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山本貴嗣が、あれほど長い間漫画家をやっているのにヒット作らしい作品がほとんど無い理由はこの辺にあるのではないか。つまり、自分以外の人間の心理に対する共感や同情や想像力が本質的に欠けているように思う。たとえば、「好きな人もいっしょにいる」というのは個人的な話であり、それによって一般人の多くが抱えている孤独や不満足感を切り捨てていいはずがない。
いや、切り捨ててもいいが、そうした人間が描く作品もまた他人からは切り捨てられるのではないか。
まあ、他人に受け入れられなくても、自分は自分の好きな作品を描く、というのなら、それは商業誌に載せる作品ではなく、いくら技術が高かろうが精魂込めようが、趣味の作品だろう。熟達度の高いヘンリー・ダーガーである。つまり、書いた作品をひとつも外に出さず、自分のアパートの中で膨大な紙(作品)に埋もれて死んでいくのと本質的には同類であるわけだ。
ちなみに、彼の作品はエロと暴力の描写が多い作品だとそのツィッターに載る絵を見ると想像できるが、エロと暴力は大衆的人気を得るもっとも確実なテーマであるにも関わらず、彼の名前が世間的にほとんど知られていない理由は、単純に「これは俺(わたし)には面白くない。肌が合わない」と感じる漫画ファンが多いからだと思う。
逆に、自分の趣味に徹底的にこだわり、売れても売れなくてもいいという姿勢を一生続けていくのも、生き方としては悪くはないだろう。まあ、(自己批判能力の欠如による)自己満足という無形の檻の中で生きる人生ではあるが、自分が幸福と思えば幸福なのである。本人が「閉じ込められた監獄から脱出する話もどうでもいい」と既に書いているのは、自分自身の「無形の檻」を無意識に感じて、自己防衛の予防線を張っているのかもしれない。




  1. 同じ理由で、閉じ込められた監獄から脱出する話もどうでもいい。すばらしいできなのかもしれないが。や、中学のころ映画館で見た「パピヨン」は感動したけど。

  2. 時空を超えて成人が学生になる設定、あの頃はよかったと思う人にはいいかもだけど、金も時間も自由にならないし好きな人もいっしょにいる今とくらべて何一ついいことないので、なぜそんな夢のない設定から始めないといけないのかと思って興味がわかない。いいのは体力と生活の心配がないくらいか。









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