(前略)
戦国の軍隊は、大半が足軽か雑兵=非武士階級ということになる。それらの難民+アウトローを、すでに公権力化している武士集団、まあ警察とか軍隊のようなものが統率して戦争をする……みたいなイメージであろうか。
足軽や雑兵は略奪が目的なの?
金や飯で集められるのだが、それってどこまで戦うの? という疑問が起きる。
西股は藤木久志の『雑兵たちの戦場』(朝日選書)を典拠にしながら、戦場の略奪(食料・物品・人間)の横行を挙げている。それがまあ報酬ということになる。
西股は伊勢宗瑞(北条早雲)が初期の戦闘でどこから人数を調達したかを次のように書いている。
おそらく宗瑞たちは、収穫物の略奪というエサを示すことによって、志願者をかき集めて傭兵部隊(足軽衆)を組織したのだ。そして、戦争に勝利すると討滅した相手の所領を、多米氏や荒川氏といった傭兵隊長や、笠原氏・大道寺氏といった被官・縁者らに分配して兵を養わせる、ということをくり返しながら軍隊を創り上げていったのではあるまいか。(p.123)
こうした西股の仮説というか推測に過ぎないので、別に通説でもない。しかし、他に手がかりもないので、これをもとにドラマのシーンを見直してみる。
勝利によって略奪ができるから、一応勝敗にはこだわる。つまり、殺しに向かうモチベーションが得られる。
しかし、命あっての物種だから、そこまで真剣にはできない。
足軽・雑兵らが逃亡をはじめても、侍たちが最後まで踏みとどまって勇ましく討ち死にするのは、当然であった。(p.210)
侍たちは戦功によって直接に評価されるシステムであったから、無謀な「先駆け」「一番乗り」をふくめ戦闘のモチベーションは高かった。西股はその様子を秀吉の小田原征伐の際の記録から紹介している。
斎藤道三と織田信秀の小さな合戦のようなものは、上記に書いたような大規模な「非正規雇用兵」がおらず、いわゆる武士集団だけで戦っていたのかもしれない……とも思い直してみる。
そんなことにぼんやりと思いを馳せる時間であった。