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・須田家。園遊会の翌日。須田夫人と銀三郎が居間で向かい合って座っている。

須田夫人「昨日の騒ぎは何だったの?」
銀三郎「つまらん話ですよ。説明する価値もない」
須田夫人「あの佐藤という青年は昔うちの使用人だった者の子供ですよ。華族であるあなたが平民に顔を殴られて抵抗もしないなんて恥ずかしいじゃないですか」
銀三郎「あの場で取っ組み合いでもしろと?」(冷笑する。)
須田夫人「警察に言って捕まえさせましょうか?」
銀三郎「不要です。それくらいならあの場で殴り返しましたよ。あの程度の虫けらをひねり潰すのは容易です」
須田夫人黙り込む。
居間の入り口に菊が現れる。
菊「よろしいでしょうか」
須田夫人「ああ、いいよ。お兄さんのことかい?」
菊「はい。昨日は兄がとんでもないことをいたしまして、お詫びのしようもございません」(頭を深々と下げる。)
銀三郎「気にしないでいい。お前とは関係の無いことだ」
菊「何か私から兄に申しておきましょうか?」
銀三郎「いや、何も言わんでいい。これはあいつと僕の間の話だ」(菊に微笑する。)
菊はその顔に安心した表情を浮かべる。が、それだけではない何かがその下にある。
須田夫人の心に疑惑が浮かぶ。
須田夫人「菊や、お茶のお替りを持ってきてくれるかい」
菊「はい、承知しました」
菊、部屋を出ていく。
須田夫人、銀三郎に鎌をかける。
須田夫人「あの子も年頃になったねえ。いつも近くにいるから気づかなかった」
銀三郎(無関心のまま)「そうですね」
須田夫人「そろそろ嫁入り先でも探してやらないとね」
銀三郎「そうですね」
須田夫人「昨日、お前に会わせた鳥居という人がいるだろう。あの人なんかどうかね」
銀三郎「(?)かなりな年配に見えましたが?」
須田夫人「年は関係ないさ。女として落ち着き先が決まればいいだけだし、大人しい男だから、嫁をいじめたりはしないだろうよ。まあ、持参金はこちらが出すことにして」(銀三郎の顔色を伺うが、相手は特に表情の変化は無い)
銀三郎「まあ、悪くは無いんじゃないですか。僕にはよく分からない話だが」
須田夫人「それじゃあ、鳥居さんにそう話してみるよ」
銀三郎は自分には関係の無い話だ、というように軽く肩をすくめるしぐさをする。

・ドアがノックされる。
須田夫人「お入り」
戸口にこの家の執事が現れ、一礼する。
執事「玄関に、銀三郎様にお目にかかりたいという方がいらっしています」
銀三郎「何と言う人だ?」
執事「はい、田端退役大尉と名乗っていますが、どう致しましょうか」
銀三郎、少し眉をひそめるが、すぐに
銀三郎「会おう。僕の部屋に通せ」


(このシーン終わり)

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