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「それはあんたのかい」馬買い人は弓を指差して言った。
灰青色の目が閃いた。「これ以外に持ち歩くやり方、知らないんです」
「ふん、弦をかけなよ」少女は言われてためらった。「そう思っただけさ」オヌアはからかうような口調で言った。「で、本当はいったい誰のだい」
少女は巻かれた弦糸を帯の間から取り出した。楽々と弦を弓の一方にかけ、足の前でもう一方をかける。弓の弦の一方を上げ、もう一方まで下げ渡して弦をきれいに張る。弦のかかった弓を彼女は握って体の横に持つ。二つの指で弦を耳のあたりまですらりと引き、射る姿勢を見せた。オヌアは、この少女が射手の篭手をはめているのに今気づいた。
「今は矢は箙の中だけど」少女はゆっくりと弦を射放しながら言った。「的が何だろうが、確実に射るよ」
オヌアはにかりと笑った。「感心したよ。私じゃあ、弓をそんなに大きく引けないね」
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