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「虚無党」というのはかつてロシアに実在したグループだが、ニヒリストが「党」に入るのは、筒井康隆のいわゆる「一匹狼の集団」というナンセンスの一種と私には思える。
前に書いた、ペチョーリンとロシアの女スパイを同一視することに私が違和感を覚えるのはそのためだ。スパイとは組織の上司に命じられて行動する人間で、そこにはニヒリズムとは異なる心性がある。つまり、ねじ曲がった(と私には思える)愛国心と冒険心であり、ニヒリズムの対極だろう。
なお、スパイの仕事自体は実は地味なものらしいが、常に生命の危機にさらされているという不安と恐怖が、彼らにはあるはずである。それでも逆に、そのスリルのためにスパイになる心理を私は「冒険心」と言っている。
本当のニヒリストは、一日中ベッドからも出ないで寝ているだろうし、生きるのが面倒になれば自殺するだろう。
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