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A・クリスティ「ねじれた家」読了。
最後の1章だか2章だかになるまで私は犯人が分からなかった。犯行は、誰にでも可能なものであるために、動機が問題になるわけだが、その動機が、普通の読者にはまず分からないのである。つまり、大金持ちの家で起こった殺人事件だけに、遺産相続が問題になる、と誰でも考える。そこに思考の落とし穴がある。遺産相続に無関係な動機として色情、怨恨などがあるが、色情関係のものもやはり遺産相続と関係しているだろう、と思うのがこういう状況では普通だ。
で、最後にどんでん返しがあるのだが、この犯人の可能性は私はまったく考えていなかった。というのは、この犯人がなかなか魅力的だったからである。私は、この人物を主人公(探偵役)に推理小説を書いてみたら面白いのではないか、と思っていたくらいだ。
「犯行動機」というのは、犯人の精神レベルや性格とも関係する、という事実を見事に使った作品だと思う。まあ、これだけで既に犯人が誰か、これから読む人に分かってしまうと思うが、このヒントを貰って読んでもまだ最後まで犯人が分からない人もかなりいると思う。
なお、「ねじれた家」はマザー・グースの歌から取った題名だと思うが、「crooked」は「せむし」の意味があり、舞台となった家に住む人々がほとんど精神的奇形である、という趣旨だと思う。
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