「レファレンス共同データベース」というサイトから転載。
「てふ」と書いてなぜ「ちょう」と読むのか知りたい。
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回答 (Answer) |
調査した結果、もともと「てふ」は「ちょう」とは読まなかったことが判明した。
調査した資料に書かれていたことをまとめると次の通り。 ・昆虫の蝶は、昔は和語の「カハヒラコ」と呼称されていたが、平安時代、外来語の呼称「tiep」に取って代わられた。 この発音「tiep」をそのまま文字に書き写したものが「てふ」だった。 ・この発音「tiep」は、時代を下るにつれて変化していく。 具体的には、平安中期以降から鎌倉時代にかけて「てう」に変化し、 江戸時代までには「ちょお」と発音するようになった。 ・ところが「てふ」という表記だけは変わらずに「てふ」のまま残り続けた。 このずれのために、「てふ」と書いて「ちょう」と読むようになった。 〇調査した資料 ・『国語科図説:図説全集』(石井 庄司/編著 岩崎書店 1960) p.238-239「歴史的かなづかいは、われわれ現代人の発音を写し書くには、まことに不便なものであったが、しかし、その表記法は、もともとから不便であったのではなく、かつては、発音どおりに書いたものであった」 「ところが、文字はそのままの形で残っても、口頭の発音は時とともに時代とともに変化していく。そして、そのずれが、てふてふ(チョーチョー)となり、けふ(キョー)となってしまったのである」 ・『例解古語辞典』(佐伯 梅友/[ほか]編著 三省堂 1985.1) p.571「てふ」の項目に、「和語「カハヒラコ」にかわって、平安時代、古代中国語のtiepを語源とする外来語が定着したもの」とある。 ・『古典基礎語辞典』(大野 晋/編 角川学芸出版 2011.10) p.817-818「てふ」の項目に、「テフ(蝶)は漢語だが、外来語そのままの表記が古くから定着している」とある。 ・『金田一春彦・日本語セミナー5 日本語のあゆみ』(金田一 春彦/著 筑摩書房 1983.8) p.46-47「平安時代の発音は、根本的には歴史的な仮名遣いを、あのとおり読む発音だったと言ってよい」 ・『金田一京助全集 第4巻 国語学』(金田一 京助/[著] 三省堂 1992.10) p.234-235「今日チョーチョー(蝶々)と云っているのは平安時代はテフテフ(tefu-tefu)と発音されていた。それ故、当時の人は「てふてふ」と綴ったのである」 「平安中期以後、語中・語尾のf音がw音になってきた。即ち語中・語尾のはひふへほは、実際はワヰウヱヲと発音された。鎌倉時代から更にワイウエヲとなるから、てふてふ・けふ・ゑふが、夫々てうてう(teu-teu)けう(keu)えう(eu)の発音となって戦国末に及んだ。それが、江戸時代へかけて、すべてのeuという結語は、みなyooとなった即ちteu-teuがtyoo-tyooになり、keuがkyooになり、euがyooとなって今日の発音が生じた」 [事例作成日:2020年7月15日] |
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