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作品のヒントだが、現在までの経験を持ったまま、若いころの自分に戻ってみたい、というのは多くの人が妄想するものだと思う。それだけ人生には後悔が多く、特に若いころの過ちをやり直したい(塗り替えたい)、という人が多いのだろう。
だが、それとは別に、現在の精神のままで肉体だけ若返るとどうか、というのがH・G・ウェルズの「若返りの泉」とか何とか言う短編小説である。その小説は「単なる肉体の若返り」にたいした価値はない、というテーマだったが、果たしてそうか。
もしも、現在の精神のままで、肉体だけ二十代に若返ることができるなら、財産のほとんどを提供してもいいという大金持ちはたくさんいるだろう。(「ファウスト」もそれに近い話だ。)
そして、科学の進歩は、あるいはそうした「若返りの薬」をいずれ作り出す可能性もあるのではないだろうか。つまり、植物の肥料のように、細胞を活性化させる薬である。身体の機能が二十年くらい若返り、完全な健康体になるなら、それは数兆円の価値があるだろう。
ということを考えたのは、ある漢方薬を飲んで、ここ数年のかすみ目がたった二錠で驚くほど改善されたので、薬というものの大きな可能性を痛感したからである。
昔の仙人が求めた不老不死は、現代科学、特に薬学や生物学がいずれそれに近いところまで人類を導くかもしれない。とは言っても、私が薬の効果を感じたのは漢方薬のほうなのだが。
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