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多島斗志之の「症例A」を読了したが、凄い傑作である。ただ、さほど話題にもならなかったのは、題名のせいと、作者の知名度の低さのためだろう。これが若手の作家なら、その年の話題ナンバーワンになっていたと思う。
それよりも、題名が問題だ。まず、書店で買いたくなるタイトルではない。まるで魅力の無い題名である。もちろん、作者は報道記事における「少年A」「少女A」と同じく、病名を伏せながら、その病名が問題だ、ということを暗示したのだとは思う。しかし、一般人にとって魅力のある題名かというと、まったく魅力がない。もっと安直に「七つの顔の少女」とでもしたら良かったのではないか。ただし、真のヒロインは少女ではなく三十代の女性だが、それだと「売れない」ので、そこは誤魔化すわけだ。

なお、全体の話より、作中に出て来るエピソードで、敗戦時の日本で、美術館職員たちが進駐軍による美術品没収を怖れて、美術品の贋作を大量に作る話があるが、これなど、2時間くらいの娯楽映画に最適の話である。いわゆる「コンゲーム」(ゲーム的詐欺)物だ。有名どころでは「スティング」などがそれである。話の最後は、贋作作成集団の頭が、秘密の場所に保存した美術品を過誤による火災で焼失した、と言いながら、実はそれを独り占めして海外に売り、巨額のカネを得るという、これもまさにコンゲーム的オチである。
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