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サヴァン症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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サヴァン症候群など(サヴァンしょうこうぐん、英語: savant syndrome)とは、知的障害発達障害等のある者の内、ごく特定分野に限って優れた能力を発揮する者の症状を指す。

歴史[編集]

イギリスの医師ジョン・ランドン・ダウン英語: John Langdon Down1887年、厖大な量の書籍を一回読んだだけですべて記憶し、さらにそれをすべて逆から読み上げるという、常軌を逸した記憶力を持った男性を報告した。その天才的な能力を持つにもかかわらず、通常の学習能力は普通である彼を「idiot savant」(イディオ・サヴァン=賢い白痴【仏語】)と名付けた。

ただし、彼が自閉症の診断基準を満たしている記述は論文には存在しない。論文上には「他の学習能力は通常である」と記載があるのみである。後に"idiot"が差別的な意味を持っていることから、「サヴァン症候群」と改められた。

日本では、新渡戸稲造著の『修養』(明治44年、1911年刊行)「総説」の頁において、新渡戸がサヴァン症の米国の少年と会話をした記録が記述されている。それによると、新渡戸が米国の白痴院(原文ママ)を訪れた際、「談話をした少年が普通人の遠く及ばぬ見識を懐いていて、専門家さえ舌を巻くがごときことをし、中でも驚いたのは、数学で非常に偉いものがあること」とし、「(彼は)算盤も一本の筆も用いないで正確な数字を答えた」と記し、例として、「79万3625に9万9673を乗ぜよと命じると、ただちに791億0298万4625と答え、僕は3、4分かけて計算して答え合わせをした」と述べている。

原因[編集]

サヴァン症候群の原因は諸説があり、特定には至っていない。実際、症例により、各々メカニズムがことなり、同じ症例は二つとないという考えもある。の器質因にその原因を求める論が有力だが、自閉性障害のある者が持つ特異な認知をその原因に求める説もある。コミュニケーション障害・自閉性障害のある者の全てがこのような能力を持っているわけではない。自閉症と同様、男女比は男性が女性の数倍である。

広義には、障害にもかかわらずある分野で他の分野より優れた(健常者と比較して並外れているわけではない)能力を持つ人も含めることもある。また、いわゆる天才や偉人の多くは円満な人格者ではなく、中には日常生活に支障が出る症状の人、時にコミュニケーション障害自閉性障害に近い症状の人もおり、それがさらに極端になって「紙一重」を超えたのがサヴァン症候群だという見方もある。

能力の例[編集]

  • ランダムな年月日の曜日を言える(カレンダー計算)。ただし通常の計算は、1桁の掛け算でも出来ない場合がある。

(ただし簡単なカレンダー計算は軽度知的障害がある自閉症の10人に1くらいはできるとされているのでほとんどの場合はサヴァンではない)

  • 素数と約数を瞬時に判断できる。
  • 航空写真を少し見ただけで、細部にわたるまで描き起こすことができる(映像記憶)。
  • 書籍や電話帳円周率周期表などを暗唱できる。内容の理解を伴わないまま暗唱できる例もある。
  • 並外れた暗算をすることができる。
  • 音楽を一度聞いただけで再現できる[1]
  • 語学の天才で数カ国語を自由に操る

この他にも様々な能力(特に記憶に関するもの)がみられるが、対象物が変わると全く出来なくなってしまうケースがある(航空写真なら描き起こすことができるが、風景だとできない、など)。

サヴァン症候群に関する報告で、一部に信憑性への疑問が出てきた。100個以上の物の数を瞬間的に把握する能力(以下で述べる映画『レインマン』でも取り上げられた)、および10桁もの巨大な素数を言う能力についてである。文献ではESPなどが挙がっていることさえある。

映画『レインマン』での能力の描写[編集]

1988年に映画『レインマン』がヒットして、サヴァン症候群への関心が高まることとなった。原作を書いた作家バリー・モロー英語: Barry Morrowは、最初にテキサスのARC打ち合わせでサヴァン症患者キム・ピークと会ってインスピレーションを受けた。また、キム・ピークのもの以外のサヴァン症候群もレイモンドの役設定に盛り込まれた。

映画は、全体を通じて専門家の監修のもと、サヴァン症候群の様子が比較的忠実に描写されている。サヴァン症候群患者であるレイモンド役を演じたダスティン・ホフマンは、役作りの上でサヴァン症候群の患者何人かに会っている。ホフマンが会った患者の中でもレイモンドの能力や行動に最も近いのは、驚異的な速算力で有名だったジョゼフ・サリヴァンである。

著名人[編集]

以下に知的障害または自閉症障害、もしくはその両方があり、かつ優れた能力があるとされる人物を挙げる。

サヴァン症候群を扱った作品[編集]

  • フラッシュフォワード』 - TVドラマシリーズ。
  • 吉里吉里人』 - 井上ひさしの小説で、百科事典をフォトコピーして覚えてしまう男性が出てくる。
  • ピュア』‐ 1996年に放送されたドラマ。主人公・折原優香が、オブジェ制作での卓越した才能をもっている様子が描かれている恋愛ドラマ。
  • 残響のテロル』 - 2014年のテレビアニメ。サヴァン症候群を人工的に生み出そうとする人体実験が登場する。
  • 静かな生活』 - 大江健三郎の小説で、義兄に当たる伊丹十三監督が映画化。
  • ケイゾク』『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』 - 同一の世界観をもつTVドラマで、どちらも主人公が天才的な推理力を持つ変人。彼女らは続編の『SICK'S』の登場人物に「サヴァン」の一言でまとめられた。
  • ATARU』 - 2012年に放送されたドラマ。主人公のチョコザイこと猪口在がサヴァン症候群である
  • CUBE』 - 1997年製作のカナダ映画。監督はヴィンチェンゾ・ナタリ。この作品では因数分解を暗算で瞬時に行える青年が登場する。
  • 相棒 season7 最終話』 - サヴァン症候群の男性が描いた絵から事件が発覚する。
  • 相棒 season16 第4話』 - 殺された被害者がサヴァン症候群であることが判明する。数学において特異な才能を有する。
  • クビキリサイクル』 - ヒロインである玖渚友がサヴァン症候群を発症している。機械の天才。
  • 天久鷹央の推理カルテ』 - 知念実希人の小説。主人公の天久鷹央がサヴァン症候群である。
  • グッド・ドクター』 - 主人公の研修医がサヴァン症候群である。
  • ザ・ファブル』 -主人公の佐藤アキラ(ファブル)がサヴァン症候群である可能性を示唆する旨のシーンがある。
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