「受けゼリフを言うな」
――印象的だった教えはなんでしょう?
高橋 「受けゼリフを言うな」ってことですね。
――受けゼリフ?
高橋 たとえば「いいお天気ですね」と話しかけられたときに「そうですね」と返したら、マンガにはならないでしょ。「いいお天気ですね」に対してどう返すかで、キャラクターも話も膨らみます。その教えは、いまだにすごくためになっています。
結局、「キャラクター」は…
――小池先生の著作を読むと「キャラクターづくり」を重視するイメージが強いですが、高橋先生は「セリフ」のつくり方が印象に残っていた?
高橋 結局、「キャラクターとは何か」と言ったら、言葉でできているじゃないですか。造形とかは置いといて、ね。その人が何をしゃべるか、どう受けるか。そのリアクションでキャラクターはできあがっているのだな、と。つまり「受けゼリフを言うな」ってことは、イコール「キャラクターを考える」ことなんだ、と思っています。
――『うる星やつら』では、主人公の諸星あたると面堂終太郎は「同じレベルのアホ」(「星座はめぐる」単行本3巻収録)ですが、リアクションの出方が違うわけですね。
高橋 そういうところはあるかもしれません。新キャラを登場させたときの掛け合いで、既存のキャラクターの別の一面が出ることがあって、おそらく根底に「受けゼリフを言うな」の教えを思い続けていたからだろうなぁ、と思っています。いまマンガを描いている人も、この教えを覚えておくと、おもしろいんじゃないでしょうか。
『めぞん一刻』ヒロインの笑顔の裏側
――劇画村塾では、かなり高度なことを教えていたんですね。
高橋 プロになって何年も経験を積んでから「あの時言ってくれたことはこういうことだったのか」と気づく瞬間があるんです。たとえば「最後に印象的な笑顔でニコッとする」という教えがあるんですけど、ただ笑顔を描けばいいというわけではなくて、ラストのコマに至るまでの積み重ねのエピソードが大事になってきます。
でも、村塾に通っている頃のレベルでは、最後のニコッとした笑顔だけを真似してしまう。経過は吹っ飛んじゃっているので、そんな笑顔には意味はないんです。漫画家を何年も続けているうちに、そのことにふと気づくんですよねぇ。
――どの作品を描いているときに、その気づきを得ましたか?