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私は推理小説というのはあまり好きではないのだが、読む以上は、それが論理的なものだろうと期待して読む。論理的でない推理小説というのは、羽根の無い鳥のような存在だと思うからだ。まあ、そういう鳥もいないこともないだろうが、それを鳥と呼んでいいものかどうか。
で、先ほどまで読んでいた小説(まあ、ジュブナイル的な小説で、真面目に推理小説扱いしていいものかどうかとは思うが)の中に、こういう描写があった。
西洋の城の階段を、明かりを手にして主人公と語り手が降りていく場面だ。カギカッコは引用のために私がつけたが、引用部分は地の文で、語り手の少女(私)の視点による描写だ。

「壁では、私たちのデフォルメされた影が、奇妙なダンスを踊っている。」

何がおかしいのか、と思う人もいるだろうが、明かりを手にした場合、影は真後ろにできるのである。その影を見るためには、明かりは前方に維持したまま、首だけ「エクソシスト」の例の少女のように180度真後ろに回転させなければならないはずだ。
つまり、作者は、映画的なカメラワークで、人物たちが階段を下りていく様子を「横から」撮影した映像を思い描きながら、それを登場人物の一人称視点で描いてしまうというミスを犯しているのである。

この作者の作品にはこうした描写のおかしな部分がたくさんあるのだが、子供にはけっこう人気があるようで、私の娘なども子供時代から愛好している作者なので、家にあったその作品を読んでみたわけだ。なお、本筋のトリックも、あるいは問題解決に至るまでの経緯も突っ込みどころ満載だが、軽い内容なので、かえって最後まで読んでしまった。まあ、脇筋に漫画的ネタを無理やり文章で描いたような表現の多い文章で、そこがある層にはウケるのかもしれない。(勘違いしてほしくないが、私は漫画を軽蔑しているどころか、漫画の一部は最上級の文学に比肩すると思っている。)


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彼は考え続けたが、それは彼がいつも考えるのに費やす時間よりはるかに長い時間だった。
「どうしたんだ?」私は尋ねた。
「そのドワーフの事を前に確かに聞いたことがあるんだ」
その言葉は私を呆然とさせた。
「ただ、誰から聞いたのか思い出せない」
「どうか思い出してくれ」私は切願した。
「やってみる」そう言って、彼は再び考え始めた。
私が自分が見た夢のことを話し終わった後、彼は座ったまま長い間考えていた。あまりに長く考えているので、私は暇つぶしにelectric bellows(訳者注:意味不明。bellowsはふいごやカメラの蛇腹を意味するようだが、コントロールパネルとは無関係だろう。原作では何なのか、原作を読んでいないので分からない。)のコントロールパネルを磨き始めた。とうとう彼はいつも通り結論に達し、「難しい話だな。ふむ、踊るドワーフか。難しい」と言った。
彼の言葉は私をたいして失望はさせなかった。彼がいつも以上のことを言うとは私は期待していなかった。私はただ誰かにこの夢のことを言いたかっただけだ。私はelectric bellows(訳者注:おそらく、電子メニュー表かと思われる。)を下に置き、もうすっかりぬるくなっていた自分のお茶を飲んだ。















耳部門のパートナーと私は、後の方の仕事のやり方を好んだ。我々は朝のうちに仕事を終わらせ、午後の時間はおしゃべりや読書や、別々の娯楽に使っていた。踊るドワーフの夢を見たその午後、我々のその日の仕事は新たに皺をつけられた耳を壁にかけることで、その後、私たちはフロアに座って日差しを楽しんでいた。
私はパートナーにドワーフのことを話した。その夢の生き生きとした細部まで私は覚えており、それがどんなに微細だろうと、そのすべてを彼に話したのだ。表現するのが難しい部分になると私は頭を振ったり腕を揺らしたり、足を踏み鳴らしたりしてそれを伝えようとした。彼はしばしばうなり声をあげたが、お茶をすすりながら注意深くそれを聞いた。彼は私より五つ年上だったが、頑丈な体格の男で、黒い顎鬚と寡黙な性向を持っていた。彼は腕を組んで考える、その癖を今見せていた。彼の表情を見れば、彼が真面目な思索家で、物事をさまざまな角度から考える人間だと誰でも思うだろう。だが、たいていは彼はしばらく考えた後、「そいつはなかなか難しい話だな」と言うだけだった。
前に言ったように、耳セクションは製象工程の中で一番簡単な部分である。そのパートに従事する工員にはわずかな努力の遂行しか要求しないし、極度の神経集中も不要であり、複雑な機械も使わない。実際の個々の作業の内容も限定されている。労働者たちはリラックスしたペースで一日働くこともできるし、割り当てを午前中に終わらせて午後の時間をフリーにするために自分に拍車をかけて働くこともできる。








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