忍者ブログ
[1078]  [1077]  [1076]  [1075]  [1074]  [1073]  [1072]  [1071]  [1070]  [1069]  [1068
私は日本の現代小説、特にSF小説は初期の御三家(小松、星、筒井)とその少し後の広瀬正や半村良以外はほとんど読んでいないので、山本弘の作品は当然読んでいない。そもそも日本の今のSF小説が好きという人は珍しいのではないか。
下の記事の中で山本弘が書いていることは、そういう「SF外」人間から見ると、ずいぶんな自惚れだなあ、と思えるのだが、彼の作品は自分で言うほど「面白い」のだろうか。もし面白いなら、ある程度のベストセラーになったはずだが、彼の本が売れたという話は一度も聞いたことが無いのである。そもそも、SF小説でベストセラーになった例はここ十年いや、二十年ほど無いのではないか。
それに、「と学会」を自分のファンクラブと思っているところが凄い。外部の人間から見れば、「と学会」は冗談半分の学会であり、特に誰が中心ということはない集団というイメージで、山本弘がその会長であるというのは、一部の人間しか知らないと思う。
作品を読んだことが無いので文章の印象から憶測で言うのだが、この人は「お勉強」的な意味で頭が良くて記憶力や論理構築力、整合性を緻密にして何かを組み立てることが得意なタイプではないかと思う。その反面、大胆な構想や破天荒なユーモア(つまり、小松左京、筒井康隆的ユーモア)とは無縁の人のように思える。つまり、視野がひどく狭い、小動物的なタイプに思える。


(以下引用)

と学会の興亡・その四

 僕かと学会をやめようと決心したある事件がある。

 その頃、と学会の例会はある駅の5階か6階(もう記憶か曖昧だ)にあった。そこまで上るのはもちろんエレベーター。ちょうど季節は2012年の春。窓の外には完成が近づいた東京スカイツリーがよく見えた。僕はその日、一人のと学会会員といっしょにエレベーターにのった。

「もうじき完成てすね、スカイツリー」

 するとその若者はこう言ったのだ。

「最初にスカイツリーを壊しに来るのはどんな怪獣なんでしょうね?」

 僕は息が止まるほどのショックを受けた。

 スカイツリーを壊しに来る怪獣? そんなもの決まっている。怪獣6号ゼロケルビンだ。チルソギーニャ遊星人に操られて東京に襲来、スカイツリーの上でヒメと激戦を繰り広げるのだ……。

 そう、『MM9』の続編『invasion』。僕はそれを2011年に描いた。スカイツリー完成の前の年だ。当然、僕の読者なら知っているはずだ。

 僕はその体験の直後に、と学会会員の言動に目を走らせはじめた。そして直ちに、それまで気づかなかったことに気が付くようになった。

 みんな僕の小説の話を聞こうとしない。

 『MM9』だけではなく、他の小説についても同じことが言える。たとえば『BISビブリオバトル部』などは本の好きな人間ならたまらないとおもうのだが。他にも『夏葉と宇宙へ三週間』とか『僕の光輝く世界』とか『UFOはもう来ない』とか面白い作品は山ほどある。まあと学会の中でも原田実さんや開田裕治さん夫妻などは特撮関係の著書にも詳しいけど、それ以外の一般のと学会の関係者はあまり本を読んでいない印象である。

 こうなる前に皆神龍太郎さんが言っていた言葉を思い出した。「と学会会員は山本さんの下で遊んでるんだ。つまりみんなに遊び場を提供するのが山本さんの役目なんだ」と。

 僕はその言葉を噛みしめた。僕の役割とは、単に遊び場を提供するだけ。と学会の会員には僕の小説を読んでいない人が多い。

 それに気づいたとき、僕は会長の座をやめようと決心した。

 僕は「と学会の天皇」なんて空虚な座は欲しくかった。

 僕の望みはただひとつ、小説を読んだ人に「面白かった!」と言ってもらえることだったから!

PR
この記事にコメントする
color
name
subject
mail
url
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
冬山想南
性別:
非公開
P R
忍者ブログ [PR]

photo byAnghel. 
◎ Template by hanamaru.