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「エラリー・クイーンの冒険」読了。(以下ネタバレ注意)
ひとつとして感心した作品は無いのだが、「粗探し」をする楽しみを与えてくれるという点では価値がある。クイーンの作品のほとんどは「トリックのためのトリック」が中心であり、つまり意味の無い要素が意味ありげに書かれるわけである。「いかれたお茶会の冒険」などその典型であり、最後の最後まで犯罪そのものすら出て来ないし、途中からやたらに出て来る「謎」は探偵のエラリー自身が撒き散らしたものなのである。しかも、トリック自体も探偵小説の禁じ手とされている「謎の隠し部屋や隠し通路」の類だ。そんなのは読者に分かるはずがないから禁じ手なのである。
もうひとつ例を挙げれば、「七匹の黒猫の冒険」だ。寝たきりの老婆を殺すなど簡単な事であり、問題はその死体の処分だ。とすると、毎月のように買われてきた黒猫は、死体の処分に使ったと考えるのが当たり前だろう。つまり、ロード・ダンセイニの「二瓶のソース」のパターンだ。毒殺を恐れた老婆が猫に毒見をさせるなど、馬鹿げた話だ。寝たきり老婆の殺害など、顔の上からクッションで押さえつけるだけでいいし、それで警察が疑うこともないだろう。繰り返すが、問題なのは老婆の死体であり、それは焼却炉で焼いても骨は残るだろう。人間の骨格のような大きなものが、アパートのゴミとして捨てられるだろうか。まあ、要するに、猫の話は「謎作りのためのでっち上げ」にすぎないわけだ。クイーンのトリックの大半はこの手のものだ。
私は、探偵としての、つまり主人公としてのクイーンにも常に不快感を感じるのだが、最初に言ったように「粗探し」が主な目的での読書としてはそれでいいわけだ。推理小説の粗探しというのはなかなか楽しいのである。
なお、私が感心した推理小説としてはヴァン・ダインの「ベンスン殺人事件」などがある。これは論理的に非の打ちどころがない作品だと思う。
文学として面白いのはフィルポッツの「赤毛のレドメイン家」など。
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