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スティーブン・キングの「書くことについて」という文庫本を読んでいる途中だが、最初は半自叙伝で、つまらない。わたしはキング自身の人生になどまったく興味がないからだ。作家の真の存在は小説の中にあるのであり、彼の実人生など、他人にはまったく関心があるはずがない。これが勝海舟や福沢諭吉などなら社会的な存在意義があり、その自伝にも意味があるが、作家自身の人生など何だというのか。いくら面白く書いても、せいぜいが「スタンドバイミー」の、よりつまらないバージョンにしかなるはずがない。芥川龍之介の実人生が実につまらないものだったことなども、彼の身近な友人の言葉などから分かっている。つまり、彼の真の存在は彼の作品の中にあったということだ。これは漱石でも鴎外でも同じだろう。作家が偉大なほど、そうなるのである。
だが、途中から創作技法、あるいは創作心得の話となり、これは面白い。まだ読んでいる途中だが、読んだ部分だけでも面白い。
一番興味深く思ったのは、彼が「プロット」を否定していることだ。
プロットとは筋書きと言っていいだろう。そのプロットを最初に作って、それから話を書くという手法を彼は否定している。
確かに、これ(プロット方式)は物語を単なる「作り物」にするやり方であると思う。設計図どおりに作って、何が面白いのか、ということだ。これが凡百の推理小説がつまらない理由だろう。キングは、まず「状況設定」から考える。ある状況に置かれた人物がどう考えどう行動するか、ということだ。つまり、作者は主人公や脇役人物になりきって、その状況での行動を考えるわけである。これこそまさに「小説を生きる」ことであり、結末が分からないから、思いがけない進展に作者自身も感動を共にすることになる。
キングはまた「過剰描写」も戒めているが、それも納得である。作者の描写が読者の想像を限定し、貧弱にするからだ。過剰描写とは過剰に精細な描写ということで、詩のように短い言葉で空想や感覚、連想が広がる描写が最良だ、というのは私が彼の説明から敷衍したものだ。
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