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野球漫画のキャラクター案:

日本に来た外人選手で、バリー・ボンズ並みの打力があり、2打席に1本くらいの割でホームランを打つが、働くのが嫌いで、1日に1打席しか立たないし、守備はしない、という選手。遅くまで縛られるのも嫌だというので、試合の序盤(1回の表か裏)しか出ない。夜7時を過ぎたら試合(職場)放棄してバーに飲みにいく。
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  「碧空」と言いたいような、清澄な青空。エーゲ海の、ある小島である。

  広大な私有ビーチ。全景から、その中心にある建物へ。そして、そのベランダの手すりに手をかけて海岸を眺めている男。水辺で遊ぶ女たち。白いトーガのような物をまとった男は白い物の混ざった髭をふさふさと生やしているが、よく見るとあの「男」である。女たちは、水着姿か、これも「男」と同じく白いトーガをまとっており、まるでギリシア神話の中の人物たちのようだ。このパラダイスで只一人の男である「男」は、さしずめ「ゼウス」である。

  「男」の豪壮な邸宅は、オリンポスの神殿を思わせる。「男」は、その白いベランダから、水辺で遊ぶ女たちを眺め、手にしたワインを一口飲む。

  傍らに侍る女にグラスを渡し、室内に入る「男」。室内の様子もまた、神殿の内部を思わせる簡素さでありながら、そこを飾る彫刻や絵画は、一流の趣味で統一された品々である。室内全体が一つの大広間のようであり、壁は全面が窓で、天井から床まで広々と開いている。

  テーブルの上の大画面のコンピュータの前に座っていた女が、何かを見つけて男を振り返り、目で合図する。歩み寄る男。画面をのぞき込む男。

  コンピュータの画面に英文のメッセージが記されていく。

  「Mへ。    Kより。

お変わりないでしょうか。我々は全員元気です。」

  コンピュータの画面に重なって、薫の顔が浮かぶ。その顔が「男」に語りかける。

薫「と言っても、それは半年前までのことで、その後私たちはほとんどが整形手術で顔を変え、偽造された履歴とともに世界各地に散らばっていきましたので、その後の消息はわかりません。スイス銀行の口座にあなたから振り込まれたそれぞれ50億円の金は、多分一生かかっても使い切れないでしょう。しかし、僕にとっては、この50億の金よりも、あなたやみんなとともに過ごした一年あまりの日々のほうが、はるかに貴重なもののように思われます。僕にとっては、残りの平凡な人生は、まさしく余生です。でも、これは無い物ねだりかもしれません。僕はこの前結婚しました。もうすぐ子供も生まれます。これが、きっとあなたへの最初で最後のメールになるでしょう。あなたがこのメールに気づいてくれることを願っています。では、お元気で。……永遠に、さようなら。」

  コンピュータの画面を離れようとする「男」。しかし、「おやっ」という顔でもう一度画面に顔を戻す。

  コンピュータの画面。「P.S.  Who are you?」

  大笑いする「男」の顔。(ストップ・モーション)

  狂躁的で調子外れのロックにアレンジされたベートーベンの「歓喜の歌」が流れる中、エーゲ海の夕焼けの情景、島々の影、気が狂うほど美しい夕焼けの雲、夕日の反射光の中の海上のヨットなどのカット。そして、最後の光を投げかける太陽の輝きとともに……

  The Endのクレジット。

  (フェイド・イン)官房長官のデスクの上の電話。突然、プルルと呼び出し音がする。

  電話機に飛びつく官房長官。拡声器から声が流れる。

声(切迫した感じで)「もしもし、もしもし。こちら、宮内庁の侍従長の一色です。皇居にヘリで下りた犯人たちによって、皇居は占拠されました。ただ今から、彼らの要求を伝えます。……」

  固唾を飲んで、待ち受ける官房長官、警視総監。それに、総理大臣、与党幹事長もいる。並木は、彼らから一歩下がって控えている。

電話の声「犯人たちの言葉どおりに報告します。いいでしょうか。……一つ、我々は、今夜、ここを出発する。今から二時間以内に、ジェットヘリ用燃料2トンを皇居に運び入れること。燃料に細工したり、警官、自衛隊員などを忍び込ませてはいけない。そんな事をしたら、人質の安全は保障しない。

二つ、我々のヘリコプターが洋上に出るまで、ヘリコプター、ジェット機、セスナ、その他どのような飛行物も、東京上空を飛行させてはならない。民間機、米軍飛行機なども含めてだ。

三つ、我々が洋上に出てからも、我々に対して、攻撃はもちろんのこと、いかなる追尾もしてはならない。不審な行動を取った場合、人質の安全は保障しない。

 なお、我々が目的地まで着くまでの安全保障として、皇太子殿下に御同行願うことにする」

警視総監(顔を真っ赤にして)「馬鹿な! それだけは飲めん!」

声「以上が、我々の要求である。なお、すでにご存じのとおり、東亜会を壊滅させたのは、我々である。以上の要求、および大日本興業銀行からいただいた金は、日本を大掃除した事への、ささやかな謝礼と考えていただきたい。国民も、それで納得するだろう。さらに、皇太子殿下が人質になったのは、警官隊を含め、他の人々にこれ以上の被害を出したくないと、殿下御自身の申し出によるものである。諸君が、この崇高なご配慮を台無しにしないよう、無謀な行動にでないように自重することを望む。……

 以上が、犯人たちの声明です。なお、この声明への回答を30分以内にするように、との事です」

官房長官(総理大臣に向いて)「総理、どうします?」

総理(腕組みしていた手をほどき、電話に歩み寄って受話器を取り)「すべて承知した。私は総理の大友だ。犯人たちにそう伝えてください」

幹事長(顔を真っ赤にして、怒鳴るように)「総理、こんな屈辱的な要求を飲む気か!」

総理(目を閉じて、腕組みし)「それしかなかろう……」(フェイド・アウト)

 

  皇居。サーチライトに照らされた周囲には、何百台ものパトカーのほか、陸上自衛隊のジープ、装甲車、トラックが無数に詰めかけている。その周囲には、何千人もの武装警官、自衛隊員が、銃を持って、いらだった表情でたたずんでいる。さらに、その外には、テレビや新聞の報道隊や無数の野次馬たちが、わいわい騒ぎながら見物している。

  皇居内からヘリコプターの爆音が響き、やがて闇の中をサーチライトに照らされて、巨大ヘリが少しずつ浮上していく。

  見上げる警官隊、野次馬の顔、顔。

  一際ものものしく警戒された一画に、総理大臣らの顔も見える。

  皇居の堀。黒い水の中から、黒ずくめの姿の男が頭の半分ほどを出す。男は泳いで堀の側面に達し、人気のない茂みに隠れて上陸する。

  茂みの側に立って上空のヘリコプターを見上げている警官。その後ろから「男」の腕が巻き付いて首の骨を折り、茂みに引きずり込む。

  茂みの中から、警官の制服を着て現れる「男」。

  側のパトカーに乗り込み、発車させる「男」。

  群衆の間を抜け、脱出するパトカー。

  サーチライトに照らされながら、ゆっくりと皇居の上を離れていく巨大ヘリ。

  都内を走るパトカー。

  ライトアップされた東京タワーをバックに走るパトカー。

  サイレンを鳴らしながら、品川、大井を走り抜けるパトカー。

  ヨットハーバー。暗く静まり返った中、車のライトが道の彼方に現れる。

  「男」の乗ったパトカーが猛スピードでハーバーに進入し、桟橋に停泊しているクルーザーの側に停止する。

  車から素早く下りて、クルーザーのタラップを駆け上る「男」。

  操縦席でエンジンのスイッチを入れ、運転する男。

  ハーバーの桟橋をゆっくり離れていくクルーザー。

  ぐんぐんスピードを上げ、東京湾の入り口に達するクルーザー。背後に、東京の夜景が美しい。

  自動操縦に切り替え、操縦席を離れる「男」。

  つんつるてんの警官の制服を脱ぎ捨てながら、パンツ一つになり、奥の部屋に入る「男」。

  冷蔵庫を開け、冷えた缶ビールを取り出し、口に付けて一息に飲み干す「男」。

  ガウンを羽織ったあと、続けて、同じく白ワインを取り出し、これも冷蔵庫で冷やしてあるグラスを手にして操縦席に行く「男」。

  操縦席のナビゲーターと計器を見て、自動操縦装置が順調であることを確認し、操縦席に深々と座り込む「男」。

  グラスにワインを注ぎ、それを目の前に掲げ、「コングラチュレーション!」とつぶやいて、それを飲み干す「男」。

  目を閉じる「男」の顔。満足感に溢れている。やがて、「男」は眠り込む。(フェイド・アウト)

 

  暗い海上を飛ぶ巨大ヘリ。

  (上空から)航行する空母「サンタ・マリア」の姿。

  「サンタ・マリア」に近づくヘリ。

  「サンタ・マリア」の甲板にゆっくりと下りていくヘリ。(フェイド・アウト)

 

  新聞紙面の見出し。「5000億強奪犯人グループ、リビア入国」「人質の皇太子様、無事解放」「犯人グループ消息不明」「ダーク・エンジェルズ北朝鮮亡命か?」(フェイド・アウト)

 

  ダークエンジェルズのアジト。例の廃工場である。その事務室で、薫が、いらいらした顔で、無線機の前の透の様子を見ている。

薫「なぜ、サンタマリア号は来ない! 本当なら、もう十二時間も前に着いているはずだ」

透(クールに)「南方海上での時化のため、遅れるそうだ。到着は、明日の夕方以降になると言っている」

薫(あきれた顔で)「二日近くも遅れるのか! まさかこんなつまらん事で、すべてがパアになるんじゃないだろうな」

「男」「うろたえるな、薫。みっともないぞ。それより、お前らみんな指名手配されてるんだから、絶対に外に出るんじゃないぞ」 

薫「もう遅いですよ。ほら、奴ら、やってきました」

  パトカーのサイレンの音。夕暮れの中、無数のパトカーがアジトに迫ってくる。

  アジトのビルの屋上から、見渡す限りパトカーに埋め尽くされた情景を眺める「男」と薫。

「男」(微笑して)「壮観だな。これだけのパトカーを総動員したのは、日本警察始まって以来だろう」

薫「そして、我々は壮大な失敗者として犯罪史に名を残すってわけですか?」

「男」「まだ、そう決まったわけじゃない。我々には、あのヘリがある」

薫「しかし、あのヘリは、航続距離がたった70キロしかないんですよ。10トン近い荷物を抱えて、ここから東京湾まで持つかどうかもわからないくらいだ。それに、持ったとしても、船はまだ来ていない。東京湾まで出たところで、海にボチャンだ」

「男」「海まで出る必要はない」

薫(不思議そうに)「どこに下りるんです? どこに下りようが、下りたところで逮捕、あるいは射殺、爆殺ですよ」

「男」「いいから、全員をヘリに乗り込ませて、エンジンを掛けておけ。いや、健太郎とタカヨシの二人は、バズーカ砲を持ってここにくるように言え。少し時間稼ぎをしよう。」

  廃工場の周りを埋め尽くすパトカー。パトカーばかりでなく、トラックから機動隊がぞろぞろ出て、ピストルやライフルを手に、配置についている。

  真っ赤な夕焼けの中、ビルの屋上に一人立って、下を見下ろす「男」。手にはライフルを持っている。

  警官隊の中から、小林刑事が前に出て、拡声器を口に当てる。

小林「ダーク・エンジェルズの諸君! 君たちは完全に包囲された。武器を捨てて、手を上げて出てきなさい」

  ライフルを肩に当て、小林を狙う「男」

  スコープの中の小林の上半身。発射音とともに、その眉間に穴が開いて、血が噴き出すのが見える。

  一斉に射撃を開始する警官隊。

  屋上の物陰に腰をかがめる「男」。

  二階の窓からバズーカ砲で警官隊のパトカーを狙う健太郎とタカヨシ。

  バズーカ砲が発射され、轟音とともにパトカーが火柱をあげて吹っ飛ぶ。

  次々にパトカーを砲撃する二人。恐慌に陥る警官隊。

  屋上から飛ぶように駆け下りる「男」。バズーカ砲を捨てた健太郎とタカヨシがそれに続く。

  ビルからの砲撃がやんだのに気づいて、ビルを見上げる警官隊。

  異様な振動音がビルの背後から響き、やがてビルに隠れた中庭からビルの後ろ側に、巨大なヘリコプターが現れる。

  呆然とする警官隊。だが、すぐにヘリコプターへの射撃を開始する。それを後目に、ヘリコプターはどんどん上昇し、夕日に輝きながら射程距離を離れていく。

  夕闇の中を飛行する巨大ヘリコプター。その姿は、モビー・ディックさながらである。

  内閣官房長官室。警視総監と内閣官房長官が、腕組みをして思案している。

  警察官僚並木警視正が、事件の報告に現れる。

並木「総監、連中の行く先が判明しました。この進路からして、連中は、ここに向かうつもりです」

  地図の一点を指す並木の手。官房長官は奇妙な悲鳴を上げる。

官房長官「こ、皇居だと?」

並木「はい。単に着陸するためか、皇居を攻撃するつもりかはわかりませんが、皇居を目指していることは確実だと思われます」

警視総監「そ、それだけは何としても避けなくてはならん。連中が皇居に達する前に、爆破できんか?」

並木「しかし、下はすべて民家で、上空であのヘリを爆破した場合、少なくとも百人以上の死傷者が出ますが?」

官房長官「それは困る。そんなことになったら、内閣総辞職だ」

警視総監「背に腹は代えられんでしょう。並木君、すぐに自衛隊に連絡して、奴らが皇居に達する前に、ヘリを爆破するように頼んでくれ」

並木(不賛成だ、という感じで頭を振りながら)「奴らが、皇居を攻撃するとまだ決まったわけではありませんよ」

警視総監「何を悠長な事を言ってる。陛下の御身が危ないんだぞ!」

  官房長官の机の上の電話が鳴る。受話器を取る官房長官。

官房長官(他の二人を振り返って)「犯人たちから電話が入ったそうだ。今、拡声器につなぐ」

拡声器から流れる「男」の声「警視総監はいるか? あるいは総理でも誰でもいい。とにかく、そちらの最高責任者に伝える。我々は、ヘリコプターに、ロシアから入手した小型原爆を搭載している。広島、長崎に落ちた原爆くらいの威力はある奴だ。もしも、我々を攻撃したら、すぐにこの原爆を東京の中心地に落とすつもりだ。少なくとも、東京の都心地はすべて破壊されるだろう。我々の邪魔をしなければ、これ以上の被害は与えないと約束しよう。後ほど、我々の要求は伝える。期待して待っていたまえ」

  腰を抜かしたように、ソファに座り込む官房長官。

官房長官「げ、原爆!……」

警視総監「はったりです! ブラフに決まってます!」

官房長官「なぜ、そう断言できる? もしブラフでなかったらどうするつもりだ?……東京に原爆が落ちる!……そんな馬鹿な」

並木(携帯電話に耳を当てて)「ヘリが降下し始めました。やはり、皇居に着陸する模様です」

  頭を抱える警視総監と官房長官。(フェイド・アウト)

 

  大日本興業銀行頭取、三ツ木守の家の前の道路。午前3時頃。音もなく近づいてきた一台の車が静かに停止し、三人の男が下りる。三人とも黒いスーツ姿である。薫、透、「男」の三人だ。

  薫と透が手を組み合わせてはしごを作り、「男」が、それに足を掛けて、軽々と塀の上に飛び乗る。

  塀の外で待つ二人。

  門が開いて、「男」が現れ、二人に頷く。

  中に入る二人。門の近くに、「男」に殺された番犬、ガードマンの死体が転がっている。

  三ツ木守の寝室。大いびきをかいて寝ている三ツ木の姿。

  三ツ木の肩を揺すって起こす「男」

  寝ぼけた感じで目を開ける三ツ木。「男」を見て驚愕する。

三ツ木「ど、泥棒! 誰かいないか」

  ベッドから這い出し、逃げる三ツ木。「男」はそれを止める様子もなく、見送る。

  あたふたと廊下から階下の居間に下りる三ツ木。そこには、ガムテープで猿ぐつわをされ、縛られた家人と、ガードマン、女中がいて、その側には薫と透がピストルを手にして立っている。

三ツ木(虚勢を張って)「お前達、何が目当てだ。うちには金などないぞ」

薫(さげすむように)「有り金を出して、家の人間の命を救おうとは思わないのか? けちな爺さんだ」

三ツ木「い、いや、十万円くらいなら、ある」

透(テーブルの上に、小型金庫を乗せ、開けてみせながら)「これが十万円か。少なくとも、五百万はありそうだぜ」

  いつの間にか、居間の戸口に「男」が立っている。

「男」「そんなはした金はどうでもいい。三ツ木さん、あんたにやってもらいたい事がある。いやだと言えば、ここであんたの家族もあんたの命も貰う」(フェイド・アウト)

 

  大日本興業銀行。朝。黒いBMWから、三ツ木と「男」が銀行の前に下りる。

  階段を上り、行内に入る二人。

  頭取の姿を見て、挨拶する行員たち。

  頭取室の前で、秘書の女が頭取に挨拶し、側の「男」を不審そうに見る。

三ツ木「こちらは、大蔵省の大石さんだ。大事な用件で、緊急に見えられた。すぐに児島君を呼んでくれ」

  頭取室に入る児島。

  頭取の側の「男」に不審そうな目を向けながらも会釈をする児島。

三ツ木(やや早口に)「こちらは、大蔵省の中でも、特別な部局におられる方だ。特別会計というか、いわば国家財政の隠し金専門だ。で、実は、この銀行にもそういった隠し金があるんだが、それを緊急に、大蔵省の中に移したいとおっしゃるんだ。もちろん、もともと大蔵省の金だから、こちらとしても断ることはできん」

児島「大蔵省の隠し金と言うと?……(ポンと手を叩いて)あの、旧満州国の財宝ですか?」

三ツ木(頷いて)「そうだ。で、君を呼んだのは、その搬出の手配をして貰いたいんだ。なにしろ、五千億から六千億に上る金塊が大半だから、その重さだけでも大変なものだ。手の空いている行員を総動員して、運ばせてほしい。(時計を見て)10時には、大蔵省からのトラックが来ることになっている。あまり、時間がない。行員たちには、このことは知らせるな。変な噂になりかねん。それでなくても、今は不祥事続きで大蔵省はマスコミにはナーバスになっているからな」

児島(頭を下げて)「承知しました」

  部屋を出ていく児島。出ながら、一言もしゃべらない「男」にもう一度不審の目を向ける。

  窓をバックに、腕組みして立っている「男」

  銀行の裏口に停まる10トントラック。制服姿の警官が、その荷台から10人ほど出てくる。

  児島によって鍵を開けられる地下金庫。大金庫の中には、天井近くまで積まれた金塊と、無数の木箱がある。

  裏口から、台車でどんどん運び出され、トラックに積み込まれる財宝。金塊には、カバーがされている。児島がそれを眺めている。

  報告のために、金庫室に戻る児島。

  三ツ木と「男」が、カラになった金庫室に立っている。

児島「搬出は完了しました。受け渡しの書類などは?」

三ツ木「ああ、それは私がサインしておいたからいい」

  児島、何気なく三ツ木の左手を見る。三ツ木は、「男」に見えないようにして、左手の人差し指と中指をクロスしたサインを出している。

  児島、事態に気が付き、青ざめてかすかに頷き、部屋を出る。

  地下金庫室の廊下の端にある緊急電話に急ぎ足で近づく児島。

  電話に手を掛けようとした瞬間、後ろから「男」の腕が伸び、児島の首に巻き付く。

  地下室を出る「男」。その後ろに転がる、三ツ木と児島の二つの死体。(フェイド・アウト)

 

  東京近郊の廃工場の倉庫。10トントラックが現れ、倉庫の一つに入る。

  倉庫の中で、ダークエンジェルズが荷物を下ろし、その一部を小型トラックに積み分ける。

  小型トラックに乗り込み、発車させる「男」

  湾岸道路を走る小型トラック。運転する「男」

  とあるヨットハーバー。「男」のトラックが停まったところには、一台のクルーザーが停泊している。「男」がマイアミで購入したクルーザーである。

  トラックから降り、クルーザーに乗り込む「男」

  クルーザーの後方の屋根が開き、クレーンがトラックを持ち上げ、屋根の中に格納する。

  港に停めてあったメタルグレーのベンツに乗り込む男。

  走り去るベンツ。(フェイド・アウト)

 

  警察。尋問に答えているのは、吉岡の恋人だった奈美である。

奈美「だから言ってるでしょ。あたいの五百万は、ダークエンジェルズのメンバーの吉岡から貰ったもんだって。金の出所なんか知らないわよ。あいつが勝手にあたしに惚れて、くれたんだから」

刑事「薫って奴は知ってるか?」

奈美「知ってるわよ。ちょっといい男だけど、うるさい奴」

刑事「この男か?」(モンタージュ写真を見せる)

奈美「似てるわね。あいつ、何したの?」

刑事「銀行から、五千億円相当の品を強奪したんだ。これは、殺された三ツ木頭取の家族の証言で作ったモンタージュだ。どうやら、ダークエンジェルズの全員が、一連の事件に関わっているらしい」

奈美「私は関係ないわよ。金は吉岡が勝手にくれたんだから」

刑事(舌打ちして)「ああ、その通りだ。あんたは、貰い得ってわけさ」

  小林刑事(マジックミラー越しに尋問の様子を見ながら、他の刑事に指示して)「すぐにダークエンジェルズ全員を指名手配しろ。もちろん顔写真付きでだ」(フェイド・アウト)

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