ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
古典古代
こてんこだい
Classical Antiquity
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
魔物との契約、その犠牲に我が子を差し出すというのは日本の物語にないモチーフ(だと思うけど、あるかしら)だが、それで生まれたヒルコを流すのは伝統的な展開。こういうテクニックが縦横無尽に使われる。
In a web of open-ended dreams
Maya Deren & Alexander Hammid's experimental film:
'Meshes of the Afternoon' (1943)
Facebook上で歴史愛好家の八幡和郎氏が、中世史家の呉座勇一氏の書評を非難し、「盗作に近い」と表現しています。
つまり、『日本国紀』が井沢説に拠っていることは自身(八幡氏)の発見であり、後から同じ指摘をした呉座氏の書評は、これを剽窃しているというのです。
本記事では、この八幡氏の指摘が妥当であるかどうかを検討していきます。
まず、問題となる八幡氏の(第一発見?)記事を見てみましょう。
そんななかで目立つのは、井沢元彦氏からの強い影響である。祟りや怨霊の重視、武士の勃興についての見方、刀伊を撃退した藤原隆家の称揚、足利義満の皇位簒奪計画という見方への支持、信長や秀吉についての見方などである。古代では応神天皇についての記述とか、すでに「「日本国紀」の江戸時代観には根本的な矛盾がある」で書いた江戸時代の経済政策などの見方もそうだ。
百田『日本国紀』は井沢『逆説の日本史』に似てる?(アゴラ, 2018.11.23)
以下の六点について井沢説との類似性を指摘しています。
しかし『日本国紀』と井沢説との類似性を発見したのは、八幡氏が第一という認識は間違っています。
というのも『日本国紀』の前近代史が井沢元彦『逆説の日本史』をなぞっていることは、歴史好きなら誰でも気が付くことです。よって、これに言及したからといって新規性はありません。
事実、八幡氏の書評が2018年11月23日に出る前から、百田尚樹『日本国紀』の種本が井沢元彦『逆説の日本史』であると、既にツイッター上で指摘されていました。
このように、『日本国紀』と井沢説の類似性は、読んだ人ならば誰でも気が付く性格のものであって、そこに新規性を見出すことは難しいでしょう。
よって「盗作に近い」という八幡氏の発言は、想像力が逞し過ぎるでしょう。
また、先の述べたように八幡書評は六つの類似点をあげていますが、呉座書評ではこれを踏襲していません。
八幡書評 | 呉座書評 |
①祟りや怨霊の重視 | 怨霊信仰の強調 |
②武士の勃興についての見方 | — |
③足利義満の皇位簒奪計画 | 足利義満暗殺説 |
④信長や秀吉についての見方 | — |
⑤応神天皇の記述 | — |
⑥江戸時代の経済政策 | — |
— | 天智天皇と天武天皇は兄弟ではない |
— | 勇猛果敢な幕府と無為無策な朝廷の対比 |
したがって二つの書評で共通して指摘されている、「『日本国紀』と井沢説の類似点」は、①怨霊信仰と、③足利義満だけです。さすがにこれで「盗用に近い」というのは言い掛かりでしょう。
加えて、③足利義満の類似については、八幡氏の書評が出る前にツイッターで指摘されていました。
八幡氏の理論を借りるならば、八幡書評こそが、ツイッターから「盗作!とはいわないが、それに近い」ものであるとも表現できます。
もちろん、さすがに八幡氏がツイッターから剽窃したとは私は考えていませんし、誰もそうは思わないでしょう。なにせこれまで述べてきたように、歴史好きが読めば誰でも気が付くレベルの話なのですから。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報