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夏目漱石の「道草」を読んでいるが、一度に一節(おそらく新聞連載の一回分か)を読むとちょうどいい。頭も目も疲れない。
その中で「来たか長さん まってたほい」という俗言が出てきたが、この出典が何か数秒頭を悩ませ、おそらく歌舞伎だろうと結論した。長さんとは「幡随院長兵衛」だろう。江戸から明治までの庶民生活では歌舞伎と講談は基本娯楽だったはずである。
で、話の大筋と関係の無い人物名は「ーーー」として書かないのは創作の参考になる。これは読者の思考の負担を減らすわけだ。そして話の大筋に集中させる。
「道草」の主人公夫婦は作者夫婦そのものに近いのではないか。夫婦仲が悪いのも相性が悪いのも、かなり現実の反映だと思う。しかし、奥さんが夫以外と話す時の口調が女学生的とされているが実際、小津安次郎の作品の若い女性の話し方である。たぶん、戦後すぐまでは上流社会、あるいは都会の若い女性の話し方はそんなものだったのだろう。「~してよ?」「よくってよ」みたいな「~よ」という口調である。
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