「どんな噂だい」
彼が、これ以上話すべきかどうか悩んでいることを私は見て取った。「噂は噂さ」彼はしまいにそう言った。「何が真実かなんてわかるものか。だが、ある連中は、あのドワーフが宮廷で何か悪い力を使っていて、それが革命の原因だったと言っている。いずれにしても、それが俺がドワーフについて知っているすべてだ。ほかには何も知らん」
老人は長い溜息をつき、それから一息でグラスの酒を飲みほした。ピンク色の液体が彼の口の端からこぼれて、そのだらしないアンダーシャツの首筋の中にしたたり落ちた。
彼が、これ以上話すべきかどうか悩んでいることを私は見て取った。「噂は噂さ」彼はしまいにそう言った。「何が真実かなんてわかるものか。だが、ある連中は、あのドワーフが宮廷で何か悪い力を使っていて、それが革命の原因だったと言っている。いずれにしても、それが俺がドワーフについて知っているすべてだ。ほかには何も知らん」
老人は長い溜息をつき、それから一息でグラスの酒を飲みほした。ピンク色の液体が彼の口の端からこぼれて、そのだらしないアンダーシャツの首筋の中にしたたり落ちた。
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「それからどうなった?」
「それから?」彼は言った。「それから革命が起こったのさ。王は殺され、ドワーフは逃亡した」
私はテーブルに肘をつき、自分のジョッキを揺すってビールをゆっくりとすすった。私は老人を見て、そして尋ねた。
「それは、ドワーフが宮廷に入った直後に革命が起こったという意味かな」
「直後ではないが、遅くもない。1年くらい後だ」老人は大きなゲップをした。
「よく分からないな」私は言った。「前にあんたはドワーフのことは話したくないと言ったが、どうしてだい。ドワーフは革命と何か関係があるのか」
「大当たりだ。少なくとも、確実なことがひとつある。革命軍はあのドワーフをやばいところに連行しようとしていた。今もそのつもりだ。革命はもう昔の話だが、連中はまだ踊るドワーフを探している。たとえそうであるにしても、俺はドワーフと革命に何の関係があるのかは知らん。聞こえてくる話はすべて噂にすぎん」
「それから?」彼は言った。「それから革命が起こったのさ。王は殺され、ドワーフは逃亡した」
私はテーブルに肘をつき、自分のジョッキを揺すってビールをゆっくりとすすった。私は老人を見て、そして尋ねた。
「それは、ドワーフが宮廷に入った直後に革命が起こったという意味かな」
「直後ではないが、遅くもない。1年くらい後だ」老人は大きなゲップをした。
「よく分からないな」私は言った。「前にあんたはドワーフのことは話したくないと言ったが、どうしてだい。ドワーフは革命と何か関係があるのか」
「大当たりだ。少なくとも、確実なことがひとつある。革命軍はあのドワーフをやばいところに連行しようとしていた。今もそのつもりだ。革命はもう昔の話だが、連中はまだ踊るドワーフを探している。たとえそうであるにしても、俺はドワーフと革命に何の関係があるのかは知らん。聞こえてくる話はすべて噂にすぎん」
- 英国文学というか、欧米文学の伝統的手法だと思う。しかし、エンターティメント小説でこれをやられると、読者は辟易するだろう。もちろん、その描写そのものを味わえる高級な読者もいるだろうが、忙しい現代人の大半にそんな余裕があるのかどうか。なお、三島由紀夫は「文章そのものを味わわないくらいなら小説など読むな」ということを言っているが、これは「文学」については正論だろう。筒井康隆も、ストーリーだけを追う読者を「快楽乞食」と批判していた。作者としては、精神を傾けて書いた文章を単なる読み捨ての「消費対象」にされるのは不快だろう。もちろん、書きなぐりの「消費小説」もたくさんある。梶山季之など、一時はナンバーワンのベストセラー作家だったが、今では誰も読まないのではないか。需要があるから、そういう小説も書かれるわけだ。
ゆうき まさみ認証済みアカウント @masyuuki 3時間前
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これ、もしかして英国人ならそれで人物像がイメージできるのかもしれないのですが、英国人ならぬ僕が読んでも、イメージしきれないという嫌いはあります。そこら辺がやや苦行っぽくなっちゃう原因かも(^_^;)
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P・D・ジェイムズの「執拗な描写」が何のために行われているかというと、主にキャラクターを描くためなんです。「〇〇は△△な人物であった」と書かずに、登場人物たちが住んでいる部屋、家具、調度品等々をみっちりと描写して、その人物のキャラクターを浮き上がらせる。
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P・D・ジェイムズの小説は、「執拗な描写」というのが特徴でありまして、娯楽を求めて読み始めたのに苦行のようになってしまうことがあるのですが(笑)、『女には向かない職業』は、主人公コーデリア・グレイの魅力でグイグイ読み進められると思います。入門には最適(^_^)
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ここまで話したところで、その老人は自分のグラスをテーブルに置き、手の甲で口を拭い、象の形をしたランプに手を延ばして、それをいじり始めた。私は彼が話を続けるのを待ったが、彼は数分の間黙っていた。私はバーテンを呼んで、ビールとMecatolを追加注文した。居酒屋は少しずつ客が増えており、ステージでは若い女性シンガーが自分のギターのチューニングをしていた。
そうするうちに、ドワーフは宮殿内に部屋を与えられ、そこで侍女たちが彼を風呂に入れ、絹の服を着せ、王にお目通りする際の適切なエチケットを教えた。次の夜、彼は大きな広間に連れていかれたが、そこでは王のオーケストラが、指揮のもとに、王の作曲したポルカを演奏した。ドワーフはポルカに合わせて踊ったが、最初は音楽に体を慣らすように静かに、そして段々とスピードを上げ、しまいにはつむじ風に巻かれたような速さになった。人々は息を呑んで彼を見つめた。誰も話すこともできなかった。貴婦人の数人は気絶して床に倒れた。王の手からはgold-dust wine(訳者注:そういうワインがあるのかどうか知らないのでそのまま英語表記しておく。)の入った水晶のゴブレットが落ちたが、誰一人としてその砕ける音に気がつかなかった。
プロフィール
HN:
冬山想南
性別:
非公開
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