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「泉の波立ち」から転載。
ブログ筆者の南堂氏の人格や考え方には共感できないこともあるが、下の記事に関しては賛成である。こうした再犯者の犯罪は単なる加算ではなく、二度目以降は「利子付き」の重刑に処すべきだと思う。
犯罪者の再犯率は3~4割と下の記事にはあるが、いろいろなニュースを見聞きした印象だともっと高い気がする。つまり、再犯してもニュースや事件として表に出ない場合がはるかに多いのではないか。



2019年06月19日

◆ 凶悪犯の早期釈放

 女子中学生2名を殺害した凶悪犯が、20年の懲役のあとで早期釈放されたら、以後、わいせつ犯罪を繰り返した。──ここには、おかしな点が見られる。

 ※ 最後に 【 追記 】 を加筆しました。内容を訂正しています。


 ──

 報道は下記。
 長崎市で昨年6月、小学生の女児(当時7歳)にわいせつな行為をし、けがをさせたなどとして、強制わいせつ致傷罪などに問われた無職寺本隆志被告(66)の控訴審判決が18日、福岡高裁であった。野島秀夫裁判長は、懲役7年(求刑・懲役8年)とした1審・長崎地裁の裁判員裁判判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。
( → 女子中学生2人殺害し出所後わいせつ、刑期終えわいせつ致傷…2審も懲役7年判決 : 読売新聞

 判決によると、昨年6月、長崎市で下校中の女児を襲い、腰や尻に軽傷を負わせた。昨年5、6月には別の女児2人の運動靴や下着などを盗んだ。
 被告は92年、東京都と長崎市で女子中学生2人を殺害。起訴されて公判中にもう一つの事件を告白したため別々に審理され、東京の事件で懲役17年、長崎の事件で同15年の判決を受けた。
( → 女児わいせつで懲役7年 福岡高裁、92年中学生2人殺害  :日本経済新聞

 「女子中学生2人を殺害」にもかかわらず、懲役 20年で出所している。
  → 女子中学生2人を殺害、出所後4ヶ月で女児への強制わいせつ事件で逮捕された寺本隆志の犯歴

 これによると、次のことがわかる。
 「女子中学生2名を殺害したが、それぞれ別件なので、別件で訴追された。懲役17年と15年で、計32年の懲役。いずれの殺人についても、本人が極刑(死刑)を望んだのに、最高裁が棄却した。その後、刑期満了を待たずに、20年の短期で早期釈放された。たぶん仮釈放。それが 2012年。その翌年の 2013年 10月に、わいせつ犯罪を起こす。逮捕されたあと、懲役4年となる。2018年には釈放されるが、その5カ月後には、わいせつ犯罪をして逮捕される」

 これを見て、明らかにおかしいことがいくつもある。
  ・ 女子中学生2名を殺害したのに、死刑にならない。
  ・ 懲役 32年の処分が下ったのに、20年で早期釈放される。
  ・ 早期釈放(仮釈放)の後に犯罪をしても、収監されない。
   つまり、仮釈放が取り消しにならない。


 このうち、最後の点が最もおかしい。
 死刑( or 無期懲役)にならないというのも、20年で早期釈放になるというのも、納得しがたいとはいえ、ありえないというほどではない。
 しかし、再犯で仮釈放が取り消しにならないというのは、どう考えてもおかしい。仮釈放の期間中に大きな罪を犯せば、仮釈放が取り消しになるのが原則だからだ。 
 このことは、弁護士も述べている。
 仮釈放中に再犯に及べば,仮釈放は取り消されます。
( → 仮釈放中に再犯したら、残りの刑期は加算されますか? - 弁護士ドットコム

 ──

 ところが、である。さらに詳しく調べると、意外なことがわかった。上記の原則は、ろくに守られていないのだ。つまり、仮釈放は「取り消しになる」のではなくて、「取り消しになることもある」という程度であるにすぎない。
 仮釈放が取り消される可能性があります。
( → 仮釈放とは?仮釈放の流れから実態・注意点・目的まで|あなたの弁護士

 再犯行為で実刑判決を受け、かつ仮釈放も取り消されたという場合は、言い渡された刑期と仮釈放とされた期間が合算されて収監されることになります。
( → 鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知 九州・沖縄 福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄 まとめ
 
 仮釈放が取り消しになるには、「取り消しにする」という新たな判決が必要となる。では、そのような判決は、実際には下されれているのか? 
 法務省によると、2006年からの5年間で約7万7千人の受刑者が仮釈放された。このうち再犯を理由に仮釈放を取り消されたのは56人。
(2011-12-22 朝日新聞 朝刊 1社会)
( → 仮釈放(かりしゃくほう)とは - コトバンク

 唖然とする。約7万7千人の仮釈放のうち、再犯で取り消されたのは 56人だけだ。
 一方で、出所者の再犯率は3~4割ぐらいあって、特に性的犯罪者の再犯率は高い。
  → 平成27年版 犯罪白書
 再犯を理由に仮釈放の取り消しがあってしかるべき事例は1~3万人ぐらいはいるだろう。なのに、実際に仮釈放の取り消しがあったのは、56人だけだ。
 これでは、「仮釈放の取り消し」という原則が有名無実化している。

 そして、こういう馬鹿げた運用がなされているがゆえに、冒頭の裁判のような事件(出所者による、わいせつ犯罪の繰り返し)ということが起こるのだ。
 本来ならば、出所後になした最初の再犯( 2013年)の時点で、仮釈放を取り消して、32年の懲役を満期まで受刑させるべきだったのだが。そうであれば、32年後の 2024年までは収監されていたはずだ。さらに、わいせつ犯罪の再犯の4年分を追加して、2028年までは収監されていたはずだ。
 ところが現実には、2018年に釈放された。そしてすぐに、再々犯みたいな形で、わいせつ犯罪をまたも起こした。
 
 こういうのは、現在の法の運用(収監の処置)に、問題があることを意味する。
 悪党を逮捕することばかり考えないで、悪党を収監することも考えた方がいいだろう。



 [ 付記 ]
 「長期の収監にはコストがかかって無駄だ」
 という意見もある。それには、次の対処が可能だ。
 「性犯罪者には、去勢を条件として、早期釈放する」

 今回の犯罪者も、去勢しておけば、わいせつ犯罪を繰り返すこともなかったはずだ。これなら、国民も本人も、ともにハッピーになれたはずだ。

 去勢については、過去記事でも言及した。
  → ストーカーは犯罪か病気か?: Open ブログ
  → 性犯罪者とオタク: Open ブログ

 ※ ただし去勢は、強制ではなく、任意である。
   「去勢を受ければ早期釈放となります。どうする?」
   と尋ねて、選択は本人に委ねる。
 


 【 追記 】
 次の指摘がコメント欄に来た。
リンク先に書いてありますが「当時は有期懲役の上限が20年だった」から20年で出所になったのであって
「たぶん仮釈放」という推測が間違っているのではないでしょうか

 これは、下記記事による。
 当時は有期懲役の上限が20年だったため、2012年には出所できたのでした。
 もし、一件目の殺人の判決が出る前に自白されていれば、もしくは、最初から殺人事件として捜査されていれば二つの事件が併合審理となり、死刑か無期懲役になる可能性があったのですが、
( → 女子中学生2人を殺害、出所後4ヶ月で女児への強制わいせつ事件で逮捕された寺本隆志の犯歴

 なるほど。「仮釈放」という本文中の推測は妥当ではなくて、正しくは「早期釈放」されたわけだ。(この場合には、再犯をしても収監されることはない。その意味で、本文の趣旨は妥当ではない。)

 しかし、である。その通りだとすれば、別の問題が生じる。
 2件目の事件の判決では、
 「懲役 15年を言い渡しても、懲役 17年が懲役 20年になるだけで、実質的には2件目では懲役3年になる」
 とわかっていたはずだ。ならば、2件目の時点で、無期懲役または死刑を言い渡しても良かった。

 それにしても、「別件で複数の懲役刑を言い渡されても、それぞれが加算されないで、懲役 20年という上限に収まる」というのは、わけがわからない話だ。……これ、ちょっと制度欠陥っぽい。
 
 ※ 現状では、有期刑の上限は 20年から 30年に伸びているが、同じ問題は残る。たとえば、女子中学生を 10人殺しても、別件で起訴されれば、懲役 30年で済んでしまう。一方、まとめて起訴されれば、死刑となるだろう。つまり、検察の手続き次第で、罰の軽重が変わってしまう。同じ犯罪であっても、だ。

 ※ じゃあどうすればいいか……と言えば、特に難しいことをする必要はなくて、単純に加算してしまえばいい。たとえば、懲役 30年を 10件なら、合計して懲役 300年とすればいい。これは、無意味な数字に思えそうだが、実質的には無期懲役と同じになる。その後、刑務所の運用で、仮釈放の期間を早めに取れば、懲役 50年ぐらいにまで減じられることもあるだろう。ここは、刑務所の仮釈放の運用で決めればいいだけだ。(つまり、制度上は、単純加算だけでいい。)

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