【5月10日 AFP】メキシコで昨年に発生した殺人事件の件数が、内戦が続くシリアに次いで世界で2番目に多かったことが、英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」が9日に発表した報告書で明らかになった。麻薬カルテルによる暴力が蔓延しているためという。

 メキシコで2016年に発生した殺人事件は2万3000件と、2011年に内戦が始まったシリアの6万件に次ぐ数字となっている。

 IISSは「犯罪の暴力が武力衝突と同じ水準に達するのは非常にまれだ」と指摘している。

 治安の悪さで知られるホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの3か国を指す中米の「北部三角地帯(Northern Triangle)」では、昨年の殺人事件の発生件数が計1万6000件で前年比で減少しているが、メキシコは同時期に11%増えている。

 IISSは報告書で、2006年12月に当時のフェリペ・カルデロン(Felipe Calderon)大統領が麻薬カルテルを撲滅するため「麻薬戦争」を宣言したことに端を発して暴力が拡大したと指摘。「結果として衝突が起き、メキシコに悲惨な状況をもたらした。その月(2006年12月)から2012年11月までに意図的な殺人で10万5000人が死亡した」と述べている。

 カルデロン氏は、後任のエンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)現大統領が麻薬密売組織を武装解除させるという公約の実現に失敗したため、その後も殺人事件の件数が高止まりしていると主張している。(c)AFP