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「雲の筏」から転載。

(以下引用)



○高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、神産巣日神(かみむすびのかみ)。高御産巣日神は、書紀に高皇産霊尊、「皇産霊此云2美武須毘1(皇産霊をみむすびと言う)」とあり、「古語拾遺」に「古語多加美武須比(たかみむすび)」、新撰姓氏録に「高彌牟須比命」とあるので読みが分かる。【「たかんすび」などと読むのは、音便に崩れた後世の読みである。】この名の意味は、「高」は美称、別名でも「高木(たかぎ)の神」と言う。【後に見える。】「御」も美称である。神産巣日神は、書紀には神皇産霊(かむみむすび)尊とあり、「皇」の字が一言多い。実際、高御産巣日神と双神であれば、この神も神御産巣日神とあって然るべきである。だが延喜式の出雲国造の神賀詞にも「高御魂(たかみむすび)、神魂(かみむすび)命」、新年祭の詞にも「神魂、高御魂」、また御巫の祭る神八座の中にも神産日神、高御産日尊【三代実録二巻に出たのもこれと同じ。】があり、これら二神を並べた中に、いずれも神産巣日神には「御」の字がない。新撰姓氏録にはたくさんの箇所にこの神の名があり、神御魂と書いた箇所もあるが、多くは「神魂」である。古言では同じ音が重なったとき、縮めて一音に言う例が少なくないので、【「倭迹々日(ヤマトととび)」という皇女の名を、「夜麻登々(やまとと)」としたり、旅人を「たびと」とするたぐいである。】これも「かみみ」と「み」が重なるので、多くの場合は縮めて言うのである。であれば、「かみ」の「み」に「御」の意味が含まれているのだ。神の字は「かみ」と読むべきである。【「かみみ」を縮めても、「かむみ」を縮めても、同じく「かみ」になるからである。「かむ」と読んだのでは、「御」の意味が備わらない。ただし書紀のように「神皇」とある場合は、「神」は「かむ」と読む。また「神皇」、「神御」共に、二文字で「かみ」と読んでもいいだろう。】


この名の意味は、「神御」は「高御」と同じく美称、「産巣日」は、字はすべて借字で、「産巣」は「生(むす)」である。それは息子、娘、また「苔むす」【万葉には「草武佐受(くさむさず)」もある。】などに言う「むす」で、ものが成り出ずるのを言う。【とすると、「産」の字は正字と考えても良い。書紀にも「産霊」とあり、「産日」と書かれることも多い。「む」の意味にこの字を書くのは、「生む」の意味である。仁徳天皇の歌で、「子生む」を「こむ」と言った例がある。だが「産巣(むす)」を「生む」の意でなく、「産」を「生む」の意とし、「巣日(すび)」を続けて考えても良さそうに思えるふしもある。その考えは七之巻五十七葉に出した。】「日」は書紀に「霊」とあるが、意味はよく当たっている。すべて物事の霊異(くしび)なのを「ひ」を言う。【「久志毘(くしび)」の「毘」も同じである。】高天の原にいませる天照大御神を地上から見上げて「日」と言うのも、天地に比類なく、最も霊異だからだ。比古(ひこ)、比賣(ひめ)などの「比」も、霊異であることの美称である。また禍津日、直毘などの「毘」もこれである。であるから、「産霊」は万物を生成する霊異(くしび)なる神霊(みたま)を言う。【以前、この「毘」は神佐備(かむさび)、荒備(あらび)などの「び」と同じで、「~ぶる」とも活用し、「~めく」という語に似ている。だから「むすび」とは生み出そうとしている状態を言うのかと考えていたが、それは誤っていた。「~ぶる」と活用する「び」ではない。だからあの「び」は常に「備」を書き、「むすび」は常に「毘」を書く。】この他にも、火産霊(ほむすび)、和久産巣日(わくむすび)、玉留産日(たまつめむすび)、生産日(いくむすび)、足産日(たるむすび)、角凝魂(つぬこりむすび)などの名がある。「むすび」の意味はみな同じである。世の中にありとあらゆることは、天地をはじめ、万物も事業も、この二柱の産巣日大神の産霊によって成り出ずるのである。
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