えられるためです。どのような場合に親の監督義務違反が損害との間に因果関係があるといえるかについては,被害者救済の見地から広く認めるべきとする見解があり,他方,あくまでも一般不法行為責任(民法709条)が認められるかどうかの判断の中で親の監督義務違反が検討されるにすぎず,親に一般的包括的監護教育義務違反があれば足りるとは考えない見解もあります。

5.(基本的考え方)
 基本的には、一般不法行為の要件、過失の一つとして監督義務違反を考える説が妥当であると思います。このような判例が存在する理由は、未成年者が責任能力者であっても、実際は被害弁償をする財産的能力がなく、被害者の救済を図ろうとするところにあります。しかし、被害を受けて加害者に弁償する財産的なものがないことは、未成年者の不法行為に限った事ではありませんし、過失責任の大原則は、監督義務者である親にも保証されるのですから、危険責任等の正当な理論的根拠なく安易な拡大解釈は許されないと思います。唯、責任能力があっても未成年者は、精神的、肉体的に未成熟であり、その点教育監護権を有する両親等は、過失すなわち不法な行為の予見、回避義務を解釈上認定される可能性があると思われます。

6.(一般的判断基準)
 どのように具体的に検討されるのかについては、次に記載した判例を参考にして下さい。判例では、監督義務違反と結果発生について相当因果関係があることを前提に、過失の内容について①親として家庭教育が行われていたか、②違法な行為をするのではないかという結果の予見可能性があったか、③そのような結果を予見できたとして、結果を回避するために可能なことがあったか、それらの可能なことについてどのような対応策を講じたのかまた、努力したのか、という点から検討されることになります。ご自身では判断が難しいようでしたら,法律の専門家である弁護士に一度相談してみることをお勧めいたします。

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